《イントロダクション②》
《登場人物》
・高瀬タケル(20)大学に通うヤマトの親友、自分勝手なところもある。
・大継ヤマト(20)タケルの親友、大学では友達も多い。タケルとは真逆な性格。
葬式に行ったが、棺の中は見れなかった。…第一発見者だったヤマトの母親は、辛うじて会釈できるほどで。
一人息子の無慈悲な姿のショック、そして亡くした悲しみは計り知れなかった。
ヤマトの母親だけじゃない、その場にいた親戚や友人、顔見知りの人間ですら、ほとんどの人が涙を流していた。
…ただ一人、僕以外の人たちが。…僕はまだ、この死を受け止めきれていないんだろうか。
帰宅後、改めてあのメールを確認する。…やっぱり間違いじゃなく、ヤマトからのメールだった。
日付は今日の午後三時、転送なのか何なのか…今考えても答えは出ないし、それよりもこの〝ゲーム〟だ。
亡くなる前の最後の話題にしたゲーム、それをプレイして音信不通になりヤマトは亡くなった…いや殺された?
何も分からないけど、分かることは誰かがヤマトの首を切断して、何処かに捨てたか…まだ持っているのか。
どちらにしても、何も解決なんてしていない。…そして僕は決めたんだ、あの開かない棺桶を前にした時に。
〝ヤマトを殺した犯人を捜す〟…ヤマトをちゃんと見送りたいからな。
この〝事件〟の犯人が、もし今もこのゲームをプレイしているとしたら…。
必ず見つけ出して真実を明らかにする…ヤマトに何があったか、僕は知りたい。
――しばらくして、僕はゲームの準備を始める。
メールのURLからスマートフォンへアプリをインストール、容量が重たい訳でもない、珍しい感じもしない。
何だかありふれたフリーのアプリゲームって感じだが、何でメールでのみなのか。
ゲーム名を検索しても何もヒットしないし、質問箱と掲示板を使ってみたが何もなし。
そもそも、コレは本当にちゃんとしたゲームなのか?それすらも怪しい感じがしてきたな。
インストールが終わった…え?勝手にアプリが起動した!?…僕何もしてないのに。
ちょっと悪い予感がする、コレ…ウイルスだったりした?最近スマホにもトロイの木馬があるって聞いたし…。
画面がずっと暗いまま…(コレって、僕のスマホ…死んだ?)と思った時だった。
唐突に選択肢が現れた。
―――『理想の人間〈ユウジン〉が欲しいですか?』――〘YES・NO〙―――
「え?」思わず声が出る、何だこの質問…〝理想の人間〟?あのイントロダクションのことか?
この場合、まぁ…イエスしかないだろう。
――その直後、僕の視界は暗闇に包まれた。
「な!?何だよこれ!」
大きな音が響き、オープニングらしき音が流れて頭上から大きなゲームロゴが下りて来た…レトロゲームっぽいな。
『聖王~終わりの移民~』――〘スタート〙――
「何だこれ…僕、VRゲームなんてしてないぞ。それに、この状況…まさか異世界転生でもする勢いじゃない?」
下のスタートを選ばないと、きっと始まらないんだよな。…状況が全くの見込めないけど、始めるしかないよな。
「す、スタートする。」
――選択音と共に、ロゴと音が消える。
再度視界は暗闇に包まれ、次に待っていたのは…謎の〝面〟だった。
「宙に浮いた面…確かイントロダクションに有った【造化の面】ってやつか。」
無機質で、鼻も口もない、ただ目の穴が空いているだけの面。
コレを着けることで、本格的にこのゲームが始まるってことか…?
次回→イントロダクション③