幸せを願う
だんだんと視界がぼやけていく中、愛すべき者達の
存在が頭に浮かぶ。太陽のようなきらきらとした
オレンジ色の瞳を持つ男の子と青い、いや、ブルーと
言った方が似合う、見つめると吸い込まれそうな、
心を持っていかれそうな瞳を持つ女の子。
ソル…ルナ…ずっと、ずっと愛しているわ…
真っ直ぐに…強く…そして優しさも忘れずに
生きていくのよ…
ママは側にいないけど、あなた達の世界一の
味方よ…
閉じかけていた瞳が太陽が完全に顔を出すのと同時に
閉じたのだった。
・・・・・・・
元気に走り回っている二頭のオオカミ。
辺りは草木で覆われ、あの日のような雪景色は
1ミリも感じられない。
「ルナ!こっち、こっち!」「待ってよ、ソル」
これまたしなやかな銀色の毛並みは太陽の光に
よりきらきら輝いて見える。
二頭は今、狩りの真っ最中。どうやら獲物を見つけたようだ。二頭には母親の記憶がない。だが名前だけは
物心ついたときから頭の中にあった。
きっと彼女が愛しい者達、彼らの名を何度も呼んでいたからだろう。ぼんやりとした瞳で母親の姿を捉えられなくとも声ははっきりと彼らの耳に届いていたのだと思う。あれから、狩り、狩り、狩りの毎日で
初めは獲物にすら近づけなかった彼らだが毎日のようにやっていれば上達もする。狩りという言葉なんて
産まれてまもない彼らは知るはずもないのだが
考えるよりも先に体が動いていた。
これが本能という物なのだろうか。
僕はソル!オレンジの目が特徴的で、自分で言うのも
なんだけど、この銀色の毛並みも好きなんだ!
今、鹿を見つけたんだけど、なんせ早くてさ、
どうやって捕まえようかな。僕が先に行って回り込んで後ろはルナに任せるかな。いや、でも、後ろは
僕の方がいいかな…なんて考えてると「ソル?どうしたの?」とルナが走りながら僕の目を見てきた。
あたしはルナ!もう疲れたー。でもあともうちょっとで
獲物捕まえられるからあきらめたくない。
このあきらめのなさは誰に似たんだろう。ママかな。顔は知らないんだけど、きっとそうだよね。
あたしは獲物を必死になって目で追いかけてるのに
ソルといったら何か考えてる。今、そんな表情をしてる。あたしには分かるんだ!ずっと一緒にいるからね!
あたしが声を掛けるとソルもあたしの方を見てきた。
「ん?あぁ、どうやって捕まえようか考えてたんだ。
んーと、僕が先回りして前行こうか?それとも
ルナ、先行く?」
いつもはその場その場で決めてるから今日もどんな
方法で捕まえるか提案したんだけど、今日も返ってくるのはいつもと同じ答え。「ソルに任せるよ!」
ルナはそればっかり。だけど別に不満があるわけじゃない。ルナの言葉は僕を信じてくれてるってことだから、素直に嬉しいんだけど…この方法で大丈夫かなって時々不安になるんだ。獲物を無事仕留めることができたら不安になってたことなんか結局どっかに吹っ飛んじゃうんだけど。