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校門の木

作者: 今日の空

その日は2つ上の先輩と一緒に部室の戸締まりをしていた。


「この学校、よく出るって噂があるけどさ…」


先輩は部室の鍵を閉めながら徐に話し出した。


「人のいないところから叩くような音がするとか、人のいない体育館の中からバスケの音がするとかいろんな現象があった中でも、特にヤバイってなったのはアレだった」


先輩は廊下の窓から、校門の前に植えられた針葉樹を指で示す。薄暗い廊下でもなく、使われているのか怪しい倉庫でもなく、人気のないトイレでもない。全校生徒誰しもが横を通る、校門前のなんの変哲もない木。


「どこがヤバイんですか?」

「あの木、2年前まで毎年枯れていたんだよ」

「はぁ」

「2年前、私が1年だった頃の冬に、当時3年の先輩があの木の前で蹲っていたの。体調が悪いのかなって思って声をかけたら、顔色が人とは思えないほど真っ白。目は血走ってギョロギョロしていて、クマが抉るようにくっきりと浮かんでいたの。数分前までコンビニでお菓子買い食いするぞとか言ってた人がだよ」


確かに元気だった人が数分でそこまで顔色が変わるのは不自然な話である。


「なんだかずっとブツブツ呟いていて話にならなかったから結局、親御さんの車で帰って行ったけど。やっぱり家でもこれはおかしいって事で、お寺に行ったみたいなの。そしたらね、『生霊が憑いてる』だってさ」

「へぇ。それで祓ってもらえたんですか?」

「一応? なんか、生霊っていうのは生きてる人の念みたいなものだから、一気に祓ってはいけないんだって。生きてる人側に影響が出るから、人によっては5年とか6年とか、時間をかけてかけてちょっとずつ剥がしてくみたいな事言ってたかな」

「大変ですね」


あまりにも非現実的な怪談話だったため、思わず無責任な返答を返してしまう。


「でね、不思議なのはこれだけじゃなくて、その事件があった時から、毎年枯れていたあの木が枯れなくなったの。まるで枯れていた原因が生霊にあったかのように、ね」

「そうかもしれませんね」


部活動を終えて活気のない薄暗い廊下の中、先輩と2人でそんな噂話をしながら歩いた。







時は流れ、私は3年となり卒業式を控えていた。校門の木は植え替えられることなく、私と共に歳を重ねていたが最近茶色が目立つようになってきた。


「校門の木、枯れてきたから植え替えだってさ」


そんな噂が立つ頃、私はすっかり忘れていた先輩の怪談話を思い出した。放課後の薄暗い廊下から校門前の木を眺める。


なんの変哲もない枯れかけの木。


でも思わず口から出た言葉は

「あぁ、帰って来たんだな」だった。

実話が元

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