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第七十話 〈不遜の塔〉

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

現在、第二形態に変異している。

父は『ティトゥラエリン王朝』の王の一人ネクアバ。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル【楽々御粧し】の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

父はサメ魚人らしいがピチカに面識はない。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

今回は出番無し。

父はおそらく東方大陸中原系だと思われる。


◇『三巨頭』

魔王軍最強の怪力を持つ王種妖巨人。

三つの頭全てが狂戦士化した結果、正気に戻れず魔王軍に拘束されていたが、オヴォル卿によって解き放たれた。



 ◇



「どこだどこだ〜? あ、あった! そりゃっ(ポイッ)

 装備を揃えて最下層へ向かったアリエラを見送ったピチカは、スクラップの山の中に転がっていたサイ獣人の黄金髑髏を床に空いた穴に放り込んだ。


「ピチカさん! 今どんな状況ですか!?」

 すると実験区画上部に広がる亜空間を抜けて〈白毒雲〉に乗ったレイメイが合流した。


「メイメイ! なんか(ザザッ……)『三巨頭』が【全能鍵】ブン回して床壊しちゃったみたいでアーちゃんがフル装備で追っかけてったよ!」

 ピチカはできるだけ簡潔に状況を説明したが──……


「…………?」

 レイメイは怪訝な顔をして首を傾げた。


「だーかーらー! なんか下に『三巨頭』が落ちちゃってアーちゃんが追いかけてったの! あーしがついて行ってもジャマになるからメイメイが助っ人に行ったげてよ!」

 緊急時だというのに話を理解していない様子を見せたレイメイに業を煮やしたピチカは身振り手振りを交えて再び説明した。


「……! 不良状況也……〈不遜的塔〉的損害甚大也……!」

「ん??? なんて?」  


 その様子を見たレイメイが何か呟いたが、ピチカには何と言っているのか理解できなかった。

 内容が理解できないという意味ではなく、レイメイの使っている言語そのものが聞き慣れない言語として聞こえたのである。


……(ザザッ)だから〈不遜の塔(バベル)〉に甚大な被害が出ていると──」

「あ! わかるようになった! 今の謎言語なに!?」


 ザラついた異音がすると、レイメイの言葉の意味が再びちゃんと伝わるようになった。


「私はいつも通りに喋ってましたよ……ピチカさんもですよね?」

「? う──……(ビーッ! ビーッ!)んギャッ!?」


 レイメイが確認していると、突如警報音が鳴り響きピチカの耳を(つんざ)き、機械的な音声の放送が始まる。


『緊急事態発生。〈不遜の塔(バベル)〉損傷』


「さっきも言ったんですが……マズい状況ですよ……」

「バベルってなんかアーちゃんにも秘密のヤバいヤツだったっけ?」


 ピチカはエレベーターに乗る際にアリエラから聴いた話を思い出した。


「陛下がこの世界全体に掛けた言語翻訳魔術の中枢の事です……アレがあるから私とピチカさんの会話が成立しているワケですが──……今、一瞬お互いに何を言っているか分からなくなりましたよね?」

「うん……」


「……完全に破壊された場合、世界中の大陸・国・一部の種族間で言葉が通じなくなります。

 するとどうなるかはピチカさんにも想像が付きますよね?」

「超絶クソパニック……?」


「まあ……そうです。大きめの戦争が幾つか起きるかもしれませんね……」

「クッソヤバいじゃん!!」


 ピチカは魔王の理念に真っ向から反する事態に陥ろうとしている状況を理解して青褪める。


「そうですよ! だからピチカさんも行きますよ!」

ギャヒッ(ガシッ)!? あーしも!?」


 戦力外通告されて待機を指示されると思っていたピチカは予想外にレイメイに肩を掴まれ驚愕した。


「もし死んだら──(ザザッ……)我復活給貴女!」

「死んだらッ……ナニ!? ヤダー!」


 抗議虚しくピチカはレイメイに奈落の底へと引っ張り込まれた。



 ◇



 魔王城最下層──……。

 魔王軍の中でも魔王と一部の上級幹部しか詳細を知らず、立ち入りも禁じられている重要区画である。

 魔王国どころか世界全体に影響を与えかねない重要な魔術の中枢機関や情報が保管されており、当然アリエラは基本的に立ち入りを禁じられている。

 

 配管などがそこら中に張り巡らされ何処か工業的であった上層や実験区画とは異なり、脈動するピンクの肉のような床や壁・巨大な白骨で出来た柱・通路の各所にはおそらく扉代わりなのであろう大きな口が付いている。

 元々『三巨頭』が拘束されていたような広大な十字路になっており、突き当たりには一際大きな扉代わりの口が付いている。


「これが最下層……不気味ね」「それより『三巨頭』は──……」

 初めて最下層を訪れたアリエラが地獄のような最下層を見回すと、岩のような瘡蓋の破片が通路右側に散らばっており、『三巨頭』がそちらへ向かったのだと物語っている。


「ブ ォ オ゛ オ゛ ッ !(バキャアッ)!」

 その推測を肯定するように右側から『三巨頭』の咆哮と何かの破砕音が聞こえてきた。


右側(そっち)ね!」「止まって頂戴!」

 

 一応『三巨頭』に声をかけながら追うアリエラは、右主腕に新月刀(シャムシール)・右副腕にハヤブサの飾りが付いた王笏(セプター)・左主腕に雄獅子の盾・左副腕に翠玉の生命十字(アンク)を持ち、背後に手持ちの黄金髑髏を浮遊させた全力装備である。


「うゥヴヴゥ……」

 アリエラが右側通路に駆け込むと、その視界には突き当たりにある一際大きな出入り代わりの口の歯を【全能鍵】で砕き、その先の部屋に侵入しようとする『三巨頭』の後ろ姿があった。


「させるかッ!(ビュッ)

 アリエラがすかさずシャムシールを振ると、その切先からは空色の飛ぶ斬撃が放たれ、『三巨頭』の背中を斬り裂き斥力で傷口を無理矢理拡げた。


「ブギャオお!!(ザワザワッ)」「ヴゥヴう……(ビチビチッ)

 生命力を大きく消費していた『三巨頭』にとって決して小さな傷ではなかったハズだが、全身の体毛が逆立ち脱色すると、拘束から解放された直後と遜色ない速度で肉体を再生させる。


「……!?」「まさか、オヴォル卿の腕を取り込んで……吸血鬼(ヴァンパイア)擬きに……!」

   オ゛       ォ

「ア゛  ォ    オ    オ゛ ッ ! !」

       オ

 『狼の血族』真祖であったオヴォル卿の血を腕ごと吸収した影響が遅れて発現、振り返った『三巨頭』は背中を斬りつけたアリエラを真紅に変色した計六つの瞳で睨み咆哮した。


「チッ……オヴォル卿……余計な事だけして死んでしまうんだから……」

 ようやく再生力が低下してきた『三巨頭』に新たな再生力が追加され舌打ちするアリエラだったが、相手が吸血鬼(ヴァンパイア)擬きならばむしろ自分にとっては有利に働くのではと直感した。


「──“緋色の亜麻布”」(叔父上の黄金髑髏が無いとはいえ〈太陽帝(ラー)〉なら効くハズ……!)


 詠唱に合わせて周囲の気温が急激に上昇、毛皮に被われた『三巨頭』は大汗を流し、最下層の扉代わりの口たちは苦し気に歪んだ。


「ゔ ォ オ゛ ア ア゛ ッ ! !」

 『三巨頭』は本能的にアリエラ目掛けて拳や【全能鍵】を振り回して詠唱を中断させようとするが、アリエラが右副腕に装備した王笏によって精密性の増した〈天空女帝(ヌト)〉の斥力と左主腕に装備した盾によって阻まれる。


 そうして生まれた隙をシャムシールで斬り裂かれ、翠玉のアンクでアリエラ自身は回復しながら吸血鬼(ヴァンパイア)擬きとなった『三巨頭』の身体を灼いていく。


「フフフッ……無駄よ」「──“繋がる絞縄”……」


「「「ギャ ッ(シュボッ)あ ァ ア゛!!」」」

 二節目の詠唱によって更に気温が上昇し、以前詠唱を使用したシィシアや色欲(ラスト)の副王(ヴァイスロイ)とは違い灼熱への耐性や防御手段に乏しい『三巨頭』の身体は早くも炎上を始めた。

 

「「「「ぎ ィ や ァア ァ ! ! !」」」」


 しかし──……勝利を確信し三節目を詠唱するよりも先に、大きな悲鳴が最下層全体から響き渡り、驚いたアリエラは詠唱を止めた。


 アリエラの発する熱によって最下層を構成する肉壁が灼け焦げ、肉壁の各所についた扉代わりの口たちが悲鳴を上げたのである。


「痛覚があるの!?」「くッ……!」

 肉壁についた口たちが開き、その中から次々と禍々しいドロリとした魔力が漏れ出しているのを見たアリエラは慌てて〈太陽帝(ラー)〉の発動を中止し、生命十字(アンク)を足元に突き立て回復魔術を最下層全体にかけた。


「「「ウ が ァ ア あ゛ ッ ! !」」」

「「──……(バギィッ!!)ぐゥッ……!」」


 アリエラの気が逸れた隙に身体を炎上させられ怒り狂った『三巨頭』の拳が叩き込まれる。

 咄嗟に斥力の壁を付与した雄獅子の盾で防いだアリエラだったが、それでも衝撃で左主腕をへし折られ、背後の突き当たりで悲鳴を上げていた一際大きな口の前まで大きく後退した。


「最下層がこんなに脆いとは……」「範囲攻撃がダメならこれでどう──……(ビシュウッ)!?」


 距離を離されたアリエラは二つに増えた頭のそれぞれの右眼から赫い熱線(ビーム)を放ち『三巨頭』の胸を貫く。

 

「「「カッ……(ボシュッ)ヒュー……」」」

 吸血鬼(ヴァンパイア)の力の源である心臓を破壊された『三巨頭』は膝を突き、自前の再生力で肉体を修復するが、傷口が灼け焦げているためか中々再生が完了しない。


「よしッ……今のうちに……!」「畳み掛け──……(ビーッ! ビーッ!)……!?」

 アリエラが攻勢を強めようとしたその時、最下層全体にけたたましい警報音が鳴り響く。


『緊急事態発生。〈不遜の塔(バベル)〉損傷』


 続いて機械的な音声が響き、アリエラは自分の迂闊さに気付いた。

 アリエラの放った熱線は『三巨頭』の身体を貫通し、その背後の部屋の中をも灼いていたのだ。


「しまった……!」「あの中に〈不遜の塔(バベル)〉が……(ヌチャッ……)!?」

 アリエラが立ち上がろうとした瞬間、背後から粘着質な音が聞こえた。


『〈無名の大総統(ミシャンドラ)〉緊急起動します──』


 機械音声よりもやや逸り気味にアリエラの背後の大きな口が内側からこじ開けられたようだ。


「メ゛ ェ エ゛ エ゛ ェ エ゛ ッ」


 そして『最終兵器ミシャンドラ』の山羊のような不気味な鳴き声が響いた。

◇〈不遜の塔(バベル)

魔王が遥か昔に発動した言語翻訳魔術。

黄金の塔のような形をしている。

世界全体に影響が及んでおり、大陸・文化圏・種族を超えて言葉が通じるようになるが、宇宙人には微妙に効き目が薄いらしい。

少なくとも数千年前から発動している。

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