あの時、告白していれば
[止まった時をもう一度]
君とずっと一緒だって思ったんだ。
先生が言った。
人生は一回で、もう一度同じ時間を歩むことはできないって。
友達は言った。
ずっと友達だよって。
親は言った。
後悔しないようにって。
ー
夏の終わりかけ、空が少し緑に変わる季節。
紅葉がよく映える季節になってきた頃。
好きな人に告白しようか、しまいか考えながら歩く帰り道。
コツコツとなるアスファルト。
カァカァと鳴く烏の声。
ー
秋の中旬、紅葉が枯れ始めた頃。
好きな人に彼女ができて悲しんだ帰り道。
いつもより歪んだ視界に映るのは地面だけ。
リンリンと鈴虫が羽をぶつけている。
ー
春が始まり、桜が満開の頃。
宙を舞う桜が踊りながら、門出を祝っている。
笑顔で笑う君と一緒に撮った写真。たったの一枚写真。
その写真には桜の匂いが仄かに付いている。
私は腕時計の針を止めた。
ー
卒業式から何年だっただろう。
桜が満開な季節。
君から届いた結婚式の招待状。
古いボーペンで出席の方に丸をつける。
結婚式当日。
大きなシャンデレラが吊るされいる式場。チャペルを鳴らし、響く鐘の音。
白いスーツを身に纏い将来のパートナーと笑う君。
鼻の奥に残る桜の匂いが、あの頃を思い出させる。
楽しかったあの頃を。
今となっては青春と呼べたあの頃を。
青く染まっていたあの頃を。
あぁ、あの頃に戻れたら。
迷わないで告白してたら。
みんなの忠告をしっかり聞いていなかったら。
人の言葉を信用しなければ。
“ずっと友達だよって”なんて、信じなければ。
そこに立っていたのは私だったのだろうか。
私のバックの中に入った壊れた腕時計が、卒業式から動いていない。
桜の匂いを閉じ込めたまま。
あの日の青春を閉じ込めたまま。
時が戻るなら私はどうしていただろう?
ー
コツコツとなるアスファルト。
春の匂いが鼻の奥から抜けていく。
「すいません、この時計はまだ動きますか?」
「貴方が過去の思いを捨てられるなら」
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