第六十一話 新たな名
登場人物紹介
◇アリエラ
主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。
『殲滅女帝』の二つ名を持つ。
褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。
冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。
特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』
10歳の頃から猫にご執心だった。
◇ピチカ
蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。
異世界転生者。チートスキル【楽々御粧し】の使い手。
冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。
一級冒険者。
10歳の頃は飛ぶ練習に明け暮れていた。
◇レイメイ
魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。
白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。
魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。
冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。
特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』
南方大陸では昼間はメジェド神っぽい格好をしている。
10歳の頃に初めて兄弟子を呪殺した。
◇イエナガ・クズハ
アリエラの専属メイド。休暇を取って旅に同行中。
艶のある長い黒髪が特徴のキツネとハイエナの混相の獣人(ケモ度高め)。
尻尾を様々な形状に変化させられる。
アリエラを慕っている。
10歳の頃は魔王国に慣れて落ち着いた生活を送っていた。
◇ワン・ソンミン
東方大陸最大国家ウーヴ皇国を牛耳る『ワン五兄弟』の末弟。白虎の獣人。
暗殺されてレイメイ配下のキョンシーとなった。
10歳の頃に義兄姉たちと出会い暴力の世界に落ちていった。
◇『導師ゲダ』
カルト死霊術師団『ゲダの指』首魁。
無数の左腕を持つと言われている。
実際血溜まりや異空間越しに手の平に眼や口の付いた左腕を大量に出してきている。
本体の姿は不明。
◇『ネフェラリエラの姉』
アリエラの双子の姉の黄金髑髏の残留思念から復活した『ゲダの指』最高幹部『指輪付き』の一角。
『導師ゲダ』との契約である程度行動を制限されている。
アリエラそっくりで髪が長く、頭に常に黄金髑髏を被っている。
10歳の頃は自分が真なる王になるのだと信じて疑っていなかった。
「『導師ゲダ』……!」
「噂にゃ聴いてたがマジで腕だらけなんだな〜……このオレ様とお手手の性能で張り合おうってかァ〜?」
レイメイは『導師ゲダ』という女神に次ぐ優先抹殺対象の出現に殺気を強め、ソンミンは呑気な口振りで爪を見せびらかして威圧した。
大柄な白虎の獣人という珍しい容姿や言動から察せられる有名な人物に『導師ゲダ』は手の平に付いた目を見開く。
「まさかそちらは“ワン・ソンミン”……? 何故南方大陸に……?
まぁその辺は後で君から聞こうか『ネフェラリエラの姉』よ……指輪の契約魔術が破棄されているのはどういう事かな?」
「やはりか。エルトートの眷属が妹との戦いに割って入ってきてな……──というワケで導師よ。ワタシと新たな契約を結ばないか?」
威圧を無視して会話する二人にレイメイとソンミンは苛立ち攻勢を強める。
「シャ──────────ッ!!」
「余裕かましてんじゃねーぞゴラァッ!!」
レイメイ(蛇龍)の巨体による突進と毒雲攻撃、レイメイ(首無し)の鋼鉄の鞭のような際限無く伸びる手足、ソンミンの強力無比な手刀が叩き込まれるが、いずれも『導師ゲダ』の巨大化し増殖する左腕に阻まれ有効打は与えられない。
「本腰を入れられると厄介だな……お前たち、時間を稼ぎなさい」
『導師ゲダ』が自らの手首の一つを深々と引っ掻き大量の血を地面にばら撒くと、その血溜まりから次々と大小様々な亡者たちが湧き出し、レイメイたちの攻撃を阻んだ。
「我は『ゲダの指』が一柱──」「なッ、我は『ゲダの゛──ッ」
「貴様ーッ! 我こそ──」「我──」
「小粒共がウザってぇんだよッ!」
「逃しませんよ! シャ──────ッ!」
当然アンデッドの大群を蹴散らす二人だったが、無限とも思える程に湧き出すアンデッドの対処に追われ、見る見る内に『導師ゲダ』の左腕は『ネフェラリエラの姉』を掴んで血溜まりの中に沈んで行く。
「今回はワタシの負けだッ!! 妹にまた会おうと伝えておけッ! あ、それと叔父上の黄金髑髏はワタシが預かるとも伝えろ!!」
『ネフェラリエラの姉』は足留めを喰らうレイメイたちに一方的に伝言を残しながら『導師ゲダ』の左腕と共に血溜まりの中へ姿を消した。
「くそッ! 逃げられた……!」
レイメイたちがアンデッドの大群を蹴散らし終えた頃には血溜まりはすっかり砂漠に吸収されてしまっており、『ネフェラリエラの姉』を追跡する手掛かりは現場から消えていた上、いつの間にか〈冥府帝〉の黄金髑髏までも姿を消していたのであった。
◇
「結局取り戻せたのは〈天空女帝〉だけ……しかも叔父上の黄金髑髏を奪われるとは……あの姉上擬きにまんまとしてやられたってワケね。
魔王陛下になんて報告すればいいのかしら」
騒ぎが落ち着いた後、アリエラは心臓付近に生成した魔石を摘出して魔人化を解除し、合流したイエナガの持っていた万能血薬で『ネフェラリエラの姉』との戦いや魔石摘出時の傷を癒やし『竜の墓場』跡地で途方に暮れていた。
「報告する事も増えましたし……少し予定を切り上げてこれ以上観光せずに一度帰国しましょうか」
提案しているような口振りだが、レイメイは有無を言わせない雰囲気で次の目標を設定した。
「そうね。そもそもそんなに観光する場所も無いし……将来魔王国統治下に入ったらゼブブ卿の手腕で活性化すると良いのだけれど……」
「え? アーちゃんが南方の女王様に戻るんじゃないの?」
「まさか。器じゃなくてよ」
「そーなんだー……」
「ワタシはアリエラ様に統治して頂きたいのですが──」
一行が雑談をしながら『竜の墓場』跡地を去ろうとしていると、巨体が行手を遮る。
「おい! 当然のようにオレ様を置いて行こうとすんな!」
すっかり蚊帳の外に置かれていたワン・ソンミンである。
「あ、まだ居たんですか」
「オメーが呼んだんだろーが!!
いやそれより今の話は気になるぜ。世界制覇後は東方大陸はオレ様にくれるんだろーな!?」
ソンミンの欲望にギラついた瞳にレイメイは溜息を吐き呆れた表情を作る。
「は? そんなワケ無いでしょ。
東方は私と姐さまたち『五毒姫』が統治する予定ですからね。まあソンミンさんも今後の働き次第では何か頂けるかもしれないので頑張ってくださいね。今日はお疲れ様でした。もう帰っていいですよ」
素気無く言いながらレイメイはソンミンに向かって呪符を飛ばした。
「ああ゛!? テメッふざけん──」
抗議も虚しくソンミンは爆発的白煙と共に東方大陸へ強制送還されてしまった。
「……さて、誰か駆けつけて来る前にさっさと魔王国に逃げましょうか」
「あーし初めて行くから楽しみー☆」
「フフ……きっと驚かれますよ」
「なんと言ってもワタクシたちの『ノク・ノト魔王国』は世界有数の先進国だもの。驚き過ぎて飛び回らないようにして頂戴ねピチカ」
こうして一行は中央大陸──現『ノク・ノト魔王国』を目指して南方大陸を後にしたのであった。
◇
所変わって世界の何処か──『ゲダの指』本拠地……。
血の海に満身創痍の『ネフェラリエラの姉』と『導師ゲダ』の燻る巨大な左腕が現れ、それに少し遅れて竜鱗の生えた巨腕に乗った『竜血のエルトート』が青筋を立てながら現れた。
「『ネフェラリエラの姉』!! 貴様ァ! 妾の眷属の縄張りに近付くなと言っただろうがァ!!」
「まあ怒るなエルトート。あんな碌に制御も出来ん愚物なんぞを従えていたら『竜の血族』が真祖の名折れだろう?
むしろ叔父上の黄金髑髏を妹から取り上げたワタシに感謝すべきだぞ? これがあるだけで陽光に弱い連中は妹に手も足も出ないのだからな」
自らの眷属の度重なる滅殺に腹を立てるエルトートは謝るどころか自分に感謝すべきと宣う『ネフェラリエラの姉』の態度に更に怒りを募らせ、徐々に身体が真紅の竜へと変貌していく。
「……〜ッ!! 導師よ! 何故連れ帰った!? 契約が破棄されたなら同胞ではないだろう!?」
「落ち着きなさいエルトート……今から新たな契約を結び直すから『ネフェラリエラの姉』は同胞──……ところでいい加減この『ネフェラリエラの姉』という名称は改めないか? 呼びづらいんだよ……」
エルトートを宥めながら話を進める『導師ゲダ』は以前からしようと思っていた提案をした。
「それもそうだな……妹の『アリエラ』という名前は本名の『ネフェラリエラ』を半分にしたものだろうからワタシの新たな名はそのもう半分──……
『ネフェル』としよう。“美しい”という意味だ。このワタシに相応しいだろう?」
「良いね。よろしくネフェル。二つ名も考えなくてはね……」
「フンッ! 下らん……」
「拗ねるなエルトートよ。次の契約からはアリエラへの攻撃に関する内容を変えてやる。存分に我が妹の試練となってやってくれ。
『完全なるネフェラリエラ』へ至るためにこのネフェルも妹アリエラもまだまだ未熟だ……フフッ……フハハハッ!!」
◇世界制覇後の統治
魔王国が世界制覇を成した後には幹部に中央以外の大陸のいずれかの統治を任せる予定となっており、大陸を統べる権利を夢見て魔王軍構成員は日々鍛錬している。
『五毒姫』は東方大陸
四天王バアル・ゼブブは南方大陸
四天王ジークは西方大陸
四天王マスクドヴィゾフニルは北東大陸か南東大陸
王妹は南西大陸を統治する予定である。
アリエラや他の幹部は統治する大陸をまだ決めていない。




