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第六十八話 十字路攻防

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

現在、第二形態に変異している。

狂戦士としての才能が実はあまり無い。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル【楽々御粧し】の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

今回は出番無し。

狂戦士化した場合、とんでもなくうるさく叫ぶと思われる。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

今回は出番無し。

必要なら狂戦士化するが、できればやりたくない。


◇『三巨頭』

魔王軍最強の怪力を持つ王種妖巨人。

三つの頭全てが狂戦士化した結果、正気に戻れず魔王軍に拘束されていたが、オヴォル卿によって解き放たれた。

狂戦士としての才能が有りすぎた。



「〈大地帝(ゲブ)〉!」

「「「ブ ぉ オ

         オ゛──(グンッ)オッ!?」」」


 オヴォル卿を殴り潰し目下の脅威を排除した『三巨頭』は背後で第二形態に変異したアリエラを次の敵と定めて殴りかかったが、引力によって身体を引き寄せられ、踏みこんで来たアリエラに懐に潜り込まれた。


「ブ ォ オ オ゛ ッ  !  !」

 すかさず『三巨頭』の熊の右頭が反応して手打ちのパンチをアリエラに打ち込むが──……


「〈天空女帝(ヌト)〉ッ!!(ヴンッ)

 いくら“魔王軍最強の怪力”と言えど体重の乗っていないパンチで斥力の壁を突き破る事は叶わず、その巨大な拳はあさっての方向に弾かれた。


「フ ォ オ゛ ッ ! ?」

「ヴルルルルル……!」

「ブ ギ ョ オ オ゛ オ゛ オ゛ ッ ! (ブチブチブチッ)


 狂気に呑まれ理性を喪失した『三巨頭』でも自分の拳を弾かれる経験は無かったようで、それぞれの頭は驚き・警戒・怒りの感情をアリエラに向けた。

 特に怒った猪派狂戦士(ヒルディスヴァーニ)の中央頭の怒号と共に『三巨頭』の筋肉という筋肉が著しく隆起し、至剛金(アダマント)の拘束具の下に着せられていた拘束衣を破り毛皮に覆われた身体を曝け出す。


(これで魔物化はしていないというのだから驚きよね……さて、居住区や最下層に行かれると厄介だし……)(修練場に押し込んでピチカは別の場所に避難させ直さないとね)


 倍に増えた頭で先の事を考える間にも『三巨頭』は殴りかかってくるが、アリエラは引力と斥力を駆使して修練場側に追い込み始めたその時、自信あり気な大声が響いた。



「待たせたな!」「応援に来たぞ!」「我々……」

「“魔王軍最強の”」「“魔術師団”」「『七賢人』が来たからには──……」

「もう安心だッ!」


 居住区側のエレベーターの扉を開けて現れたのは色違いのローブで全身を隠し、それぞれ別の属性の杖型神器(チートアイテム)を手にした七人組の魔術師──……魔王軍上級幹部『七賢人』である。


「〈流転の水星(メルクリウス)〉!」「〈極美の金星(ウェヌス)〉!」

「〈戦乱の火星(マルス)〉!」「〈豊沃の土星(サトゥルヌス)〉!」

「〈星霜の天王星(カイルス)〉!」「〈氷震の海王星(ネプチューン)〉!」

「〈不感の冥王星(プルート)〉……!」


 『七賢人』の杖に各々が得意とする水・雷・火・地・風・氷・闇の魔力が収束し、『三巨頭』にぶつけるべく巨大な球体が形成されていく。


 しかし──……


「──! フ オ゛ オ゛ オ゛ ッ(ブンッ!)

「「「ぐわあああ────ッ!」」」


 『三巨頭』の右頭が素早く反応し力強く右拳を振るうと、その拳圧は叩きつけるような暴風と化し、『七賢人』を無理矢理エレベーターに押し込み魔力の球体を霧散させた。


「「「バ、バカなッ……!?」」」

「て、撤退だ!!」


 満身創痍だが唯一動ける風の賢人がどうにかエレベーターの起動レバーを引き、『七賢人』は居住区に避難して行った。


「何をしに来たの……!?」「これだから魔術専門(インテリ)は……!」


「「「シ ャ あ゛ ッ ! ! !」」」

 呆れるあまりアリエラの注意が逸れた刹那、『三巨頭』は両腕をアリエラの二つの首に伸ばし、渾身の力を込めて締め付ける。


「かッ……(メリッ)!」「しまッ──……(ギリギリ……)!」


 〈天空女帝(ヌト)〉の斥力で辛うじて抵抗はしたものの、このままでは意識を刈り取られるのも時間の問題かと思われたその時、アリエラの背後──……食堂へ続く通路から大勢の全身鎧の蟲人が飛び出した。


「『蝿蛆騎士団(ゼブブナイツ)』推参ッ!」

「アリエラ様、ご無事で!?」

「腕の腱を切断しろッ!」


 四天王『蝿蛆元首バアル・ゼブブ』の親衛隊たる精鋭『蝿蛆騎士団(ゼブブナイツ)』である。

 

 蝿を思わせる兜を被り全員が髑髏模様の翅を持つ彼らは、アナトの使役する死罪人で構成された『蝿蛆(ゼブブ)強襲部隊(アサルトフォース)』とは異なり、志願者を吸血鬼(ヴァンパイア)化させた上で改造を施したため士気も練度も段違いに高い。


「せいッ!」「むんッ!」

「「「が ァ ア゛ ッ(だらんっ……)! ?」」」


 率先して抜剣した二名が跳躍し、アリエラの首を絞める腕の腱を切断し、一瞬ではあるが『三巨頭』は両腕を弛ませた。


「助かったわ!」「ふッ!!(ボッ!)

「「「ブ ギ ョ オ゛ ァ ! ?」」」


 礼と同時にアリエラは四本の腕全てから空色の魔力を射出し、『三巨頭』を修練場側に大きく押し込む。


「お見事!」「我々が撹乱します!」

 『蝿蛆騎士団(ゼブブナイツ)』は一斉に散開して『三巨頭』の身体中の腱を正確に切り裂き、すぐに再生するものの確実に動きを制限する。


「助太刀は有り難いけれど……」「ゼブブ卿本体は来ないの!?」

 アリエラは如何に『三巨頭』といえど四天王二名同時に攻撃すれば楽に制圧できるだろうと期待していたのだが、肝心のバアル・ゼブブ本体の姿は見えない。


「ゼブブ卿は城の出入り口の封鎖を」

「それから『最終兵器ミシャンドラ』の起動手続きに入りました!」


「それは……!」「起動前に片付けなくてはね!(ボッ!)

 詳細は知らないが“最終兵器”とまで銘打たれた物騒なモノが動くのはマズいと思ったアリエラは『蝿蛆騎士団(ゼブブナイツ)』の作った隙に斥力の拳を押し込んで行く。


 大振りな攻撃は素早く飛び回り斬りつけてくる『蝿蛆騎士団(ゼブブナイツ)』を捉えきれず、すぐに再生するとはいえ無限に再生できるワケではない『三巨頭』の動きが止まるのは時間の問題かと思われた。


 しかし──……

  

「ヴ ヴ ゥ ヴ ヴ──……!(メリメリ……シュッ)

 狼の左頭が唸ると『三巨頭』は左半身を一歩前に出し、筋骨隆々であった左腕は引き締められて細長くなると、軽く拳を握り風切り音を奏でて一瞬ブレる。


ぐわッ(ビシッ)!」「ぎゃッ(ベシッ)

かッ(バチッ)」「な、何が──(パァンッ)


 『蝿蛆騎士団(ゼブブナイツ)』たちは『三巨頭』の左腕が一瞬ブレる度に弾き飛ばされ、終いには全員が戦線を離脱してしまった。


「ジャブ……!? 拳闘士(ボクサー)だったの?」「理性を失っても身体に染み着いた動きは健在というワケね……」


 ジャブを打つという事は当然、隙を見て太いまま──どころか、はち切れんばかりに筋肉が隆起した右腕の一撃が来るだろうと警戒するアリエラの耳に新たな助太刀に駆けつけた男の声が響く。



「お ォ ー い ! ! オレに()らせろ!

 この“魔王軍最大の戦士”──……

『マスクド・フェンリル』様になァ!!」


 現れたのはハイイロオオカミの覆面を被り4mを超える上裸の巨人『マスクド・フェンリル』であった。

 上級戦闘員であり『格闘覇王マスクド・ヴィゾフニル』の側近でもあるマスクド・フェンリルも当然ながら戦闘狂であり、ピチカから事情を聞いて“魔王軍最強の怪力”である『三巨頭』と戦いに来たのである。

 

「マスクド・フェンリル! いいところに来たわ(グンッ)!」「【全能鍵(これ)】を使いなさい(ブンッ)!」

 アリエラはオヴォル卿が床に投げ捨てていた神器(チートアイテム)【全能鍵】を引力で回収しマスクド・フェンリルに投げ渡す。


ああ!?(パシッ) オレに武器使えってのか!? いいぜ! 悪役(ヒール)やんのもキライじゃねぇからよ!

 ──〈大巨狼(フェンリル)〉ッ! 発ッ動ッ(メキメキ……)!!」


 【全能鍵】を受け取ったマスクド・フェンリルはリングネームの由来となった魔法〈大巨狼(フェンリル)〉を発動。

 ただでさえ巨人の中でも大柄な肉体が巨大化、『三巨頭』の左頭と同じく狼派狂戦士(ウールヴへジン)としての能力も発動、顔は覆面と一体化し完全にハイイロオオカミのものへと変貌していく。


 そして“魔王軍最大の戦士”の称号の通り、マスクド・フェンリルの身長は『三巨頭』すら上回る約45mに、手にした【全能鍵】もそれに伴い巨大化した。


「ブォッ!?」「ぶギィイ゛!!」「ヴぅヴヴゥ……(シュッシュッ)!」

 『三巨頭』は自分より大きな存在に警戒心を露わにし、アリエラに背を向けてジャブを打つ準備を始める。


「ほォ……ちょっと齧ったクチかァ? いつもならノってやるとこだが、そんな場合じゃあなさそうなんで……なあッ(ビュンッ)──……(ガシッ)なにィ!?」


 マスクド・フェンリルは再生阻害能力を持つ【全能鍵】を振り下ろしたが、その刃が身体に達する前に『三巨頭』は素早く動く左腕で【全能鍵】を掴んで止めた。


「ヴゥー……」「「ブギョオ゛オオオ(ブォオ゛オオオオ)ッ!!」」

 『三巨頭』はマスクド・フェンリルの一瞬の動揺を見逃さず、肥大した熊派狂戦士(ベルセルク)の右拳を猪派狂戦士(ヒルディスヴァーニ)の突進力を以て叩き込んだ。


「がッ……! ゴハァッ!!(ビシャ)

「マスクド・フェンリル!」「マズい……!(【全能鍵】を奪われた!)」


「ヴ ゥ ヴ ヴ ゥ……!」

 【全能鍵】を奪い取った『三巨頭』は膝を突いて吐血するマスクド・フェンリルを脅威と見做さなくなったのか、アリエラに向き直り両手で【全能鍵】を持って振りかぶる。


「……──“糧の山嶺”」「──“果ての大翼”」

「ブ ギ ィ イ゛ イ゛ ィ (バチチッ……)ッ ! ! !(ブンッ)


 アリエラの双頭は〈大地帝(ゲブ)〉と〈天空女帝(ヌト)〉の詠唱を開始、引力の稲妻と斥力の壁を同時に食らい『三巨頭』の身体が圧縮され始めるが、“魔王軍最強の怪力”を活かして無理矢理突破しアリエラを斬りつけた。


「ぐぅッ……!」「第二形態のワタクシに傷を……!」

 袈裟懸けに開かれた傷を押さえるアリエラは十字路の中央付近まで後退する。


 その時、アリエラの右手側──エレベーターへの通路側に駆動音を鳴らす人影が現れた。


『わはははは! いい気味だなアリエラ! 救援に来たぞォ!!』

 先進開発局に兵器をかき集めに行っていたマキアである。


 しかし、搭乗している義体(ロボット)が変わっており女性を模しているという点は同じだが、やや高身長でボブカットの黒髪で丸い獣耳の獣人の女性──……つまりアリエラを模しているようなデザインをしていた。

◇『七賢人』

魔王と王妹が司る光属性と樹属性を除く七属性の“魔王軍最強の魔術師団”

それぞれが担当属性に合った杖のチートアイテムを与えられており、凄まじい魔術出力を誇るが実戦経験に乏しく、基本は魔王や『双璧』の指示で動く。

魔王軍に於いて賢人とは“様々な魔術を操る者”という意味合いが強く、アリエラが“四天王最強の頭脳”を持つというのも魔術の才に由来する。

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