表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/32

11話 今の兄弟事情

俺には兄弟が無駄に多くいる。

それは今も昔も同じだ。

ま、昔の兄弟達は血の繋がらない奴らだったので厳密に言えば違うが、同じ師匠の元で育てられていたから個人的には違いは無いと思ってる。

今と昔で違いがあるとすれば長兄か第5子ってことと環境くらいだ。

環境については浮浪児と皇子なので語る必要も無いな。

兄弟については今の所、兄が2人、姉が2人、弟が2人の構成だ。

一応、妹が1人居たんだが皇族特有の体質を受け継いだせいで生まれてすぐに死んでいるらしい。

それが尾を引いて今もカンナは体調をしょっちゅう崩してるんだが、他の奴らの為にもそろそろ乗り越えてもらいたいもんだ。

そんな体の弱いカンナにクロードを伴って顔を見せた帰り道。


「やぁ、ユリウスにクロード」


「ヴィンお兄様!」


珍しいことに多忙で顔を合わせることの少ないヴィンセントと出会した。

名前を呼ばれたクロードは身体中で嬉しさを表現するように我先にと近寄る。

興奮していても小走りにならない所はやはり育ちの良さがでてるな。

そんなことを思って突っ立っていると、ヴィンセントの方からこちらへ近づいてくる。


「2人はどこかへ出かけてたのかい?」


「はい、お母様の所へ会いに行っていました!今日は元気だったのでいっぱいお話ししたんですよ!」


「そうなのか。それなら私も後でお会いになれるか聞いてみようかな」


カンナが元気なのはかなり珍しいから俺達やシルヴァみたいにこまめに行くか、こういう風に体調が良いことを知れた時に突発的に行かないと会えないからな。

と言うことは、ヴィンセントが俺達と会ったのは偶然じゃ無いってことで。


「ところで、2人ともこの後時間はあるかな?これからギルバートのお見舞いに行く所なんだけど、よければ一緒に行かないかい?」


案の定、ヴィンセントはお見舞いに俺達まで誘ってきた。

冷静に考えればこのだだっ広い城の中でタイミング良く会うなんて奇跡もいい所なので、元々そういうつもりだったんだろうな。

そうと知らずか、はたまたどうでもいいのかクロードは考えもせずに食い気味に「行きます!」と答える。

俺も特に断る理由もないので二つ返事で了承する。


「ヴィンお兄様、お仕事はお休みなんですか?」


「お休みでは無かったけど、少しトラブルがあって時間が空いたんだよ。2人は今日の授業はお休みなのかな?」


「いえ、僕たちもお母様が元気だと聞いたので、せっかくなのでお勉強はお休みにしてもらいました!」


「へぇ、ギルバートだけじゃなくてカンナ様まで調子が良いなんて、もしかしたら今日は吉日なのかもしれないね。ユリウスもそう思わないかい?」


「そうですね」


俺はツイてる日だとかあまり気にすることはないんだが、確かにカンナに続いてギルバートの調子が良いのはかなり珍しい。

少なくとも俺が知る限りなら初めてな気がするな。

このギルバートというのはヴィンセントの弟にして俺達の兄である第2皇子様だ。

大勢は皇族に産まれた人生勝ち組だと思うかも知れないが、俺としてはむしろ不運な部類の人種だと思ってる。

と言うのも、カンナに輪をかけて生まれ付き体が弱い。

それこそ皇族だから生きていることが出来るが、そうじゃなければ生まれることも至難だったろうって状態だ。

ギルバートが今も生きているのは国で最高峰の医療を潤沢に享受しているからに他ならない。

その肝心な病気なんだが…なんだったかな。

確か昔からある病気だったんだが、技術が進歩して症例によって細分化されたもんだから、今はかなり長い病名になってるんだよな。

昔は喰魔病なんて言われてたヤツだ。

高い魔素を体内に持つ奴らが稀に引き起こす病で、魔素が限界以上に体に溜まるせいで体がやられてくんだ。

ギルバートの場合は生まれ付きだが、後天的に発症する場合もあるな。

因みに、ユリウスも同じ病気である。

アホ程高い魔素を保有してるシルヴァとカンナの2人、それを足してさらにお釣りが来るような魔素を産まれた時から持っている。

魔素は普通は成長に応じて増えてくもんだと考えると、産まれながらに大人の高い魔素持ち2人以上ってことは、仮に俺の意識が入ってなければカンナ諸共余裕で腹の中で死んでただろう。

今、ユリウスが生きてられるのは俺が魔女とまで呼ばれた奴に魔術の基礎を教わってたお陰ってことだ。

ありがとう、師匠。

俺から見ても割と碌でもない師匠だったけど、アンタのクソさに今回も救われてるよ。

で、一見健康体に見えるユリウスだが、何故カンナやギルバートのように病弱ではないのか?

理由は単純に俺が幼くても魔素を排出出来たのと、治癒魔術が使えたからって言うのが大きい。

要するに魔素に体が壊されたらその分治すっていうパワープレイでどうにかしてる。

さらに身体強化なんかでも負荷をかけて肉体改造を施してやれば良い感じに魔素が消費できる上に、デカ過ぎる魔素に耐えられる身体が勝手に作られる。

これが傍目には健康に見えるユリウスの秘密ってヤツだな。

過ぎたる力は身を滅ぼすとはよく言ったもんだと、今になってこんな言葉を作った奴にしみじみ同意することになった。

クロードとヴィンセントの会話を眺め、たまに相槌を打つことしばし。

前もって手を回しているらしいヴィンセントの手間もあって、順調にギルバートの部屋へたどり着く。


「ギルバートの調子はどうかな?」


「先程少しお眠りになっておりましたが、体調の変化は無いとのことです。今は本をご覧になっております」


「それは良かった。今から会えるか聞いてもらえないか?」


ヴィンセントに面会できるか聞かれたメイドは礼をとってから取次へ向かう。


「ギルお兄様起きてるっていってましたね!今日はたくさんお話しできますよね?」


「どうだろう。けど、いつもよりは多く話せそうで嬉しいね」


「僕も久しぶりに会えて嬉しいです!何を話そうかなぁ…お庭にある綺麗なお花でしょ。池に大きなお魚…あ!算術が出来るようになったことも言わなきゃ」


久々って、確か先週に会ってなかったか?

待ち遠しいと興奮気味なクロードは最近あった思い出をひっくり返しすのに夢中だ。

かなりの散らかり具合だが、会うまでにまとめられるのか?

そんな弟を黙って見守るヴィンセントは楽しそうだ。

逆にこれと言った話題を用意する気の無い俺は気楽なもんで、ボケっとメイドが来るのを待つ。


「ユリウスはどんな話をするのか決めた?」


「特には」


ボケっとしているとヴィンセントはまた会話に入らない俺に笑顔で話しかけてくる。

愛嬌のあるクロードを眺めるならまだしも、俺を見て面白いモンなんて何一つないだろうに何がそんなに楽しいんだ?

シルヴァといいヴィンセントといい、つくづくヴァレスディア家の男たちは気持ちが悪い。

シルヴァは普通に気持ち悪く、ヴィンセントは何を考えてるのか分からない得体の知れなさが気持ち悪いんだ。

嫌いと言うわけじゃ無いがどうにもこのタイプは前世を通して初めてで困るな。

素気無くあしらわれたってのにヴィンセントに特に変化は無い。


「クロードだけじゃなくてユリウスも何かとっておきを用意しておいておくれ。その方がギルがもっと喜ぶからね」


「そうですかね?」


「そうだよ、間違いなくね」


何を根拠に言ってるのか分からん。

分からんが反抗する理由も特に無いから、最近あったことから適当に喋ることにする。

手抜きだという意見は受け付けないぞ。


「お待たせ致しました。ギルバート殿下も是非会いたいとのことです」


「良かった。ユリウス、クロード、あまり大きな声は出さないようにね」


「はい!」


「分かりました」


取り次ぎをしに行ったメイドが戻り、無事面会できると告げられる。

ヴィンセントは嬉しそうにはにかむと弟達に一応の注意をし、クロードは声を潜ませながら元気よく返事をした。

メイドに案内されるがままに足を進めれば、見慣れたフカフカのベッドの上に兄の姿がある。


「やぁ、ギル。お見舞いに来たよ」


「ヴィン兄上、忙しいのにわざわざ来てくれてありがとう」


部屋に入ると同時にヴィンセントが声を掛ける。

律儀にベッドから上体を起こして待っていたギルバートは絵に描いたような幸の薄い笑顔で出迎えた。


「そんなことないさ。丁度今日の執務が無くなったんだ。それに、家族よりも優先すべきことなんて私には無いよ」


「ふふ、相変わらず大袈裟な言い方だなぁ。ユリウスとクロードも来てくれてありがとう。2人が顔を見せてくれて嬉しいよ」


「僕もギルお兄様に会えて嬉しいです!」


耳が痒くなるような挨拶を述べるヴィンセントに、ギルバートは小さく笑うとこちらも似たような挨拶を俺とクロードにしてくる。

これが俺とクロードのもう1人の兄、ギルバート。

年は俺達よりも7つ上の11歳児だが、体の弱さに加えて食事も運動も足りて無いせいでそれ程大きさは変わらない。

病弱体質の白い肌に細い体、長く伸びた髪も相まって女児のような見た目の兄だ。

本人は好きでそんな見てくれをしてる訳じゃないから、俺が外に漏らすことは口が裂けても無いが。

それに姿が歳相応じゃないのは一目で分かるが、中身も大概不相応だ。

不幸な身の上をしてるからか、このギルバートだが恐ろしく達観した精神の持ち主で、俺的にはこちらの方が特質する点だと思っている。

クロードもかなり早熟だが、この兄はそれを更に凌ぐ精神の成長をしている。

ヴィンセントと言い、ギルバートと言い、ヴァレスディア家の子供は気味が悪いほどに成長が早い。

因みに、ヴィンセントはこの一年で背格好がさらに成長した。

やっぱ、普通大人に混じって仕事してるコイツが一番気持ち悪いな。


「話に聞いていた通り今日は元気そうだね」


「そうなんだよ。お陰で本がいっぱい見れたし、朝には父上と母上とも会うこともできたんだ」


「私達が一番乗りかと思った父上と母上に先を越されていたか。今度はもっと早く来るとしよう」


「ふふ、そんな張り合わなくていいのに」


「いや、どうせなら一番を取ることに越したことはないさ。ユリウスとクロードもそう思うだろ?」


「はい!」


「いや、別に」


普段の半分の声量でヴィンセントに同意するクロード。

どうでもいいとその答えとは真逆の反応を取った俺だが、何が面白いのか兄2人はクスクスと笑い合っていた。

ユリウスとギルバートの病は厳密にはちがったりします。

ユリウスは膨大過ぎる魔素を排出量が間に合っていないだけですが、ギルバートは魔素を排出する器官に障害を持っています。

なので、ユリウスのは正真正銘不治の病ですが、ギルバートは工夫次第でどうにかなったり。

ただ、どうにかする技術が発達していないので現状は難しいですね。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白いとおもったらブクマと評価のほどをよろしくお願いします。

モチベーションの維持になりますので何卒。

一作品目の『社会不適合者の英雄譚』の方もよろしければ読んで頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ