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19話 腹ペコユリウスの深夜お散歩

20話投稿ミス申し訳ありません。

それから、誤字報告ありがとうございます。

「腹が空いた」


夕食を食べてミカエラとクロード、ルミナリアの4人で雑談と言う名の歴史を学ばされ、就寝の身支度を済ませいつもの様にベッドに入る。

子供が寝るのには最適な時間でも、中身がおっさんの俺からすると些か早い。

と言うか早すぎる。


「そもそも陽が沈んで数時間だぞ。ガキじゃかるまいし」


布団の端を握りしめて呟く。

いや、ガキだったわ。

スカスカな腹模様も合わさって眠気なんて全くやってこない。

そもそもな話として城で出される食事の量じゃ俺には全然足りないんだよなぁ。

育ち盛り以前に治癒なり強化なりの魔術を常時使っている身としては、見た目より遥かにエネルギーを消費してるんだ。

それこそただ突っ立っているだけでも一般人の平均運動量を余裕で超えるくらいには。

無から有は生み出せないとはどこぞの錬金術師の言葉だったか。

俺が出される食事量が足りていないのに大丈夫な理由はひとえに、エネルギーを溜めておく秘術を使っているだけだ。

食べれる時に一気に食べて、その時に作ったエネルギーを必要に応じて保存しておく。

ただそれだけ。

そんなことできる訳ないだろと野次を飛ばしたいだろうし、実際昔俺も鼻で笑い飛ばした。

しかし、昔の知り合いが実際に出来ていたので、仮に覚えられたら便利に思った。

それが、まさかこんなことで役に立つとは思わなかった。

師匠の使ってる魔術で魔素をエネルギーに変換する方法も出来はするんだが、どうしてもこっちは元々苦手なのに、これをユリウスの身体でやらなくちゃならない。

保有魔素量が違いすぎるせいで前世とは勝手が違うのは面倒だわ、

それでも、赤子の時は渋々活用させてもらってたが、飢餓感はずっとあったから微妙に辛いトコ。


「さて、どうするか」


むくりと身体を起こして考える。

普段のエネルギー補充方法は朝昼晩の3食に加えて、モルゲンに頼んだオヤツと隙間時間に厨房に出向いてつまみ食いがメインだ。

これでも俺のエネルギー補充は足りていない。

だから、定期的にドカっと食い溜めをする。

良くやるのが自炊。

正確には趣味として料理をやらせてもらってる。

だが、今の時間は普通の奴なら台所に行けば何かしらの食料にありつけるかもしれなくても、今の俺は皇族。

人目を掻い潜るのも一苦労だし、そもそも食料があるのは厨房だ。

一応、自由時間に出入りしているが、それはあくまで朝や昼の時間であって深夜じゃない。

栄養管理されてる俺がこんな時間に行ったところで、まともなものをもらえる訳がない。

次に良くやる城下で買い食いをするにも年齢のせいで難しいとなると方法は残りの一つしかない。


「でもなぁ、遠いし時間かかるし後片付けが面倒なんだよな…」


最後の方法は嫌いじゃないんだが、今の身分になるととにかく面倒が付き纏い過ぎてる。

どうするか本気で悩んでいると、自然と布団の中で足を組んで顎に手を当ててしまう。

しかし、結論を急かす様に腹の虫が「ぐぅ〜」と鳴る。


「背に腹はかえられないよな」


仕方無しに物音を立てない様に出掛ける用の鞄を持ち出して今日も隠れて部屋を出る。

そうしてやってきたのは城の外…どころか、城下町を越えてその壁まで抜けて開けた農業地区まで越えたその先。

森にまでやって来た。


「よっ、到着。やっぱ、遠いな」


最後の方法と言うのが森で食い物を調達して食う。

それだけだ。

しかし、あまりにも面倒過ぎる。

夜に城を抜けるのは常習的にやってるからまだ良い。

だが、そこからさらに城下町を突っ切って締め切られてる外壁を抜けて、そこまでの何倍も距離のある森にまで来るのはそれなりに時間がかかる。


「もう少し体が成長すれば早く来れると思うんだが、そうなるともっと飯を食わないと行けない…か」


かなり切実な悩みだ。

いかんせん時間が無いと言うのは悩みどころだ。

今回の食料調達にしても、採取するなり狩りをするなりしてからの料理、片付け、外出の証拠隠滅、帰宅までこなさなきゃならない。

そんなことをしてたら寝る暇が無いのは当たり前で、数日寝なくても活動できはしても疲労は蓄積するからやりたい訳もなく。

ただ、そろそろ纏まった食事を摂らないと成長以前に健康面を考えても厳しい。

欲しいと思った物が何でも手に入る立場かと思えば、家庭環境的にそう言えないのは結構困る。

なんせ、親兄弟が超虚弱なのが何人か居るからミカエラを筆頭に家族が健康管理にかなり神経質だ。

オヤツくらいなら何かを言われることは無いけど、大人と比べても多い量を平らげてれば口を挟まれるのが目に見えてる。

最悪謎の病気認定で検査と言う名の監禁生活が始まりかねない。

なんせクロードがちょっとした風邪を引いただけで大騒ぎだからな。

前世じゃそんなことを考える必要も無かったって言うのに…


「金持ちを羨んだことは特に無いけど、楽そうだとは思ってたっけ。実際は金があっても楽じゃ無いのは皮肉だな。あー、また賊に戻りてぇ」


転生した時はイージーな人生になったモンだとか思ってたけど、それはただの偏見で大変さの方向性が違うだけのハードな生活を送る羽目になってる。

実際に体験してみると恵まれてる奴にも相応の苦労はあるんだな。

例えば狩りをするための準備もそうだ。


「お、良い感じの石発見」


温室育ちの坊ちゃんに凶器なんて持たせて貰えない。

だから、わざわざ現地調達する必要がある。

本日の武器はそこら辺に落ちてた石を叩き割って良い感じに鋭い物に、木の取ってをくくりつけた物だ。

一々作るのも面倒だしジルヴァ辺りに今度適当な刃物でもねだろうか…

そんなしょうもない苦労をしみじみと噛み締めながら今夜の夜食を見つける。


「良し、まぁまぁな大きさだな。あれなら結構腹に溜まるだろ」


湾曲した突起物の付いた巨大な岩に見えるそれはよく目を凝らせば牙を持つ獣であることがわかる。

夜食に選ばれたのは俺の身の丈を超えるサイズの猪で、ホーンボアと呼ばれるでっかい猪だ。

猪は昼夜問わず活動してるんだが、運が良いことに丁度寝てる。

起きてようが寝てようがあんまり関係ないが、どうせ死ぬなら寝てる方が猪的にはラッキーだと思われる。

多分。

何はともあれ、いただきます。

石器のナイフに強化魔術を使うと、俺の魔素が粘液のように纏わりつく。

さらにそれを拡張する感じで分厚く伸ばせば即席の大剣が出来上がる。

ナイフじゃ首を切り落とすのは出来ないからな。

ぶっちゃけ手刀でもおんなじことができはするんだが、武器を使い続けた身としてはこっちの方が多少楽なんだ。

後は気配を消して飛び掛かるだけの簡単なお仕事だ。

気配を悟らせるヘマも無く、猪は意識を取り戻すこともなく首を落とされる。

纏わせてた魔素を無くすと、役目を終えた石器は柄諸共ボロボロに崩れ落ちる。


「作るのは一苦労なのに壊れるのは一瞬。儚いなぁ…」


ユリウスのおかげで保有魔素量が上がったのは良いんだが、デカすぎるせいで俺の強化に耐えられる武器が殆ど無いのは困りどころだな。

石器の耐久性なんてたかが知れてるから、前世の俺でも同じだったろうけど。

そんなことはさておき。


「いっちょあがり。早く料理に取り掛かるか」


次に川まで猪を急いで引きずって血抜きをし、その間に火を起こして調理の準備を済ませる。

時間が短過ぎて完璧な処理じゃ無いが、諦めて手早く解体すればあとは調理するだけだ。

今晩のメニューは猪肉の串焼き、猪肉の石焼、猪肉の…とにかく焼きになります。

道具も無しに森の中で出来る調理法なんてこれくらいしか無いんだよ。

決して俺が料理できない訳じゃ無い。


「近いうちに秘密基地でも作って道具でも集めるか。ジャーキーとか保存食をつくるのもありだな」


思いつきの予定を口ずさみながら、石のナイフが壊れないよう強化して猪を部位ごとに解体する。

まぁ、どうせブロック状に切り分けるから部位もクソも関係ない気はするが。

火の通りを早くするためにも今回は骨なんかの邪魔な物は徹底的に排除して掻っ捌く。

皮の上に肉の山が出来上がったら後は制作時間2分で大量生産した串にブッ刺して行き、焚き火の周りにとにかく突き刺す。

待ち時間に薄切りにした肉を石の上で焼いて食べて待つ。


「食い続けるとやっぱ臭いが気になるな。舌が肥えたか?」


やっぱり昔じゃ気にならなかった猪肉の臭みが鼻を少し吹き抜ける。

高級料理を食べ慣れたせいでこうなったのか、ユリウスの体からそう思うのか。

単純に下拵えも調味料も殆ど無い状態だからだとは思うんだが、そうだったら少し嫌だな。

まぁ、それでも気になるだけで狩ったばっかりの猪肉は充分うまい。

塩さえあればどうにかなるなんて昔の友人が言っていたが、本当に塩一つあるだけで料理って言えるだけの物になるんだから驚きだ。

そんな調子で薄切りを平らげてくとブロック肉の串焼きの方も食べ頃になる。

それからは食いながら次の串焼きを制作して、また次のを食う。

制作して食う、それの繰り返し。

塩しかないせいで味に飽きが出てくるのを我慢しながら手と口を動かし続ければ、俺の体よりも重かった肉たちは内臓を残して過食部位は平らげられた。

木の実や野草もあればもう少し飽きはきにくいかも知れないな。


「時間があればこれも食えるんだけどなぁ…」


内臓も食べたい所ではあるんだが、下処理と調理の手間がかかるせいでいつも通り断念する。

後片付けに穴を掘って食べれない部位を投下して埋める。

普通に人が入る森だから証拠隠滅と最低限のマナーのためにやる。

本当か嘘かは定かじゃないが、なんでも放置すると流行病の元となることもあるそうだ。

それが終わると川に飛び込んで水浴び。

獣臭と焚き火の臭いがこびりついてるから石鹸も使って念入りに落とす。

服も念の為に予備のボロ服に着替える。

これは脱走中に城下町で適当に買った服だ。

普段着は目立つし汚したりしたら周りに脱走がバレるからな。

後は森の出口まで走り、来た時と同じようにそこで改めてパジャマに着替えて城に戻る。

太陽が昇るよりも早く帰る事ができたから、ベッドに潜り込んで少しだけ眠りに付く。

夢のマイホームである秘密基地の構想を練りながら。

ついでに、できるだけ遅く起こしに来てくれることを祈るのも忘れない。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白いとおもったらブクマと評価のほどをよろしくお願いします。

モチベーションの維持になりますので何卒。

一作品目の『社会不適合者の英雄譚』の方もよろしければ読んで頂ければ幸いです。


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