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近親婚まとめ

きょうだいの王さまとお妃さま

作者: 佐俣気瑠奈

Pixivに投稿したもの。

むかしむかし、あるところにとても仲の良い兄妹がいました。




兄妹と言っても、直接血のつながりがあるわけではありません。二人はいとこで、兄にあたる男の子が次期国王で、妹に当たる二歳年下の女の子が、今の王様の弟君から生まれたのでした。




二人の仲の良さは宮殿でもよく知られており、国王陛下に忠誠を誓ったいかめしい将軍さえ、二人が中庭で仲良く遊んでいる姿を見ると、頬を緩めるほどでした。




将来二人がどんな道を歩むにせよ、きっと仲良く、素晴しい世の中を作ってくれるに違いない――臣下がそう確信するほどに、男の子は聡明で、女の子はとても優しかったのでした。





時は流れ、男の子は即位しました。そして、女の子を妻として、この国を治めると国民に伝えました。もちろん国民は大喜びです。これほどまでに素晴しい世がかつてあっただろうか、と噂しあうほどでした。





一方で、なぜか二人が結ばれたあたりから、父君の顔色は優れないものとなりました。何か不安を抱えているのか、妃となった女の子は足繁く義理の父の下へと通いましたが、結局国王は何か悩みを抱えたままお隠れになったのでした。





国民はもちろん悲しみましたが、それでも喜ばしいことがありました。なんと、男の子と女の子、今の国王夫妻の間に御子が生まれたのでした。新たな王族の誕生に、人々は精いっぱい手を振って、夫婦を讃えたのでした。





おうさまばんざい、おうさまばんざい。

おきさきさま、ばんざい、おきさきさま、ばんざい。




その声は毎日と言っていいほど、途切れぬことはありませんでした。




しかし、俄かにその治世に陰りが訪れました。女の子の父君が亡くなってしまわれたのです。それも、自分の剣で己を切り裂くという、恐ろしい行為によってです。




女の子は、せめて母親だけでもと努めて明るく振舞いましたが、母君も、後を追うようにして亡くなりました。





女の子に、秘密が託されたのはその時でした。





ある日のこと、お妃さまが頑張って子を授かろうと祈祷に励む姿に、夫となった王さまは心配し、気負うことはない、と優しく声を掛けました。女の子はまるで、亡くなった家族の分を埋めるように、子供を増やそうとしているように見えてならなかったからです。





そんな王さまに、お妃さまはじっと黙っていましたが、やがて、自分に託された秘密を、そっと耳打ちしました。





実は、前の国王様は密かに、お妃さまの母親と通じ合っており、子をなしたというのです。その子というのは、言うまでもなく、今のお妃さまであり、つまり、王さまは半分血のつながった、本当の妹と結婚したことになります。






王さまはもちろん驚きました。この国では、きょうだいで子をなすことは、禁じられています。それ以上に、あってはならないと常々戒められていることでした。彼らの結婚を祝福した司祭様だって、もしこの真実を知れば、何も知らない二人の御子さえも呪われた子だとして、殺してしまうように仰ることでしょう。





王さまにも、お妃さまにも罪はありません。ですが、時に、知らないことも罪となりうるのでした。そしてその証が二人の御子であり、王さまは苦しみました。




ですが、そうすればおかしなことがあります。なぜ、お妃さまは、自分の兄だと知ってなお、兄君の子をねだったのでしょうか。それは、知らぬ間に成した罪ではなく、知ってなお犯そうとする大罪に他なりません。



王さまが問い詰めると、お妃さまは笑いました。いつものように、優しそうに、それでいて、光る刃のように鋭い笑みを浮かべて。





わたしがあなたを愛しているのは、子供のころから何も変わりません。わたしはあなたとの子を授かることができて、幸せでした。そして、母から暴露された真実を知って、もっと嬉しくなりました、と。





慈愛の女神にもたとえられるお妃さまの愛はどこまでも深く、たとえきょうだいであろうと、いえ、きょうだいであるからこそ、更なる特別な関係になれたことを喜んでいるのでした。




古く、神話の中には、今の二人のような夫婦の神々が登場します。しかしそれは、神話の中だからこそ許されるのだと、何とか妹を説得しようと、兄は必死です。これ以上罪を重ねるわけにはいかない、そう言うと、お妃さまは突如激昂しました。





今まで私に囁いた愛を、すべて擲つというのですか。私とあなたは夫婦ではないですか。たった二人だけのきょうだいではないですか。私があなたの子を産んだからなんだというのですか。私はこれからもあなたと肌を重ねます。あなたの子を授かります。一生、あなたをお慕いし、愛し続けます。お兄様は、お父さまの犯した罪を、私たちにまで押し付けるのですか。愛が尊いものであるなら、どうして許されない愛というものがありましょうか。





本当のきょうだいと知った以上、もう元には戻れません。本当はお妃さまも、王さまもわかっているのでした。父親の、倫理に背く背徳の喜びこそが、二人にもっとも色濃く継がれていると。



王さまもお妃さまも、死んでしまおうかと考えるほど、苦悩するのです。けれど、それ以上に、その禁じられた愛に溺れてしまう甘美には、官能には、どうしても打ち勝つことができないのでした。



二人は末永く、愛し合い、尊敬されて暮らしました。そして、二人が昔遊んだ庭園では、王さまとお妃さまの御子が、何も知らない子供ゆえに、兄妹で、結婚の約束をしているのでした。


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