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第五十八話 再会

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

ケットシーが主役の冒険活劇が好き。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル【楽々御粧し】の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

ダンスに気合いの入った演劇が好き。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

南方大陸では昼間はメジェド神っぽい格好をしている。

湿っぽい悲劇が好き。


◇イエナガ・クズハ

アリエラの専属メイド。休暇を取って旅に同行中。

艶のある長い黒髪が特徴のキツネとハイエナの混相の獣人(ケモ度高め)。

尻尾を様々な形状に変化させられる。

アリエラを慕っている。

破滅的な内容の劇が好き。



 ◇



──……(ピシャアッ!!)来たな。

 改めて名乗ろうか……ワタシは『ゲダの指』の一柱にして『指輪付き(エンゲージド)』の一角──……『ネフェラリエラの姉』だ。

 久しいな妹よ」


 夕方頃、合流したピチカから太陽円盤を渡されたアリエラは女剣闘士服に着替えると、怒りとも焦りともつかない表情で南方大陸北東部にある数多の竜の骨が打ち捨てられた通称『竜の墓場』に落雷と共に降り立った。

 その積み重なる竜骨の山の上には、嘗て自ら屠ったハズの双子の姉が仁王立ちしていた。


 死んだ当時は18歳であったハズだが、どういう訳か見た目の年齢はアリエラと同じく20代半ばのように見える。


「…………本当に姉上なの?

 遺体は厳重に封印して葬ったのだけれど……頭と心臓が欠損した遺体からこうも精巧に肉体を復元できるだなんて信じ難いわ……成長しているようだし……」

 アリエラは険しい表情をしながらも、『ネフェラリエラの姉』の頭に被った黄金髑髏から爪先までじっくりと眺めた。


「それが『導師ゲダ』というのは中々大したヤツでな……ワタシの髑髏に宿った残留思念とやらから身体を復元してみせたのだ。……代わりに導師の使役下に入るという契約でな」

 『ネフェラリエラの姉』は左手薬指の指輪をアリエラに見せた。

 

「あら結婚したの。おめでとう……でよろしくて?」

「気色悪い事を言うな。誰があんな()()なんぞと番うものか……。

 何故そんな契約を結んだかと言うとオマエに物申したい事があってな、妹よ」


 『ネフェラリエラの姉』は頭上の黄金髑髏を撫でながらアリエラを睨めつける。


「何かしら? まさか殺された恨み言じゃあないでしょうね? ワタクシの姉上ともあろう者が……」

「そ ん な 事 はどうでもいいッ!!

 問題はワタシを殺した後だッ! 何故ワタシの髑髏の力を一度も使わなかった!?」


 アリエラの微笑みをより攻撃的にしたような笑みを浮かべていた『ネフェラリエラの姉』は突如激昂し、アリエラの目の前に降り立ち詰め寄る。


「……!? 黄金髑髏に加工されてからも自我があったの?」

「そんなワケがあるかッ!

 今のワタシはオマエの姉の強さと記憶を受け継いだ黄金髑髏の妖精のようなモノ──極東では付喪神(ツクモガミ)と呼ぶのだったか? 

 ……とにかくッ! 本体である黄金髑髏の状態は手に取るように分かるッ! 新品同然だったぞ!!」


 元より苛烈な性格ではあったが、姉が自身に対してこうも怒りを露わにした姿を初めて見たアリエラは一歩後退った。


「昔は使いこなす自信が無かったのよ……そんなに使って欲しいのなら使ってあげるからさっさとワタクシに返して頂戴」 

「ダメだ。この黄金髑髏──ワタシは持ち主を選ぶッ! 今のオマエでは相応しく無いッ!! ワタシに勝って取り戻して見せろッ!!!」


 腰に佩いた二振りの斧剣(ケペシュ)を構えて戦闘態勢をとる『ネフェラリエラの姉』だったが、アリエラはそれを見ても溜め息を吐くばかりで構えようとはしなかった。


「ハァ────……『導師ゲダ』とやらは陛下に匹敵し得る魔術師かと思っていたのだけれど……そうでもないようね」

「ワタシは別に導師に忠誠心は無いから貶されようがなんとも──……待て、“()()”だと? 父上の事か?」


 アリエラが父を“陛下”と呼んでいたのは公の場だけであったし、父王ネクアバも魔術は使うが“魔術師”かと言われれば疑問符が残る。


「その口振り……ワタクシの今の状況までは調べが付いていないのね?」

「……? 完成した復活魔法で復活して……臣下を連れて冒険者をやっているのだろう?」


 的外れな姉の答えを聞いたアリエラは微笑む。


「フフ……全く違くてよ。

 姉上にだけ名乗らせるだなんて礼に欠けていたわね。ワタクシも名乗らせて頂くわ。 

 ──魔王軍四天王筆頭『殲滅女帝アリエラ』よ」


「ちょっとアリエラさん! 何バラしてるんですか!!」

 名乗り上げている最中に白布で全身を隠したレイメイが〈縮地〉を使って到着し、『ネフェラリエラの姉』を警戒して距離を取りながらもアリエラを注意する。


「あらレイメイ。遅かったわね」

「正確な位置が分からないんだからしょうがないじゃないですか……それよりそちらは──」


 レイメイがハートサングラスの奥から目線を遣ると、『ネフェラリエラの姉』は怪訝そうな顔をした。


「ワタシは『ネフェラリエラの姉』。『指輪付き(エンゲージド)』だ。

 オマエは……何だその格好は? 妹の臣下ならもっと相応しい服装を──」

「は? 違いますけど。私はアリエラさんが勝手するから付き合ってあげてるだけの同僚ですが?」


 アリエラの臣下扱いされた事に腹を立て殺気を飛ばすレイメイだったが、珍妙な出立ちのせいでまるで迫力が無く、変な空気が流れる。



「つまりオマエも魔王軍の上級幹部という事だな?」

「あッ……!」

「レイメイ……アナタね……」


 隠密には致命的な口の軽さを見せたレイメイにアリエラたちは姉妹揃って呆れ顔をした。


「チッ……(バサッ)日も落ちてきたし白布(コレ)はもういいでしょう……あの人はアリエラさんのお姉さんが復活して『指輪付き(エンゲージド)』になったと見ていいんですよね?

 そして〈殲滅女帝(セクメト)〉の黄金髑髏を所持していると……」

 バツが悪そうに白布とサングラスを外したレイメイは爪を伸ばして戦闘態勢をとる。


「“せくめと”……? ワタシの髑髏の事か? 名前なんぞ付けたのか妹よ」

「ワタクシではなくて陛下から御下賜頂いた名前よ」


「そうそれだ! 話を戻すが魔王軍四天王だと!?

 魔王の軍門に下ったというのか!? 『ティトゥラエリン王朝』の復興はどうなる!?」 

「……? 復興なんてするワケ無いじゃない。そう遠くない未来、世界は全て『ノク・ノト魔王国』となるのですもの」


 復興の意志などまるで無いアリエラの様子を見て『ネフェラリエラの姉』は両手の斧剣を落とした。


「なッ……んだと!? キサマそれでも『真なる王』か!?」

「今はもう四天王よ。

 ワタクシの姉上は凶暴ではあったけれどもっとこう……聡明だったと思うのだけれど……まあ所詮『導師ゲダ』の魔術による紛い物よね。

 『ゲダの指』に属しているという事は……魔王陛下に勝てると思っているんでしょう? 哀れだわ……」


 アリエラの言葉に唖然とした『ネフェラリエラの姉』は少しの間を置くと斧剣を拾い再び構える。


「ワタシの持ち主として──……『真なる王』として相応しくなるよう試練を与えようと思っていたがもういいッ!

 ワタシがオマエを殺して『真なる王』として君臨し直してやろうッ!!」


 斧剣の切先を向けて凄む『ネフェラリエラの姉』だったが、動じないアリエラは斧剣を指で摘んでじっくりと観察する。

 

「ねえ、この斧剣(ケペシュ)ワタクシのではなくて?」

「……そうだが?」


「殺し合いには応じてあげるから返して──」

「ダメだ。この斧剣(ケペシュ)は王家の物。今のキサマが──ネフェラリエラでないただのアリエラが持つべき物ではないッ!

 連れの小娘はワタシの荷物持ち共の相手をさせてやろう! オイ出てこいッ!」


 『ネフェラリエラの姉』の表情は一層険しくなり、背後の竜骨の山に隠れていた不気味な体型の荷物持ちたちが飛び出して来る。


「フーッ……フッ……」「……」

「ブシュ〜ッ……ブシュッ……」「ムゥウヴッ……」

 荷物持ちたちは歪な身体を引き摺りながら、レイメイに近付いく。


「多勢で襲い掛かるのは好かん……その中から一体好きなヤツを選んで戦って──」


「ピチカ様ッ! あそこですッ!! 急いでッ!」

「ギャヒィ〜ッ! 遠いって……!」

 『ネフェラリエラの姉』が目の前のアリエラに集中しようとしたその時、ピチカとイエナガの騒がしい声が聞こえてきた。


「……あァ、もう二人いたな。では五対四か。

 ならば嫌いなヤツを一体選べ。下がらせよう」

 伝言を頼んだ時点でピチカとイエナガの事を忘れてしまっていた『ネフェラリエラの姉』は斧剣で荷物持ちたちを指した。


「結構ですよ。こちらも一人追加で召喚するので──……(ボンッ)

 レイメイが提案を蹴りながらどこからか呪符を取り出し放り投げると、軽い爆発音と共に白煙が発生し、白煙に咽せる巨体が現れた。



「ゴェえ゛ッ! んだよコレ!? どこだココ!?」


 手で白煙を振り払いながら姿を現したのは高そうな白い服を着流した獣率の高い白虎の獣人──……

『西方公ワン・ソンミン』であった。

◇『竜の墓場』

南方大陸の北東部に存在する数多の竜の骨が打ち捨てられた場所。

『ティトゥラエリン王朝』の王族が竜狩りをした際、余った骨を捨てに来ていた場所だと言い伝えられている。

特に巨大な竜骨は十二の大ピラミッドに葬られている『真なる王』たちが狩った竜骨だと言われている。

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