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第七十一話 最下層

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

現在、第二形態に変異している。

使用言語は古代南方大陸語。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル【楽々御粧し】の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

使用言語は中央大陸南部語混じりの南東空域語。前世の記憶が戻ってからは日本語も混ざっている。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

使用言語は東方大陸中原語。


◇『三巨頭』

魔王軍最強の怪力を持つ王種妖巨人。

三つの頭全てが狂戦士化した結果、正気に戻れず魔王軍に拘束されていたが、オヴォル卿によって解き放たれた。


 山羊のような鳴き声を上げながら封印されていた部屋から出てきた『最終兵器ミシャンドラ』の頭は、鳴き声通りに山羊のそれであった。

 第二形態のアリエラ(※ガ◯ダムくらい)より大きく、横長の瞳孔をした真紅の眼球が七つもある点を除けば。


 続いて出てきた計14本の長い手足は蛙人(トードマン)のもののように粘液に被われており、手と足の役割を入れ替わり立ち替わりに交代して床や壁を這わせ、胴体は黄金の大きな翼が生え羽毛に被われている。


 そして身体の所々には様々な鳥獣を誇張的に模った金仮面が埋め込まれていた。


「これが……」「ミシャンドラ……!?」

 四天王筆頭である自身にすら詳細は秘匿されている存在なので当然だが、どう見てもまともな方法で生まれたようには見えず、一般市井に知られれば魔王国への攻撃材料になり得るという事はアリエラにも容易に想像がついた。


「「「…………!」」」

 対峙する『三巨頭』も狂っているなりに──むしろ精神が獣になってしまったからこそミシャンドラの力を感じ取ったのか、アリエラに与えられた傷を押して立ち上がった。


「『三巨頭』……本当にタフね……!」「ミシャンドラ──(ザザッ……)……言葉は通じるのかしら? 捕縛に協力してくれる?」

 アリエラはザラついた異音を感じていたが、それより大きな問題が山積みになっているので無視してダメ元でミシャンドラに協力を要請する。


「……四天王筆頭『殲滅女帝アリエラ』・『三巨頭』共に最下層への立ち入り権限の未所持を確認。

 状況から見て〈不遜の塔(バベル)〉への損傷を両名によるものと断定。

 排除行動に移行──(ザザッ……)メ ぇ エ゛ ッ!」


 途中で鳴き声に変わった宣言と共にミシャンドラは禍々しい極彩色の魔力を纏い、手足を剣や槍のように変形させ始めた。 


──『最終兵器ミシャンドラ』──……

 最下層への立ち入りが許された一部の者しか詳細を知らず、“戦闘能力だけならば魔王に匹敵する”という噂が魔王軍内で囁かれている存在である。


 その正体は魔王国に点在する七十二都市に設置され、日常的な(まつりごと)の補佐や有事の際は魔王国所属者に魔術を授ける人造悪魔『ゴエティアシリーズ』を統括する人造大悪魔……魔術名〈無名の大総統(ミシャンドラ)〉と言い、端的に言えば他の人造悪魔たちの魔術を戦闘特化型に調整して全て使える、まさに最終兵器なのである。

───────────────────


(ここからさらに敵が増えるとはね……噂通りの力があるなら手負いの『三巨頭』くらいは簡単に止められるでしょうけれど)(……無抵抗で()られるのは癪ね。反撃──いや、自棄(やけ)を起こしている場合では無いわね……)

 

「メ ェ え゛──(ザザッ……)徴収完了。攻撃に移行」

 変異したミシャンドラの腕と魔力がアリエラと『三巨頭』に向けられた。



 ◇


 一方、ピチカはレイメイに肩を掴まれて最下層へ向かう亜空間を落下していた。


「ね、ねえメイメイ! やっぱムリだって! あんな大怪獣バトルに巻き込まれたら死んじゃうって!!」

「ちょっと気を引いてくれればいいですから! それに死んだら──(ザザッ……)我再三言復活給貴女!!」


「だから死んだらナニって!?」

「我無法理解貴女語言! 我々──(ザザッ……)そろそろ着きますよ! ちょっと衝撃的な光景かもしれませんが、悲鳴を上げたりはしないでくださいね!!」


 レイメイが言うのとほぼ同時に視界が開け、ピンクの肉壁が蠢き、先の十字路では第二形態のアリエラ・『三巨頭』・ミシャンドラの異形の三者が取っ組み合っている。


「んギャッ……!? なにココ……?」

「だから最下層ですってば……さて、『三巨頭』の注意を一瞬でいいから引いてくれますか?」


 よく見るとアリエラと『三巨頭』は全身に生傷を負っており、アリエラはミシャンドラの攻撃が『三巨頭』に直撃しないように逸らしながら戦っていた。


「アーちゃん!」


 思わず声を上げてしまったピチカに三者の視線が一斉に集まる。


「ピチカ!?」「──(ザザッ……)……シィー・ィエラゥク(※古代南方大陸語)!?」

(ナニ言ってるかわからーん!!)


 レイメイとはまた別の言語を使って話すアリエラの質問の意味はピチカに通じなかったが、驚いている事だけは伝わった。


婀璃獲羅(アリエラ)女士! 集中於『三巨頭』希望!」

 レイメイは自分の喋る東方大陸中原語は伝わらないとは理解していたが、一応指差しながら『三巨頭』の方を指差して指示をだした。


「──!」「ェノィタル・カー!?(ボッ)

 なんとなく意図を察したのか、アリエラは斥力の壁を飛ばしてミシャンドラとの距離を空けて『三巨頭』へ攻撃を集中させ始める。


──(ザザッ……)ミシャンドラ! ここは私たちでなんとかするので所定の位置に戻っていてください!」

 再び言葉が通じるようになりレイメイはミシャンドラに対話を始めた。


「───(ピッ)─!!

 『五毒姫・親指のレイメイ』からの停止要請受諾──……『五毒姫』の場合、停止には後二名の停止要請が必要です。

 再起動──引き続き『殲滅女帝アリエラ』・『三巨頭』及び『戦闘員ピチカ』の排除行動を実行」


「ギャッ!? あーしも!?」

 

 レイメイの言葉に反応して一瞬動きを止めたミシャンドラだったが、すぐさま停止要請を拒否して活動を再開、ピチカも攻撃対象に含み攻撃態勢に入る。


「チッ……! だから機械仕掛けにするのには反対したのに──……アリエラさんピチカさん! 引き続き『三巨頭』を相手しててください! 私はミシャンドラを足止めしておきます!!

 ──〈五毒飛頭降(ごどくひとうこう)『蛇』〉ッ!

 ──〈屠絲魘縛(としえんばく)羂網(わなあみ)』〉……!」


 レイメイは指示を出すと頭部を大蛇に変えミシャンドラの前でくねらせて壁代わりにし、首無しの身体で輝鋼銀(ミスリル)糸の網を展開して進路を塞いだ。


「レイメイ! 道を塞ぐよりミスリルを『三巨頭』に使って頂戴!」「吸血鬼(ヴァンパイア)化しているから手っ取り早いわ!」


「なるほど……それで体毛が白く……ピチカさん! 

楽々御粧し(ドレスアッパー)】でアリエラさんに私の予備のミスリル武器を渡してください!」

「うァあ……ォ、オッケー!」


 踊りで気を引くどころか戦いの風圧に振り回されていたピチカは、なんとかアリエラにミスリル糸の束をアリエラの主腕に持っていた武具と交換してみせた。


「る゛ォ お ォ オ オ゛ ァ ア゛ ッ ! !」

 得体の知れないミシャンドラと隔離されたと分かると、『三巨頭』は思い切り振りかぶったが──……


「──〈葬送帝(アヌビス)〉ッ!」「擬きとはいえ吸血鬼(ヴァンパイア)ですものね……!」


 アリエラは浮遊させていたオオカミ獣人の黄金髑髏を左頭に被り術を発動、黒い影の沼に変質した魔力を床や壁に広げると沼からは次々と巨大な黒い腕が飛び出し、アリエラが放ったミスリル糸を手繰り寄せると『三巨頭』の手足に素早く巻き付けた。


「ガあッ……(ピンッ……)……!?」

 まず殴り抜こうとした右腕が煙を上げて斬り刻まれ、体勢を崩した『三巨頭』は残る三本の手足も自らの力と体重によってミスリル糸に斬り刻まれる。


 吸血鬼(ヴァンパイア)化していたのが災いし、弱点である銀による斬り口は重度の火傷のような状態に陥り、王種妖巨人(キングトロール)としての再生能力も機能していない今、『三巨頭』は最早戦闘不能──……かと思われた。


「「「……(ドチャッ!)あ゛ァ ア ア ! ! !」」」

 『三巨頭』は瞬時に斬られた手足の断面で床を蹴り、四足獣のようにアリエラに突進する。


「ッ!?」「──(ドズッ)カハッ……!」

 突然の事に斥力で防ぐ暇も無く、アリエラの腹に『三巨頭』の中央頭の巨大な猪の牙が突き刺さった。


 咄嗟に牙を掴んで胴体を貫通されるのは防いだものの、第二形態に入り魔人化しているとはいえ決して浅い傷でもなく、アリエラは徐々に後退し十字路の中央まで押し返される。


「ヤバいヤバいヤバいッ……! うゥ〜……行ったれ!!」

 アリエラと『三巨頭』が膠着状態に陥り、暴風が止んだ事で自在に飛べるようになったピチカは勢いで覚悟を決め、その大きめの鳥脚に蒼玉の大曲剣を握って特攻した。


(ピチカ……!?)(一体何を──……(キィンッ!)ッ!?)

 アリエラは自棄を起こしたのかと思ったが、大曲剣を振り上げると同時に響いた硬質な衝撃音でピチカの狙いを理解した。


「ブ ギ ィ イ イ゛ ッ ……(ピキッ) !」

 

 ピチカが鳥脚で振り上げた大曲剣は『三巨頭』の猪の牙を切断──……とまではいかなかったが、表面に斬れ目を入れ、亀裂を走らせた。


(出会った頃は“逃げ足しか取り柄が無い”だなんて豪語していたのに……)(まさか戦闘で助けられる程頼もしくなっているとはね……!)

 アリエラは出会ったばかりの頃のピチカを懐かしみながら、『三巨頭』の牙を掴む腕に思い切り力を込める。


……(バギィッ!) ブ キィ イ゛イイ゛ッ!!」

 そのまま牙を折られ激昂する『三巨頭』の中央頭だったが──


「「フ ン ッ ! !」」

フ ぎュ ッ ! !(ドズンッ!)

 

低い姿勢から突き上げていたのが災いし、アリエラが渾身の力で踏み込んだ〈麒麟震天脚(きりんしんてんきゃく)〉によって踏み潰され、沈黙した。


「フ ぉ オ゛ ォ オ オ ! !」「ア ォ お゛ ォ オ ン゛ ッ !」

 残る左右の頭も怒号を上げて抵抗するが、再生できず短くなったままの手足をバタつかせるだけでアリエラの足を退かす事はできなかった。


「『三巨頭』……そろそろお互い休まない?」「裏にミシャンドラも控えている事だし……」

 一段落着いたと判断したアリエラだったが、背後ではレイメイがミシャンドラの攻撃を遮っているのを思い出した。


 その時──、



「少し寝ている間に随分な騒ぎだね……アリエラ」


 上部の亜空間から光り輝く雄獅子の金仮面を被った熾天使のような存在──『魔王レフィクル』が降臨した。


「陛下ッ!?」「お騒がせして申し訳ありませんわ……」

 アリエラは『三巨頭』の頭から足を退け、少し離れて跪いた。


「ああ。いいから『三巨頭』を抑えて──」

「る ァ あ゛ ア゛ ァ ア ア ッ ! !」


 魔王が注意するが早いか『三巨頭』はアリエラに切断された手足で飛びかかる。


「ふん……(ズブッ)」「さすがに──(ザザッ……)ォイト・ネス」

 アリエラは特に慌てるでも無く、跪いたまま自らの禍々しい蠍の尾針で『三巨頭』を串刺しにして持ち上げた。


「良いねそのまま。……〈不遜の塔(バベル)〉を早く修理しなくてはね。

 神業(チートスキル)解放。【光掲者(ルシフェル)】──……(カッ!)


 魔王が呟くと、頭上の尾を咬む虹色の蛇は純白の光輪に変化し、背中からは元からある三対の白翼に加えてもう三対の白翼が追加され十二枚の白翼を展開し光を放った。


「ミシャンドラ。緊急停止。

 レイメイ。ピチカ。影になる場所に避難し給え」


 指示を出しながら魔王は手元に“赤地に八方に広がる鬣の金獅子”の図柄が描かれた魔王国の国旗が付いた長い杖──神器(チートアイテム)【天威の御旗】を出現させる。


「すまないがちょっと強め灼くよ。

 ──〈不滅の太陽(ソール)〉」


「「「ギッ……(ジュッ)! ア ぁ ア゛ッ……」」」

「「うッ……!」」


 術名と共に杖の先端に純白の魔力球が発生し、吸血鬼(ヴァンパイア)化した『三巨頭』は身体を陽光で灼かれ、一瞬にして体表が炭化して悲鳴も上げられなくなり、光に強い耐性を持つアリエラですら目が眩む。


「良し。とりあえず一件落着かな。

 後片付けが大変そうだなァ……」


 魔王の呑気な美声だけが最下層に響いた。

◇【天威の御旗】

かつて『光の大賢者』と呼ばれた異世界人に与えられたチートアイテム。

光属性の魔術を強化する力を持ち、俗に『最強の杖シリーズ』と呼ばれる物の一つ。

おまけとして取り付けた旗の組織に所属する者に距離を無視して魔力を付与する力も持っている。

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