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第五十五話 狂気のウラカン村

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

ワインは赤ワインが好き。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル【楽々御粧し】の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

ワインよりブドウジュースが好き。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

ワインは強いて言えば白ワインが好きだが、酔えない。


◇イエナガ・クズハ

アリエラの専属メイド。休暇を取って旅に同行中。

艶のある長い黒髪が特徴のキツネとハイエナの混相の獣人(ケモ度高め)。

尻尾を様々な形状に変化させられる。

アリエラを慕っている。

ワインよりビールや清酒が好き。

「ジャアァアア゛ッ!!」「うぉおおォおっ!!(ダダダダダダ!!)

ずアァッ!!(バサッ)」「ら゛ァああ゛ッ!!」


 アリエラの寝ていた家に飛び込んで来たリザードマンたちは重機関銃を乱射し、動きを制限するため投網を投げ、一斉に銛で突撃して来る。


「くッ──……!?(ギチッ……バスッ)

 (ただの網と銃弾じゃない!? 輝鋼銀(ミスリル)が混ざっている……!!)」


 通常の銃弾なら素肌で弾き、網なら動作一つで引きちぎれる頑強さを誇るアリエラだが、リザードマンたちの使う武器はアリエラの脇腹や腕の皮膚を突き破り、動きを僅かながら制限した。


「スゥ────ッ……フンッッ!!(ズンッ! ブチブチッ)

 アリエラはお返しとばかりに強めの〈麒麟震天脚(きりんしんてんきゃく)〉で地面を激しく揺らし、〈白虎金剛手(びゃっここんごうしゅ)〉で網を引きちぎり反撃を試みたが──


「ブシュるるる゛ッ」「るア゛ッ!」

リザードマンたちは焦った様子も無く飛び退いて躱した。


「だアァあアぁあア゛ッ!!(ダダダダダダ!!)

 銛や投網を持った前衛・中衛リザードマンが距離を取ると、今度は後衛リザードマンが重機関銃を連射してアリエラを攻撃し始める。


(妙な連中ね……正気のようには見えないけれど、それなりの連携らしい動きも取ってくるし、装備も中々上等……『竜血のエルトート』とやらの送ってきた刺客……? それにしては『ゲダの指』構成員がやりがちな大仰な自己紹介が聞こえてこないけれど……)


 地揺れで倒壊しかけた家々の中を駆け抜けるアリエラだが、ウラカン村の家は簾や布と骨組みで構成されているため、盾や壁代わりとしては機能しておらず弾切れまで走り抜いて凌ぐつもりであったが──


シャアァアアアアア゛(ダダダダダダダダ!!)ッ!」

(弾が切れない……!? 神器(チートアイテム)!? 或いは神業(チートスキル)か!)


重機関銃の弾は尽きる事無くばら撒かれ続け、周囲の家を次々と薙ぎ払っていく。

 ──しかし、弾は尽きずとも銃身は徐々に赤熱化し、どんどん狙い通りの場所を貫けなくなっていった。


「──! もらったッ!!」

 その隙を見逃さなかったアリエラはリザードマンの膝を蹴折り、よろめいた瞬間に右腕をへし折りながら重機関銃を奪い取った。


「があ゛ッ……ジャァッ!!」

「おとなしくしておいて頂戴ねッ!!(ダダダダダダ!)


 アリエラはすぐさま反撃の噛み付きを行おうとしたリザードマンの両脚を重機関銃で打ち抜く。

 

 次いでアリエラは周囲のリザードマンたちの脚を狙って弾をばら撒いたが、リザードマンたちは散り散りになって逃げ出し、赤熱化し精度の落ちた重機関銃の弾はあっさりと回避された。

 その後もアリエラは一応牽制のために打ち続けた結果、重機関銃は弾を吐き出さなくなり沈黙した。


(弾切れ……では無限弾はこのリザードマンの神業(チートスキル)か……。厄介ね。神器(チートアイテム)なら奪ってしまえば済むのだけれど……この場合はこのリザードマンが洗脳されただけの被害者である可能性を考慮すると殺すワケにもいかないし……ああもう!(ギュッ……ボキッ)

 リザードマンの口を投網の断片で縛り、左腕もへし折って無力化したアリエラは他のリザードマンを追って村の中央部に走った。


「シャ────ッ!」「死ネェッ!」

 その間も村のリザードマンたちはミスリル製の長い包丁や短剣を振り回して襲いかかって来る。


「くッ……レイメイ! ピチカ! イエナガ! 聞こえていたら返事なさい!!」

 いくらアリエラでも当たれば無傷とはいかない……しかし相手の正体が分からない状況では無闇に殺すワケにもいかず、時折地面を転がって大きく回避しながら駆け抜ける。


 そうしていると、アリエラの脳裏にある疑念が鎌首をもたげる。


(そもそも深夜にレイメイが一方的に攫われるなんて有り得るのかしら……昼間ならまだしも……。ミスリルの武器を使ってくる事といい……まさか……この襲撃はレイメイが──!? 

 いや違うか……リザードマンたちは正気ではないとはいえ生きている……キョンシー化していないわ。それにずっと一緒に行動しているけれど、こんな罠を仕掛ける暇は無かったハズ……後でレイメイには謝っておかなくてはね)


 即座に疑念を払拭したアリエラだったが、結局襲撃者たちの正体が判らない以上は打つ手が無い。

 ──となると、アリエラは連れの三人以外では最も敵に回っていて欲しくない人物を叫んだ。


「エゴット村長!! いらっしゃらないの!?」

────(バキバキッ)い ま す ぞ ォ ッ ! ! !(バクンッ)


 呼びかけに応じてエゴットは家を破壊しながら飛び出してアリエラに向けてその立派な大顎を拡げて喰らい付いて来た。


「……!(良くない展開ね。手加減して戦うにはエゴット村長は大きすぎる……!)

 ん……? 村長さんは会話が通じるのかしら? 何故襲って来るのか説明してくださりませんこと?」

 一方的に殺意を口にしたり、叫ぶだけの他のリザードマンたちと異なり、明確に会話の成立したエゴットに質問を投げかけるアリエラだったが──


「無性に……突然無性に殺したくなりましてなァ〜ッ!! これ以上は言えませんなァ! ガァあア!!」


エゴットには知性が残っていても会話をするつもりはほとんど無いようで、地面に手脚をついて這うように移動しながら再びアリエラに喰らい付いて来た。


 しかもエゴットの攻撃は乱雑に振り回すような他のリザードマンとは違い、鋭い爪を振り下ろしてを牽制し、隙を見ては音が遅れて聞こえる程の速度で噛み付きアリエラを追い詰める。

 

(村長は他より知性が残っているようね……操っている術者本体は何処か別の場所に隠れていて現場の司令塔として扱われているのかしら……。

 吸血鬼(ヴァンパイア)がよく使う手ね……やはり『竜血のエルトート』の刺客? いや魔王軍関係者にもヴァンパイアはいるのだから決め付けるには早いかしら……『アナト』か『御三家』か……他の戦闘員まで含めると今の情報では絞り込みはできないか……)


 エゴットの攻撃は鋭いが単調でもあったため、慣れてきたアリエラは殺さないようにエゴットや村人のリザードマンたちを小突きながら襲撃の主犯について思案を巡らせる。


「──〈時間滞留(タイムステイシス)〉ッ!」


「ッ!?(時間操作!? 動きが……!)」

 アリエラが落ち着きを取り戻し始めたその時、突如身体の動きが遅くなり、まるで粘度の高い液体の中にでもいるかのような鈍さで声のした方向へ振り返る。


「ふははッ……」

 そこには怪しげな黒いローブを着た人間の魔術師の姿があった。

 アリエラが早々に雨雲を晴らしてしまったせいで出番の無かった、村の外部からやって来た魔術師の一人である。


(村人以外も洗脳されている……! しかも時間操作だなんて……──(ビュッ ヒュンッ)


虚を突かれて一瞬固まったアリエラに向かって周囲のリザードマンの持つ包丁や銛が一斉に投げつられけ、〈時間滞留(タイムステイシス)〉の範囲に入ったそれらは、アリエラでも回避不能であろう距離まで飛ぶとゆっくりと迫る。


「(──……(バチッ)イチかバチか、ね!)ダァア゛ッ!!」

 アリエラは滞留した時間の中で自らの身体に雷を纏いながら加速して刃物の壁に突っ込み、全身に多数の切創を作りながらも滞留空間を脱し、魔術師の男の腹部を殴打した。


「がッ……ハ、ぅグボぇエ……!」

 “四天王最強の怪力”を誇るアリエラの少し強めの拳を受けた男は血を吐いて倒れ込んだ。


 その隙にもエゴットやリザードマンたちは攻勢を緩める事無く連携して襲いかかってくる。


(この男も主犯ではないようね……時間操作なんて使うならもしかしてと思ったのだけれど──……ん?)


 リザードマンたちの攻撃を捌きながら移動しようとしたアリエラは、魔術師の男の血反吐の中に蠢く小さなナニかを見た。


「(……試してみましょうか)

 ゼ ブ ブ 卿 ッ ! ! !

 襲撃を受けているわ! ちょっと分身を寄越して手伝って頂戴ッ!!」

 アリエラは最も頼れる同僚として信頼している魔王軍四天王『蝿蛆元首(ようそげんしゅ)バアル・ゼブブ』に救援を要請した。

 この襲撃が本当に敵対勢力によるものならば、寝込みを襲って来るような輩相手にわざわざ一人で対処してやる義理は無い……との判断である。


 しかし──……


…………(ブブブ……ブーン……)

バアル・ゼブブの支配下であろう真っ赤な複眼の蝿がアリエラの目の前に現れはしたものの、救援要請に応える事無く飛び去ってしまった。


(無視された……! ……という事はゼブブ卿はこの襲撃の裏側を知っている──つまり、襲撃者は魔王軍関係者と判断して間違い無いようね!!

 ピチカやイエナガに手を出さないのにも納得──……そういえばこの村の情報を持ってきたのはイエナガだったわよね……イエナガも共犯(グル)……!(グチュッ……)

 

 アリエラは信頼していた専属侍女(メイド)に裏切られたショックを塗り潰すように、脇腹に食い込んでいたミスリルの弾丸を穿り出し、口に放り込んだ。


「スゥ──……ぷッ!(ボッ!)

 弾丸はアリエラの口から小さな爆炎と共に発射され、エゴットの左目に命中した。


「がぁ あア゛ あッ!?」

 当然痛みに苦しむエゴットであったが、潰された左目ではなく頭を抑えて苦しみ始める。


「弱点である銀が()()()()()()()()()()()()さすがに驚いたようね……?

 もう誤魔化さなくても良くてよ『アナト』」

 アリエラは苦しむエゴット──ではなく、エゴットの頭の中に向けて話しかけた。


『プフフフ……バレちゃったゾ♡ クズハちゃんにも手伝ってもらって準備がんばったのにィ〜……♡』

 名前を呼ばれて観念したのか、エゴットの脳内に潜む『アナト』と呼ばれた存在はアリエラに念話(テレパシー)を使って返事をした。

 

「脳内に寄生して操っているという事は……この襲撃者連中は魔王軍的には殺しても問題無いと判断された重犯罪者という事よね……?」

『……そうだゾ♡』


 リザードマンたちへの攻撃を加減する必要が無くなったアリエラは口角を吊り上げながら魔力を滾らせる。


「では散々やられた分、憂さ晴らしさせて貰うとするわね……!(ゴゴゴゴ……)

『ヤバ〜い……♡』

◇【無限弾(トリガーハッピー)

保有者の使う銃器の弾が切れなくなるチートスキル。

『雷の女神』が異世界人に渡すチートの内容を思いつかなかった場合に渡す事が多いらしく、過去に何人も保有者が存在した。

弾が無限になるだけなので銃本体の手入れを怠ると普通に銃が壊れてしまう。

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