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第七十五話 『百合爵家のフュリス』

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

好きな鶏肉の部位はモモ肉。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル【楽々御粧し】の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

好きな鶏肉の部位はムネ肉。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

好きな鶏肉の部位はササミ。


◇フュリス

エルタナ聖王国の女騎士。『百合爵家のフュリス』

小柄な金髪碧眼のエルフで緑基調の騎士装束を着ている。

脱法市場の取り締まりに来た際にアリエラたちと交戦、手作りの銃を発砲してきた。

「……!? バカな……!」


「まさか南西大陸の森妖精(エルフ)の騎士が銃とはね……」

「弾はドングリですか……」


 手作り握り筒(パームピストル)から発射されたドングリの弾丸をアリエラとレイメイは難無く指と指の間に挟んで止め、興味深そうにフュリスの方を見遣った。


「驚きはしたけれど……火薬ではなく空気を炸裂させているのね? それだと威力がね……この弾はさっきの矢みたいに追尾しないのね?」

「指に当たった判定──いや、それだと矢も止まっていたでしょうし……」


 既に脅威と見做していないのか、二人は悠長に武器や魔術についての考察をフュリスの目の前で始める。


「私にはその手の魔術が不得手なだけだッ! くっ……(ゴロンッ)もういい殺せッ!! 部下には手を出すなよ!」

 侮られていると感じたが最早反撃の手段も無いフュリスは諦めて床に大の字に寝転んだ。


「わァ……本場の(?)“くっ殺”だぁ!」

 その時、逃げ出していたピチカが戻って来た。


「あ、逃げないでくださいよピチカさん」

「ゴメンゴメン。ビックリしてつい……」

猫妖精(ケットシー)ちゃんたちは皆逃げ出せた?」


「すごい勢いで逃げてったよ〜」

「そう……よかったわ。

 ではこれからどうしましょうか。アナタ……確か名前はフュリスだったかしら?」


 ケットシーたちの無事を確認して安心したアリエラは無抵抗に寝転がるフュリスを見下ろす。


「そんな事訊いてどうする! 一思いに──(ピピーッ!)……!」

 話を聞かないフュリスの言葉を遮り、先程フュリスの鳴らしたものと同様の笛の音が鳴り響いた。


 警笛の音がした方向をアリエラたちが見ると、別のエルフの騎士隊が大蛇のように伸びる太い木の枝に乗って迫って来ていた。


「──! フュリス隊が倒れて……!? 総員放てッ!」

「「「「はッ! 〈早贄の投擲槍(インペールジャベリン)〉!」」」」

 

 フュリスとは異なり指示を出した隊長自身も袖口から木の枝の投擲槍を作り出し、アリエラとレイメイ目掛けて計五本の槍を投げつける。


「別動隊だ! ざまぁ見ろ!」

 助けに歓喜したフュリスは寝転んだまま威勢を取り戻した。


「ギャヒィッ攻撃してきた!」

「さっきのより少し強そうね」

「面倒ですね……〈白毒雲〉ッ」


 名前からして先程の〈早贄の矢(インペールアロー)〉と同質の攻撃であろうと判断したレイメイは追尾攻撃が始まる前に纏まっているエルフの別動隊に白い毒雲を吹きかけた。


「がヒュッ……!? な、嘗めるなよぉッ……!」

 別動隊員たちの槍は毒を吸うと共に停止したが、別動隊長だけは気合いで術を発動し続け、回避された槍は勢いよく成長してレイメイに迫る。


「おっと……(ガシッ)タフですね」

「うぐッ! 貴様ァッ!!」


 すかさずレイメイはフュリスの襟元を掴んで盾にし、追尾する木の槍の軌道を逸らさせた。


「ぐっ……! クソぉ……(ガクッ)!」

 ここで別動隊長の気力は尽き気絶、槍の成長も止まった。


──……(ピピーッ!)まだまだ増援が尽きなさそうですね……幸い森に入る準備はできてますし、森で追手を撒きますか」 

「そうね。これ以上争っても益は無さそうだし……」

「もっとゆっくりしたかったな〜」


 一行は周囲から鳴り響く警笛の音を避けながら森の奥深くへ南下して行ったのであった。

 レイメイに襟元を掴まれたままのフュリスを連れて……。



「おい貴公ら何があった!?」

 アリエラたちが去った直後、他のエルフの別動隊も続々と駆けつけ、毒の効果で喘鳴を上げて蹲る騎士たちの安否を確認する。


「ゲホッ……()ゥ……即効性ではありますが、毒使い本人によるとあまり強い毒ではないそうですっ……。

 それよりもフュリス卿が他所の大陸から来た連中に攫われました……!」

 すると最初にアリエラに殴られて倒れていた騎士がなんとか起き上がり、状況を説明する。


「なにィ〜ッ!? チッ……面倒な事になったな……」


 説明を受けた騎士からは怒りよりも、攫われたフュリスを煩わしく思う感情が強く滲み出ていた。



 ◇



「お、おい! 貴様ら冒険者なんだろう!? こんな事をしてタダで済むと思っているのか!? 何故私を拉致してるんだー!!」 

 自分より圧倒的に強いレイメイに全速力で森の奥深くまで引っ張り込まれ、さすがに恐怖を覚えたフュリスであったが、なるべく恐怖を虚勢で隠しながら目的を尋ねる。


「また追尾攻撃されると面倒なので……盾代わりに連れてるだけですからご安心を」

「それのどこが安心なんだ!?」


「それに今は冒険者ベルトを着けてないので組合(ギルド)からの罰則はありませんよ」

「あのベルト便利だけどガバガバだよね〜」

「ガバガバだから便利なのよ」


「……ッ」

 すっかりトラブル慣れしたピチカも含め『パリピ☆愚連隊』との温度差にフュリスは閉口した。


「……盾代わりというのもあるけれど、誤解を解いておきたいという目的もあるのよね。少しお話しましょう? ワタクシたちだって無闇に争いたいというワケではなくてよ?」

 アリエラは怯えている様子のフュリスを見かねて優し目の口調で話しかける。


「誤解!? 何がだ!? 違法商店の取り締まりを妨害しておいて……というか先に攻撃してきたのは貴様だろう──」

「先 に ケ ッ ト シ ー ち ゃ ん に 危 害 を 加 え た の は ア ナ タ た ち で し ょ う が ッ ッ ッ ! ! ! ! ! ! !」


 エルフの騎士たちがケットシーを拘束しようとしていた事を思い出したアリエラの怒りが急に爆発した。


「ヒッ!?」

「ギャヒィーッ!?」

「アリエラさん大声出さないでください。余計に怯えさせたじゃないですか……ピチカさんはいい加減慣れてくださいよ」


「だだッ、誰が怯えてなど……ッ」

「あーしはビックリしただけだから! 

 てかさあ、あの市場って合法なんだよ? 森じゃなくて海の上にあるから! そっちが早とちりで襲ってきたからアーちゃんだって反撃したワケでさぁ……」


「そんな詭弁が通じるかッ!!」

「フゥー……お互いまだ興奮しているようだから、とりあえず追手を撒いてから腰を据えて話し合いましょう?

 ……なんだかこの旅って逃げるように去って行く事が多いわよね」

「誰かが騒ぎを起こすからじゃないですかね……」


「そう。いつも誰かに邪魔をされがちなのよね……困るわ」

 アリエラにレイメイの嫌味は通じなかった。



 ◇



 マングローブ林を後にし、鬱蒼と繁る巨大樹の森までフュリスを連れて来た一行は、頂点を見上げれば後ろに転んでしまいそうな程背の高い巨大樹の中腹に空いた洞の中に腰を落ち着けた。


「……で? 私と何の話し合いをしたいって?」

 落ち着きを取り戻したフュリスはレイメイに掴まれていた襟を正しながら、アリエラを睨む。


先刻(さっき)も言ったけれど、ワタクシたちにはエルタナと事を構えるつもりは毛頭無いの。

 まだ辺境で食事と買い物をした程度しか堪能していないし、エルタナ国内を含め南西大陸をちゃんと見て周りたいのよね。

 だから今回はお互い非があったという事で和解しましょう? 追手を殺さずに退けるのも結構疲れるのよ……アナタの上役に一言伝えておいてくれれば良いから ね?」


「自分の都合ばかりベラベラと……だが追手の事はそこまで心配しなくても良いと思うぞ」

「……? 何故? アナタ百合爵家とやらの出身なんでしょう? 高位の貴族家の騎士が攫われたなら血眼になって捜索するのではなくて?」

 

 当然の疑問を投げかけるアリエラに対しフュリスは自嘲気味に口角を上げた。


「まあ……捜索するフリくらいはするかもな……しかし、私の騎士としての地位は家の後ろ盾あってのものだし、私自身は貴種森妖精(ハイエルフ)でもないし聖女としての適性も低いから……人手を投入して探す程の価値は無いだろうな。

 さすがに死亡が確認されれば冒険者ギルドや貴様らの国への攻撃材料くらいにはなれるだろうがな……」


「「「…………」」」

 フュリスの思わぬ地雷を踏んでしまった三人は気まずそうに沈黙した。


「い、生きてれば良い事あるって☆」

「雑な慰めはやめろッ! フンッ!」


 ピチカの慰めは通用せず、フュリスは三角座りをして顔を埋めてしまう。

 その様子が不憫に映ったのかアリエラは一考して口を開いた。


「ふむ……では……お詫びと言っては難だけれど……ワタクシたちの素性について教えてあげてよ」

「 は ? ちょっとアリエラさ──」


「ワタクシは魔王軍四天王が筆頭『殲滅女帝アリエラ』

 他の二人も細かい所属や地位は伏せるけれど魔王軍よ」 


 レイメイの制止は間に合わず、アリエラはハッキリとフュリスに聞こえるように素性を明かした。


……!?(バッ) 何をバカな──……いや確かに種族や特徴は一致するが……密偵として来たのか? あの『殲滅女帝』がか?」

「単なる自分探しの旅よ」


「は? いや……何故バラす? 冥土の土産というヤツか?」

「それはアナタ次第ね……この情報を持ち帰って手柄にするならワタクシたちは全力で阻止するけれど……この情報を秘密にするならアナタが手柄を立てるのにタダ同然で協力してあげてもよろしくてよ? 魔王軍ではなく冒険者としてね」


「……! いいだろう……雇ってやる!」 

「決まりね。……勝手に決めちゃってごめんなさいね?」

「あーしは別にいいんだけどさ……」

「チッ……約束を反故にしたら容赦しませんからね……最寄りの冒険者ギルドで正式に契約しましょうか」


出発(デッパツ)だー☆」

「では行くわよフュリス」

 またもや正体をバラすアリエラに苛立つレイメイが洞から飛び降りると、アリエラとピチカも続いて洞から飛び出た。


「お、おい貴様らの常識で移動するな! こんな高い所から飛び降りられるワケないだろ!」

 フュリスは引き返してきたピチカ掴まれて地上に降りたのだった。

◇エルタナ聖王国の貴族階級

エルタナの貴族にはそれぞれの家の当主の貴種森妖精(ハイエルフ)が産まれた世界樹の花の種類に応じた爵位が与えられる。

本来それらの爵位に上下関係は無く平等であったが、現在では聖王や聖女をより多く輩出した『百合爵家』や『薔薇爵家』が上位の貴族として幅を利かせている。

他にもカメリアの実家である『椿爵家』など汚れ仕事を買って出ている家もある程度の特権が保証されている。

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