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第六十三話 魔王城へ

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

目立たないようにと赤いドレスと鍔広帽を着用しているが、普通に目立っている。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル【楽々御粧し】の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

現在、鳥打帽に白シャツ、サスペンダー付きハーフパンツというボーイッシュな格好をしているが、ハーピィがそもそも珍しく服装には注目されていない。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

アリエラと同様に目立ってしまっている。


◇イエナガ・クズハ

アリエラの専属メイド。休暇を取って旅に同行中。

艶のある長い黒髪が特徴のキツネとハイエナの混相の獣人(ケモ度高め)。

尻尾を様々な形状に変化させられる。

アリエラを慕っている。

南方の砂漠では不似合いだったメイド服だが、魔王国内ではごく自然な服装である。


◇オディール

魔王軍幹部で『一番槍』の二つ名を持つ。

『光の女神イースネス』の色を反転させたような容姿をした少女。

バレエ衣装のような黒いアーマードレスを着用していて首より下は一切の露出が無い。


「──拝聴の姿勢が整ったようです陛下……陛下?」


 オディールは跪く一行を確認すると、満足気に背後の湯気の発生源に話しかけたが、一向に返事は無かった。


「また御就寝なさったようだオディール殿……」


 代わりに湯気越しにも巨大な影が見えていた──……

額から冠のはまった一本角の生えた獅子の頭・猛禽のような手脚と尾・背中には三対の蝙蝠羽根の生えた屈強な悪魔……魔王軍『双璧』たる傲慢(プライド)の副王(ヴァイスロイ)の『左大臣・ノイル』が身に纏う白い軍服の襟を正しながら頭を振った。


「……お久しゅう御座いますアリエラ殿。

 最後にお会いしたのが遠い過去のように感じられますな。これ程の長きに渡り自分探しの旅に精を出されるとは私共めにはとてもとても……頭の下がる思いで御座いますよ」


 次にノイルの右手側に立っていたひょろ長い体型の悪魔……ノイルの獅子と猛禽の部分を孔雀に変えて筋肉量を減らした姿の虚飾(ヴァニティ)の副王(ヴァイスロイ)の『右大臣・コッコアシュフィー』は言葉とは裏腹に全く頭を下げずに、背中の蝙蝠羽根で湯気を払い、深緑色の軍服に付いた勲章をいじりながら職務放棄中のアリエラに皮肉を飛ばした。


「『双璧』までお越しとはワタクシに何か急ぎのご用でも?」

 皮肉を意に介さずアリエラは魔王に加えて幹部三名という豪華な出迎えを訝しむ。


「いや……陛下が久々にアリエラ殿と話したいと仰せで護衛にな……前回は陛下が寝起きのところに一方的に話しかけたのだろう?」

「いやはや畏れ知らずというか何と言うか……私共めには理解の及ばぬ豪胆さですなァ」


 『双璧』……特にコッコアシュフィーの遠回しな小言に少し辟易としたアリエラは視線を湯気の発生源──……魔王に移す。

 『双璧』の外見については知らされていたため落ち着いていたピチカは跪いた姿勢のまま初めて対面する事となった魔王の姿を見る。


スゥー……ングゥ……(ドボボボボ……)


 猫足の付いた浴槽(バスタブ)に浸かって眠りこけているその魔王は基本的には灰色の長髪に、色白でやや筋肉質な人間の男性のような姿をしている。


 常人と違う特徴として鬣が八方に広がる誇張的な雄獅子の金仮面を付け、頭上には自らの尾を咬み円環を作る虹色の蛇が浮かび、背中からは三対の白翼が生えており一見すると魔王というよりは天使を想起させる姿をしていた。


 ──だが、ピチカはもう一つのある特徴により天使とは別の物を思い浮かべていた。


(セレブのお風呂みたい……!)


 魔王の雄獅子の金仮面の口部分からは熱湯が滝のように流れ落ち、自身の浸かる浴槽に注ぎ込まれ続けていた(しかし何故か一向に浴槽の湯は溢れない)。


「……そこの新入りさん? 今、“お金持ちのお風呂みたいだな”とか思いませんでしたかぁ?」

 思考が表情に滲み出ていたのか、オディールはピチカに笑顔のまま視線を向けた。


「ギャッ!? お、思ってないデス!!」

「ああ先に紹介しておきましょうか。こちらワタクシが勧誘したピチカよ。

 既にゼブブ卿伝いに聞いているとは思うけれど『風の女神』の討滅に関する重要参考人でもあるから、ある程度丁重に扱って頂戴ね」


 アリエラは跪くのを止め立ち上がると、まずは視線を合わせやすいオディールに向けてピチカを紹介した。


「私が新入りイジメするみたいな言い方やめてもらえますかぁ?

 ……私は儀仗隊長『一番槍のオディール』と申します。

 アリエラさん直属のあなたとはあまり絡む事は無いとは思いますが……魔王陛下に仕える者同士仲良くしましょうね?」


「あ、ピチカでーす☆ よろしくお願いしまッす☆」

 剣呑な雰囲気が消えたオディールに緊張が緩んだピチカは立ち上がって敬礼のようなポーズをとって自己紹介をした。


「ふむ……なるほどなぁ……概ねゼブブ卿の報告通りか?」

「確かに王妹殿下のお気に召しそうではありますかなぁ……」


 ピチカが安心したのも束の間、出来るだけ近くで見て品定めしようと巨体を屈める『双璧』が迫る。


「ギャヒッ……お、お初に御目にかかります! あッ、両閣下! あー……わたしはピチカ──……本名をガブリエラと申しまぁすッ! なにとぞよろしくお願いします!」


 ピチカは道中レイメイから教え込まれていた挨拶を辿々しく行い、『双璧』の顔色を窺った。


「うむ。我は『左大臣・ノイル』。

 国家運営の他、魔王軍一般戦闘員の指揮権を陛下より拝領している。アリエラ殿直属から外れた場合などは君の身柄は一先ず我の預かりになるので覚えて置くように」


 ノイルは鬣を手櫛で整えながら鷹揚に自己紹介を返すと、コッコアシュフィーもそれに続く。


「私は『右大臣・コッコアシュフィー』と申します。

 ノイル殿と同様、陛下の補佐と一般工作員の指揮権を拝領しております。

 まァ、君の指揮を執る事は無いとは思いますが──……ああ、そうだ! 王妹殿下にお会いする機会が有れば粗相の無きようお願い致しますよ。挨拶をするにしても陛下や殿下相手にはもっと洗練して頂かなければ──……(うんぬんかんぬん)


 コッコアシュフィーがピチカに口煩く挨拶の作法を説き始めたが、アリエラはその言い回しに疑問を抱く。


「“()()()()()()()()()()()”……? 殿下は魔王城にいらっしゃりませんの?」


──……(うんたらかんたら)そう! その辺りをアリエラ殿にお伝えしなくてはなりますまいな!

 つい先日、殿下は魔王軍に入隊なされたのですがぁ〜……そのぉ〜……」


 コッコアシュフィーは自らの創造主たる王妹の行方について語り始めると、先程まで不必要な程に饒舌であったのが嘘かのように尻すぼみになっていった。


「殿下がですか!?」

「それだけなら寧ろ右大臣閣下はお喜びになるでしょうから……何か問題があるのでしょう?」


 魔王軍に於いて頂点である『傲慢の魔王』の妹分……元『虚飾の魔王』である王妹の魔王軍入隊ならば大きな戦力となる上、コッコアシュフィーからすれば創造主でもあるため、特に口澱むような事も無いハズであった。


 しかし──……


「殿下はアリエラ殿の“四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点”という肩書きを御所望でしてぇ……南西大陸に向かわれましてぇ……」

「……ワタクシを待ち伏せしている、と?」


「えぇまあ……そうなりますな。つまり──」


旅を続けるのならば(ドボボボボボ……)次は南西大陸に向かってやっておくれ……アリエラ」


 そう大きな声でもなかったが、よく通る低い美声がコッコアシュフィーの言葉を遮った。


「「「「「──……(バッ)!!」」」」」

 瞬間、ピチカを除く全員がその場に跪いた。


「えっ あっ ははぁーッ!」

 ピチカも遅れて察し、跪く。


そう畏まらなくても(ドボボボボボ……)良いよ……とりあえず皆立ってくれ給え」

 湯の湧き出す雄獅子の金仮面で表情は見えないが、目覚めた魔王は柔らかな口調で全員の起立を促すと、皆瞬時に立ち上がりピチカもそれに倣った。


「お目覚めですか陛下ッ!」「おはようございますッ!」

 『双璧』は素早く敬礼をしながら挨拶をすると、ピチカに視線を遣る。


「あッ! あー、わたしは新入りのピチカと──」

「帽子を取らんかッ!!」


「──ギャヒッ!? すいまッせん!」

 鳥打帽(ハンチングキャップ)を被ったまま挨拶をするのをノイルが叱責すると、ピチカは神業(チートスキル)楽々御粧し(ドレスアッパー)】を発動し、帽子とついでに付け過ぎの髪飾りを外した。


こらこらノイル(ドボボボボ……)あまり驚かせるんじゃない……。今のが例の神業(チートスキル)か……あ、すまないね、こんな格好で。

 いつまでも広場を占拠するのも悪いし……一先ず城に帰ろうか。オディール!」


 魔王は鷹揚にノイルを宥め、一瞬で着替えたピチカを興味深気に見ると本格的に目が覚めてきたのか自分が浴槽に浸かったままなのを思い出し、側に控えていたオディールに声をかけた。


「はい陛下❤︎ 皆さん陛下の近くに集まって……イエナガさんもう少し詰めてください……はい大丈夫。

 では──……(グギギッ……)……〈戦ぎ穿ち(グングニル)〉ッ!!」


 微笑んで返事をしたオディールは関節から無機質な軋みを上げながら槍を遠投する構えを取り、投げるための力が溜まり切ると槍は黒い魔力に包まれ、その手を離れると一瞬の内に北の空に飛んで行く。


 黒い槍が見えなくなって少しの間を置いてオディールの姿は一瞬にして空間転移術で消え、残った一行も一拍置いて広場から空間転移して魔王城に向かい、広場は無人となった。


 その後、エッタル卿による人払いは解除され、ヴァッサゴ市中央広場には平時の人通りが戻ったのであった。

◇〈戦ぎ穿ち(グングニル)

魔王軍三大汎用戦技系統魔術の一つ。

刺突や投擲武器に高密度の魔力を纏わせ、貫通性能を極限まで引き上げ、追尾能力を付与する。

他二つの〈逆撫斬り(バルムンク)〉と〈万雷砕き(ミョルニル)〉に比べて習得難度が高く、使い手は少なめ。

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