居場所はどこにある
「分かったから!この森から出て行きます!
だからもう攻撃しないで!…」頼み込むように必死に頭を下げるルナに「何言ってんだよルナ…この森で僕らはずっと暮らしてきたんだぞ…」疼く痛みに耐えながら言うソル。「おとなしくしてて…逆らったら本当に殺されるよ…」小声で僕にだけ聞こえるように言うルナに返す言葉がなかった。
殺されたら…僕らの人生はここで終わる…
終わらせたくない…まだやりたいこと、見たい景色が
いっぱいあるんだ…
ここは黙ってルナの意見に従うことにした。
いつもは僕に任せるって僕の意見に反対したことがない。反対したのは今が初めてなんじゃないか…なんて
ふとそんなことが頭をよぎった。
「1日くれてやる!明日の夜0時をまわるまでに
この森から出ていけ」
そう言うとゾロゾロと回れ右をして行ってしまった。
十頭の群れの姿が完全に見えなくなったのを確認して
「ソル、立てる?」身体を支えて起き上がらせる。
「あぁ…大丈夫だよ…」なんて言ってるけど、全然大丈夫じゃなさそう。強がっちゃって…
僕が怪我してるのもあり、歩いては休憩して、
歩いては休憩してを繰り返し洞窟に着いた頃には
暗くなりかけていた。先に帰ってろ…って言ったのに
僕が止まると一緒に立ち止まってくれる。
今日はルナに…いや…いつも助けられてる…と
改めて実感した瞬間だった。
「今日、狩りできなかったな…」しょんぼりしてる僕に「昨日捉えた獲物がまだ残ってるから
それ食べよ?」いつもより明るく振る舞い励ましてくれる。僕が怪我してるのもあるから余計明るく振る舞ってるんだろうけど………それに今日はここで過ごす
最後の夜だから……
「傷痛むから、少し休むよ」そうルナに声を掛け
奥にある寝床に行って横になる。
俺は中々寝付けなかった。
それは悲しみの遠吠えが聞こえてきたから…
それが誰のものなのか僕には分かる…
ずっと近くにいる…兄妹だから…
俺は目を瞑り寝た振りをして何度も聞こえてくる
悲しみの声を頭と胸に焼きつけていた…
忘れないように……今日のできごとを…
僕らの居場所がなくなった今日を…
居場所がなくなったならまた作ればいいだなんて
今の僕らは前向きに考えることなんてできなかった。
そんなに強くない……強くないんだ…
強がらないと前に進めないからそう
見せてるだけだって…
誰でもいいから気付いて欲しい…
僕らはここにいる…