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18話 ヴァレス帝国の成り立ち

「僭越ながらこのモルゲン。本日はヴァレス帝国の歴史について、お話させていただきます」


いつも通り堅苦しい話し方で授業を始めようとするのは俺のお守り役のモルゲンだが、いつもと違う所が2つある。

1つは俺の授業は礼儀作法、魔術、算術、語学、武術の5つを学んでるところを、歴史っていうこれまたつまらなそうな習い事が増えたこと。


「歴史かぁー。魔王と勇者のお話しとか、英雄様が悪い国とたたかうのとか、絵本で聞いたところもやるのかな!?」


「やらないんじゃない。アレって作り話だろ」


もう1つはニコニコ楽しそうにしてる弟の存在だ。

最近は少し落ち着きを覚えたのか、肩を掴まれて揺すられたりバシバシ叩かれることは少なくなったが、この押しの強さは全く変わらない。


「ご歓談中に口を挟むことをお許しください。ユリウス殿下、一概にそう言い切ることは出来ません」


俺のおざなりな返答に口を挟んだのはモルゲンだ。


「絵本なので脚色などで内容が多少変わっていることは無論ありますが、史実を元に作られているものも多く存在します。今し方クロード殿下が口にしたものも私の記憶違いでなければ、史実を元に作られております」


「ふーん。そんなことより、何でクロードが居るんだ?」


モルゲンの長い蘊蓄なんかよりも、俺からすればクロードと一緒になって授業を受けなければならないのかの方がよっぽど気になる。

と言うのも、俺とクロードは双子ではあるが全く同じ様に育てられている訳じゃないんだ。

同じ日に産まれたからって同じ能力になることなんて無いんだから、それを考慮して俺らの能力に合った教育がされてる。

例えば俺なんかだと礼儀作法と算術の方が比率的には多く、クロードは魔術と語学の場合が多い。

俺は語学をやってないが代わりに武術を先行でやってるから、勉強の量自体はどっちもどっちだな。

そんな訳で俺とクロードは殆どの場合は一緒に授業を受けるなんてことはない。


「両方初めて学ぶ分野ですので、一方に偏りが出ないよう調整をするためにございます。それから、とあるお方の強いご希望があったとも付け加えておきましょう」


「楽しみだね、ユリユリ!」


「とあるお方が隠れて無いぞ」


もっともらしい理由の後に陰謀があったことを匂わすモルゲンだが、主犯の主張が強すぎて全く隠せてねぇよ。

しかし、この根回しの良さは流石皇族と言うべきか、弟が陰湿になったと嘆くべきか。

まぁ、普段から俺と一緒に勉強をしたいと騒いでやがるからすぐに察せられるせいで、隠蔽の方がだいぶ杜撰ではあるが。


「談笑もここまでといたしましょう。本日はヴァレス帝国の歴史と言うことで、建国に至るまでについて、拙いながらもお話しさせて頂きます」


時は674年前。

ヴァレス帝国は今は亡きピスタニス王国から伯爵の爵位を賜ったディアベル家が建国したとされ、ヴァレスディア皇家の祖にあたる。


「僕達のご先祖様って他の国の貴族だったの!?」


「さようにございます。始まりを辿ればただの一民草が国を起こしていた、と言うのも珍しく無いのですよ」


「へー、そうなんだぁ。凄いね!」


当時は大陸の約半分を支配していた超大国が存在していて、その超大国の侵略を退けたことにより建国に至った訳だが、その超大国と言うのは聖ウラス大帝国。

ヴァレス帝国が現在三大大国と呼ばれてることから3本の指に入る強国であるのだが、その領土は大陸の2割ほどだ。

その2倍以上の領土を誇っていたのだから、その国力は想像するのすら困難な力を持っていたとされている。

そんな聖ウラス大帝国だが、どのようにしてそれだけの領土を手にしたのかと言えば、答えは侵略行為を是とする国であったからだ。

戦争に勝ち続けて周辺国を次々に吸収して行き、膨張していた自信と欲望を原動力についには人類の生活圏外の場所まで征服してしまった。

こうして巨大になり続けた聖ウラス大帝国が満足などする訳もなく、小国のピスタニス王国に目を付けるなど誰にでも予測できることだった。

この時には表立って文句を言える国も無く、適当な理由を付けられて超大国対弱小国の戦争は簡単に開始されてしまった。

弱小国のたかが一貴族であるディアベル家がウラスに辛うじて対抗できていたのには幸運に幸運を重ねていたとしか言いようが無い。

1つ目の幸運はウラスの驕りだ。

一国で敵になり得る国が存在しなかったウラスはピスタニス以外にも複数の国に戦争を仕掛けていた。

当時の大陸ではウラスに対抗するために生き残っている国々は同盟を組んで超大国に抗っていたこともあり、多くの戦線を抱えていて戦力が分散していた。

そんな中で弱小国に大きな軍隊を動かす理由も無いので、必要最低限の派遣で済ましていた。

実は必要最低限の派遣には他にも理由があり、それが2つ目の幸運である立地の有利さにある。

山脈に出来た国という立地のお陰で攻め入りずらく、それでいて魅力的な資源があまりなかったのも功をそうした。

これで有用な鉱脈でもあれば話は変わっただろうが、当時にその様な物は無かったので、この時に限れば間違いなく幸運だった。

こういった小さな幸運や大きな幸運の積み重ねで約5年もの間もウラスの侵略に小国が争うという快挙を成し遂げたカラクリであるが、これを語る上で最も大きな要因があった。

それがとある集団が聖ウラス大帝国とピスタニス王国の境を縄張りにしていたこと。

後の大英雄、クランが率いる傭兵団の存在だ。


「大英雄クラン!!」


クロードは絵本に出てきた登場人物の名前が出てきたことで、大興奮のあまり大きな声を出す。

立場上モルゲンは嗜めこそするが、子供の反応としては珍しく無いのか責める様な雰囲気は微塵もない形だけのものだ。

大英雄クランは聖ウラス大帝国の蛮行に憤りを覚え、感銘を受けた数少ない人々をまとめ上げ、私的な集団でありながらウラスと戦うことのできた唯一の存在だ。

大英雄クランを筆頭に傭兵団に所属する者達は一騎当千の英雄達ばかりで、強大なウラスの将達にも勝るとも劣らない強者達ばかりだった。

そんな傭兵団が存在していた訳だが、同盟はウラスの侵略に抗えずにジリジリと削られていた。

超大国という大帝率いる一国と迎合は良しとしない多くの国々の戦い。

しかし、連携を取ろうと戦力でウラスに負けている事実は変わらない。

国がいくら集まろうとも統率にどうしても難が出てしまう同盟では、太刀打ちが出来なかった。

さらに、当時の大英雄クランの率いる傭兵団は、同盟とは別勢力として活動していたのだ。

理由は単純で大英雄クランは大の王侯貴族嫌いだった。

同盟に入らずともウラスに対抗出来ていたのだから、わざわざ加入する必要も迎合する必要も無かった。

そんな大英雄クランを説得したのが当時の若きディアベル家の当主、ファルガー・フォン・ディアベルであった。

こうして大英雄の力を借りることのできたファルガーは、クランと共に聖ウラス大帝国を打ち倒すのであった。


「聖ウラス大帝国を打ち破ったファルガー様は救世主と呼ばれる様になり、多くの支持者を獲得したことにより、今のヴァレス帝国を建国するに至ったのです。そして、このファルガー様こそが両殿下のご先祖に当たります」


「わぁ…クランも凄いけど、ご先祖様も凄かったんだね」


「それは勿論ですとも」


絵本より正確である大まかな歴史を聞き終えたクロードは、頬を赤くしながらも嘆息するように思ったままの感想を呟く。

それに多いに同意するモルゲン。

で、ダンマリを決めている俺だが…


「ところで、ユリウス殿下。お身体に何か異常でも?先程からご尊顔に陰りがございますが」


「なんでもない…」


「さようで。ですが、不調でしたらすぐに申してください」


「分かってる」


下唇と上唇を噛んで口を窄める俺に、モルゲンは心配そうな目を向けてるが別に具合が悪い訳じゃないんだ。

じゃあなぜこんなこんな顔をしてるかって?



大英雄クランって俺じゃね?



いやいやいやいやいや、誰だよソイツ!?

ディアベルとかウラスとかピスタニスとか、どっかで聞き覚えあるなとか思ってたけど、クランって名前が出てきた辺りで「ん???」ってなってきたわ!

もうファルガーが出てきた辺りで確定したぞ。

流石にこれだけ聞けばウロだった記憶も思い出すってもんだ。

傭兵団って何?ウラスの蛮行に憤りをって何?大英雄って何ぃ!?

確かに頭やってたから人は率いてたけど、それ盗賊団だからな?

ウラスの蛮行に憤りを〜、の件なんでマジでなんの話か分からなすぎて、やっぱ俺じゃないかもしれないって少し安心したくらいだぞ。

俺がウラスと戦ってるって思い始めたのなんてファルガーの奴に手を貸し始めてからで、それまでなんて丁度イイモンをたくさん持ってるから襲ってただけだ。

断じて義憤なんかでやってなかったし、それどころかイチャモンつけられた上に指名手配された腹いせをしてたくらいの理由で、ウラスの軍を襲ってただけで特に深い考えは無かった。

ファルガーに至っては最初は俺達に襲われた被害者だからな?

結果的に手を貸しはしたが、広義的にはアレを説得と言えない訳も無いかもしれないが、今聞いた話みたいな知的なモンじゃなかったぞ。

そもそも用心棒を引き受けただけで、ファルガーと一緒にウラスと戦った記憶もこれっぽちもないしな…

まぁ、ファルガーはウラスと戦ったのかもしれないが、少なくとも俺はその前に罠にかけられて呪いを貰ったせいで死んじまってる。

そんな俺が何故に大英雄?

疑問は深まるばかりだったが、あんまり考えたく無い事だったのでその後の授業は虚になりながら聴き続けた。

蛮族さんの正体?に関するお話でした。

正直ボツにしようかと思ってましたが、差し替えの話を作るのが面倒だったので出しました。

蛮族さんが困惑しているのも当然で、たまたま死ぬ前に雇われていた貴族が国を起こしてしまったせいで、何故か英雄と持て囃されてしまっています。

当時の評判は基本良くありません。

ウラスばっかりを標的にしていただけで蛮族さんを見下す国は憂さ晴らしに略奪の被害に遭っていたので…


???「国の金で食う飯はうめぇなぁ」


最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白いとおもったらブクマと評価のほどをよろしくお願いします。

モチベーションの維持になりますので何卒。

一作品目の『社会不適合者の英雄譚』の方もよろしければ読んで頂ければ幸いです。


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