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 自分の匂いを気にしていた。

 

「家出する前に話せば良かった」

 

 後悔を口にするハル。困った様な顔が今でも思い出される。

 

 

 

 ハル、杉野春樹と言うそうだ。彼は半年前に失踪していた。長期入院のさ外泊中に、母親の目を盗んで姿を消したという。

 

 ハルのお母さんと話す事が出来た。ハルが幼い頃に離婚したシングルマザーだった。治療費自体は医療保険や自治体の補助で何とかなっていたものの、付添いの為に仕事を休みがちな事で心配を掛けていたのかも、と言っていた。苦しんでる姿を見るのは辛かったが、目を逸らさずに一緒に病と闘いたいと思っていたと。苦しそうだから、疲れていそうだからと先送りにせず、もっとよく話しておけば良かった、とお母さんも後悔をしていた。そして、私に「見つけてくれて有難う」と。

 

 ハルは、私に「凄い」と言ってくれた。状況や立場が違うから簡単に比較できることでは無いけど、私はお母さんに相談する事が出来て、ハルには出来なかった。そういう意味だったのだろうか。

 

 言いづらい事や、言い方がわからない様な事でも、そのまま伝える事が出来ていたら、未来は変わっていたのかも知れない。

 

 ハルとの出会いと一緒に過ごした短い時間は、私にとても大きな影響を与えてくれたのだと思う。拙くて恥ずかしい事でも、戸惑って立ち止まった時は、誰かに頼れる様になりたい、と思うようになった。それが難しい人が側にいたら、手を差し伸べられる様になりたい。そんなふうに考える様になった。

 

 少し前に、空っぽだった心の中は、前向きな方向に動き始めている様に感じる。立ち止まらずに進み続ける事は、多分出来ない。でも、休み休みで良い、前に行こう、と思う。困った時には、誰かを頼ってもいい。

 

 また明日から学校が始まる。お父さんもお母さんも仕事に戻っている。未来がある、というのは素晴らしい事だ。進めなくなっても、焦らずに道を探して行こうと思う。

 

 

 

「お母さん」

 

 私は朝ごはんを食べなら話しかけた。

 

「ん?」

 

「私、医者になりたい。お金かかると思うけど、目指してみても良いかな?」

以前、他で投稿したものを少し手直しした作品です。感想など、頂けると嬉しいです。

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