表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/94

第七十九話 しゃなりしゃなり

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

好きな野菜はモロヘイヤ。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル【楽々御粧し】の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

好きな野菜は強いて言えばニンジン。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

好きな野菜はネギ。


◇フュリス

エルタナ聖王国の女騎士。『百合爵家のフュリス』

小柄な金髪碧眼のエルフで緑基調の騎士装束を着ており、ドングリを発射するウーツ鋼製の銃を使う。

仕事の邪魔をした埋め合わせにアリエラたちが手柄を立てさせてやる事になった。

好きな野菜はナス。


◇マザー・フィオーラ

妙齢のアルラウネに擬態している魔王軍上級戦闘員。

『迷わせの森』の住人たちを脅してアリエラを待ち伏せしていた。

完全肉食性。



「あ、あの! アタシたちはもう逃げ──(シャッ)……ッ!?」

「ひッ!? は、話が違──(シャッ)あ゛ッ……」


 脅されていた様子の人花(アルラウネ)たちは“アリエラの警戒を和らげる”という目的を達成したので解放を要求したが、マザー・フィオーラの手元から伸びた何かに首を切断され悉く絶命した。


「もちろん……もう用済みなので()()致しますとも」

「一応訊いておくけれど……そのアルラウネたちも抹殺対象なのよね?」


「ええ。相当長きに渡り旅人の血を吸ってきたようですよ……私のように早くに陛下に巡り合っていられれば道を踏み外さずに済んだものを……哀れなことです」

「ワタクシたちスカウト組は大抵そうよね……。

 ──“嘯く大蛇”……(ズリュッ)


 アリエラが会話を打ち切り頭に被ったトビ鳥人の黄金髑髏の眼窩に光を灯らせ詠唱すると、右手首の切断面から絡み合った植物の蔓が生え、切り飛ばされた右手に伸び癒着する。


「(詠唱──! いきなり飛ばしますね) 

 させませんよッ(シャッ)


 マザー・フィオーラは瞬時に反応し、手を軽く振り蔓を切断した。


「チッ、ではこう……ねッ!(ヒュパァンッ!)

 アリエラは切断された蔓を鞭のように振るい、音速を超えた先端でマザー・フィオーラの顔を打擲する。


()ッ! …………(ギチギチギチャ)やってくれますね……!」


 マザー・フィオーラは痛みに顔を歪める()()()()()()()()()()()()()()()顎を粘液を滴らせながら左右に開き、鋏のような牙を覗かせて威嚇をする。



 ──『マザー・フィオーラ』──

 普段はアルラウネの慈母のような姿に擬態しているが、その正体は花ではなく人花(アルラウネ)に擬態するようになったハナカマキリの魔人である。

 バアル・ゼブブの『蟲の血族』としての眷属となった吸血鬼(ヴァンパイア)でもあり、単為生殖によって増殖した自らの分身によって個の知性と群の知性を駆使して獲物を狩る恐るべき捕食者である。

──────────────────


「いくらアナタの攻撃が速いといっても、さっきのような不意打ちでなければ回避はそう難しい話ではなくてよ?」

「……それは本体である私だけが攻撃すればの話でしょう? 分身(こども)たちも参加すればどうでしょう?(ガサガサガサッ)


 目元だけ不敵に笑うマザー・フィオーラの言葉と共に、周囲の茂みや樹上から人間と同等の大きさの地味な色合いのカマキリの魔物が姿を現した。


「ギュチチチチッ……」「ギギ……」

 マザー・フィオーラの産み出した分身のカマキリたちは顎から不気味な軋みを上げながら前脚の鎌で顔を撫で回している。


「こんな事言うのも気が引けるのだけれど……ゾッとする光景ね」

「ゾッとさせるためにやっているのですから問題ありません……よッ!(シャッ)


 言うが早いかマザー・フィオーラは白魚のような美しい手に擬態させていた前脚を禍々しい鎌に変形させ、アリエラの胴体を抱擁するように奔らせる。


「が

  ア

    ァ ッ ! ! !(ボッ!!)

 ──しかし、接触するよりも早く〈豊穣女帝(イシス)〉を解除したアリエラの爆雷を伴う咆哮がマザー・フィオーラを吹き飛ばし、周囲から飛びかかった分身のカマキリたちも熱と衝撃で粗方戦闘不能となった。


「──……〜ッ!!」

 『迷わせの森』を形成していた地形ごと吹き飛ばされたマザー・フィオーラは全身が灼け焦げこそしたものの、体内の魔石は未だ健在であり復帰する事自体は可能ではあったが、たった一度の咆哮で数と不意打ち分の有利を覆された事によってほぼ戦意を喪失していた。


──……(ピシャアッ!)続けましょうか?」

 赫い落雷と化してマザー・フィオーラの元へ着陸したアリエラは勝利を確信した笑みを浮かべ、答えの分かりきっている質問を投げかける。


「くッ……」

 マザー・フィオーラが渋々負けを認めようとしたその時──……


『あらもう終わり? では次はアタクシ様の番ね!

 しゃなりしゃなり……!』


アリエラとマザー・フィオーラのどちらでもない声が森の中から木霊(こだま)した。



 ◇



「それで……なんで魔王軍同士で争っているんだ?」

「アーちゃんに勝てたら次の四天王になれるんだってさ〜」

「まあ最初の不意打ちで致命傷を与えられなかった時点で──(ボッ!!)ああ……決まったみたいですね」


 戦いから避難していた三人が話し始めると、アリエラの咆哮の爆音と落雷が轟き、それから音が止んだため勝敗が決したのだとレイメイは判断した。


 ──しかし、


しゃなりしゃなり!!(ズゴゴゴゴゴ……)


 少女のような謎の反響する声が響くと激しい地揺れが起こり、森の木々が不自然に成長して絡まり合い、数十mはあろうかという巨大な鳥人の女体を形成し始める。


「この笑い声は……!」

「今の笑い声だったのか!?」

(ワ◯ピースの敵キャラかな?)


『しゃな〜りしゃなりしゃなりしゃなり!』


 そんなやり取りをしている間にも巨大なクジャク鳥人の木像が変な笑い声と共に編み上げられて行く。

 胴体部分は女体を模っているが、頭部と背中から生えた飾り羽根はオスのクジャクのそれであり、金属質あるいは宝石のような輝きを放っており非常に眩しい。

 飾り羽根は仏像の後背のように広がり、無数に分裂した腕にはそれぞれ強力な魔道具や神器(チートアイテム)が握られ、歪な千手観音像のような姿を成した。



「何だこの異常な魔力は……!? おいレイメイ! アレが何者か知ってる口振りだったな!? この大陸に何を連れて来た!?」

「……王妹殿下……スグフィクル様です。

 私たちが連れて来たワケではないです。一応……」

「へぇ〜……デッカ〜い……ラスボスっぽ〜い☆」


「王妹……!? 『虚飾の魔王』か!」

()ですけどね。エルタナや周囲の里に被害が出るような戦い方はしないと思いますが、一応離れておきましょう」


 王妹スグフィクルが顕現し終えて一旦は止んでいた地揺れが再び起こり、戦闘開始の予感がしたレイメイは特にフュリスに対して避難を促す。


「そだね……じゃあどこ行こっか──(シュルル……)んっ? ──(ギュンッ)ギャヒィーッ!?」

 同意してとにかく距離を取ろうとしたその時、突然かつ静かに伸びて来た植物の蔓がピチカの鳥脚に巻き付き、王妹スグフィクルの顕現した方向へピチカを引っ張り去ってしまった。


「!? お、おいピチカが!」

「ッ……ま、まあ大丈夫でしょう。ピチカさんは殿下が気に入りそうですし、危害を加えたりはしないと思います。

 それより早く避難しておきましょう。フュリスさんが巻き込まれて国際問題になったりしたら大変ですからね」


 突然の事に一瞬動揺したものの、すぐに冷静になったレイメイはフュリスを引っ張ってスグフィクルの姿が見えなくなる距離まで避難した。



 ◇



「ギャヒィーッ! ハァッ……ハァ……死ぬかと思った〜……」

 蔓に勢いよく引っ張られたピチカは一瞬死を覚悟したが、思いの外優しく着地させられ無傷でスグフィクルの下へ連れて来られた。


「ピチカ。死ぬ思いをしたばかりのところ悪いけれど殿下の御前よ。挨拶なさい。右大臣(コッコアシュフィー)閣下に教わったでしょう?」

 いつの間にか切断された右手が元に戻っているアリエラが近付いて来ると、視線だけで上を見るようピチカに促す。


「えッあッ お初にお目にかかります! ピチカと申しますッ! 本名はガブリエラです! えっと……殿下におかれましてはゴキゲンうるわしゅう〜……?」

 うろ覚えだったのか語尾が伸びた上に疑問系になってしまったが、ピチカはなんとか跪きながらスグフィクルに挨拶した。


「……申し訳ございません殿下」

『アタクシ様は良いのよ別に? 敬意が伝われば』

「寛大な処置に感謝いたしまァすッ!!

 それであーしはなんで連れて来られたんですかぁ……?」


 全く怒っていない様子のスグフィクルを見て少し安堵したピチカだったが、一対一のハズの戦いから避難したのに何故わざわざ連れ戻されたのか理解できず、おずおずと質問した。


『アリエラの装備の大半はあなたが持っていると聞いたから……それに新入りの顔を見ておきたくって。

 なるほどねぇ……良いセンスね。気に入ったわ!』


 スグフィクルはピチカの姿……特に髪飾りの大量に付いたサイドテールを観て褒めた。


「ギャヒヒッ……そうですかぁ〜? 照れちゃうな〜☆」

『うんうん……良い事を思い付いたわ! あなた、アタクシ様の専属にしてあげる!』


「え゛ッ!? い、いやぁ〜それはどうなんでしょう〜? ねえ? アーちゃん」

「そう……ね。

 殿下。残念ですがピチカはワタクシの旅の共連れですので──……」


 ピチカとアリエラはやんわり提案を断ろうとしたが、スグフィクルは首を傾げるような動きをして話を続ける。


『そういう理由なら問題無いでしょう?

 アリエラは今からアタクシ様に敗れて四天王ではなくなるのだから……お兄──陛下から特例として認められているこの旅はここで終わりよ?

 まァ四天王でなくなっても何らかの幹部の地位は与えられるでしょうけれど……しゃなりしゃなり……』


 元とはいえ魔王であるスグフィクルは自分が勝って当然であるという態度を臆面もなく出し、再びピチカを勧誘しながら無数の手のうちの一本を差し伸べた。


 ──しかし、その手を遮るようにアリエラが立ち位置を変える。


「お言葉ですが殿下。その判断は些か早計かと。侮りが過ぎると火傷では済まなくなりましてよ?」

『ふぅ〜ん……()る気なの? 降参すれば無傷で帰れたのに……。

 ピチカ自身はどう思うの? アタクシ様の専属になった方がアリエラの専属よりお得よ?』


 怒りを抑えつつ魔力を滾らせるアリエラを見てスグフィクルは手を引いて再びピチカを見遣る。


「じゃあ、あーしも言わせてもらいますケドぉ……損得なんか考えてたらアーちゃんと旅なんかできませんからッ!! 大変な事も多い──……っていうか大変な事の方が多いケドなんやかんや楽しいから旅してるんで!!」

「ピチカ……(少し貶された気もするけれど……)

 では装備を出してくれる?」


 言い回しにトゲはあったものの、自分との旅を優先したピチカに安堵したアリエラは黄金髑髏や武器を念動力で浮遊させて戦闘準備を整える。


「ん! じゃあガンバってねアーちゃ──

『包め〈生命の実(セフィラ)〉よ』──ナニコレ!?」


 アリエラに装備を渡したピチカが再び避難しようと踵を返した瞬間、スグフィクルの発動した魔術によってピチカは虹色の宝石のような果実の中に閉じ込められた。


「殿下!?」

『しゃなりしゃなり……落ち着きなさい……避難するまで待ってられないから保護しただけよ。マザー・フィオーラも保護済みだから安心なさいな。

 元とはいえ魔王のアタクシ様との戦いだから……少しハンデをつけてあげる』


「……一応聞きましょうか」

『アタクシ様はあの〈生命の実(セフィラ)〉を維持出来なくなった時点で負けを認めてあげる。

 最悪アタクシ様を倒せなくても〈生命の実(セフィラ)〉を破壊出来ればアリエラの勝ちよ。どう?』


 あくまでも自分が圧倒的に強いという前提で話をするスグフィクルにアリエラは顳顬(こめかみ)に血管を浮かせながら笑みを見せる。


「……ではワタクシは〈生命の実(セフィラ)〉に一切触れずに殿下を倒して見せますわ。

 限界を感じたら降参なさって下さいましね? 殺してしまっては陛下に申し訳が立ちませんもの……!」

◇マザー・フィオーラ

ハナカマキリの魔人で魔王軍上級戦闘員。

魔人化によって花ではなく妙齢のアルラウネに擬態するようになり、知性を獲得した。

初の獲物と狙いを定めたのが幸か不幸か森林散歩をしていた魔王であり、あっさり捕獲され魔王軍に降った。

その後バアル・ゼブブの眷属『蟲の血族』の吸血鬼となった。

本体が死んでも単為生殖で増える分身が一匹でも生きていれば本体に成長して再び増える事ができる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ