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第五十四話 『ウラカン村 逆雨乞い祭り』

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

失敗を結構引きずる方だが、励まされるとすぐ立ち直る。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル【楽々御粧し】の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

失敗はあまり引きずらない方。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

失敗したら次に活かすため分析するよう心がけている。


◇イエナガ・クズハ

アリエラの専属メイド。休暇を取って旅に同行中。

艶のある長い黒髪が特徴のキツネとハイエナの混相の獣人(ケモ度高め)。

尻尾を様々な形状に変化させられる。

アリエラを慕っている。

失敗しないよう意識すると足がもつれてコケる。





 ピラミッドを発ってから数日、一行はアリエラの石棺(サルコファガス)に収納されていた黄金塗装の短艇(ボート)でエリン河を下って各地の港町や漁村を訪ねては冒険者として魔物退治をしたり、アリエラの黄金髑髏や髑髏の発す呪いの情報を訊いて回っていた。


「なかなか情報集まんないね〜」

「そう簡単には見つからないでしょうね……そろそろ今日の分の蛇を獲りに行きますよピチカさん」


 “南方にいる間は毎食蛇料理”という約束をレイメイはしっかりと覚えており、夕方ごろになると毎日ピチカを引きずって荒野や砂漠に狩りに行っていた。


 そんなレイメイは陽光除けのために頭から爪先近くまでスッポリとアリエラが魔術を施した白い布を被り、覗き穴から差し込む陽光から目を守るためピチカから借りたハートサングラスをかけている。

 その異様な出立ちに周囲の人々の視線が集まるが、当のレイメイは特に気にしていないようだ。


「んぁ……マジで毎食ヘビなの?

 (こんなカンジの神様流行(バズ)ってたよな〜……メジェドだったっけ?)」

 蒼基調の砂漠装束に髪には大量の動物の髪飾りを付けたピチカはそろそろ蛇料理に飽きてきたので狩りにもあまり乗り気ではなかった。


「……ピチカさんは約束を違えたりしないって私は信じてますよ」

「うぅ……じゃあ──」


 レイメイがピチカの良心を揺さぶっていると、イエナガと情報集めをしていたアリエラが慌てた様子で駆け寄って来る。


「ピチカ! レイメイ! 次の目的地が決まったわ!

 明日早朝に出発よ!!」

「おっ! どこに?」

「……理由も添えてくださいね。猫がいるとかそんな理由では行きませんからね」


 蛇狩りの件をうやむやにできるかもしれないと話に食いついたピチカ、その意を察して断ろうとしたレイメイにアリエラは期待に満ちた様子で次の目的地を決めた理由を話し始める。


「場所はここからエリン河を少し下った先にある大きな中州にある『ウラカン村』よ。

 ワニ系の蜥蜴人(リザードマン)が村人の多くを占める漁村で、最近まであまり外部との交流はなかったようだけれど、明日から外部の者も呼んで『逆雨乞い祭り』を開催するそうよ」


「なんですか“逆”って……」

「なんでも最近雨が止まなくなってしまったそうなの……この南方大陸でよ? ねぇ? イエナガ」

「はいッ。困る程雨が降り続くなんて南方に於いてはあまりにも不自然な事ですから恐らく──……!」

「ああ〜……! アーちゃんの金ピカドクロの呪いかもってコト?」


「その通り……! 恐らく〈大河帝(セベク)〉の黄金髑髏がきっとウラカン村にあるわ!」


 こうして一行は『逆雨乞い祭り』に参加すべく、ウラカン村に向かう事となった。



 ◇



「おっ! あれじゃない!? あそこだけメチャ雨降ってる!」


 翌日の昼頃、夜明け前からアリエラが張り切ってボートの(オール)を漕ぎ、一行は目的地であるウラカン村のある中州が目前に見える所までエリン河を下った。

 中州の上空には不自然な黒雲が風で流される事無く停滞し、滝のような大雨が絶え間なく降り注がれている。


「あれは〈豪雨の呪い〉によるものと見て間違い無さそうね……! トバすわよッ!」

 期待が確信に変わったアリエラは一層速くボートを漕ぎ、目視から僅か数分足らずでウラカン村に到着したのだった。


──────────


「おっ? お客さんか?」

「観光? 商売? それとも祭りに参加する祈祷師かい?」


 到着した中州の北端には大きなワニのリザードマン二人がだらけた様子で見張りをしていたが、アリエラたちを視認すると、立ち上がって目的の確認のため気さくな態度で話しかけてきた。

 二人共に乾燥させて編んだ水草や魚鱗で作った腰蓑や装飾品を身に付けており、手には漁具と武器を兼ねた銛を握っている。


「観光兼祭りへの参加目的で来た()()()()()のアリエラよ」

 アリエラは何か優遇して貰えないかと期待を込めて特級冒険者である事を強調気味に名乗った。


「下品ですよアリエラさん……()()()レイメイです」

「メイメイまで……あーしは一級のピチカでーす☆」

「ワタシは理由(わけ)あって同行中のイエナガと申しますッ。

 (誘導成功……! 後は成功を祈るのみ……)」


 腹に一物抱えたイエナガ含め全員の自己紹介が済むと、見張りのリザードマンたちは気さく態度は崩しこそしなかったが、驚いた様子を見せる。


「特級〜!? スッゲー!」

「心強いなー! 村長も喜ぶぜぇ〜! あ、案内するからついて来てくれよ」


 特に優遇措置などは無いようだが、“喜んでいるようなのでまあいいか”と一行はボートを黄金石棺に収納してから、案内に従って村の中央に足を運んだ。


(今のメイメイのファッションはスルーなんだ……もしかして場所によってはメジェドファッション流行ってんのかな……)

 昨夜まで滞在していた港町では奇異の目を向けられていたレイメイの格好に言及はおろか、まるで気にする様子も無い見張りのリザードマンたちを訝しみながらもピチカは村に入った。


─────────


「いやぁ特級冒険者が力を貸してくれるとは頼もしいのう!!

 ワシはこのウラカン村の長『エゴット』ですじゃ。

 ワシら自身は水気には強いが、こう雨続きだと魚を干せなくて困ってなあ……それに水位が上がり過ぎると村が沈んでしまうでなぁ……」


 精一杯身を屈めてアリエラたちと愚痴混じりに挨拶するのは、身長8mを優に超えようかという巨大なスピノサウルスのリザードマン『エゴット』だ。

 動物や魔物などの骨を組んで作られた骨組みに、水草を編んだ簾や撥水性の有る布などを被せた簡素な家の建ち並ぶウラカン村の中でも一際大きな家の中に座っている。

 背中の大きなトサカが時折家のどこかにぶつかっており窮屈そうにしている。


「これはどうも……ワタクシはアリエラですわ。こっちがチームリーダーのピチカ。こっちがレイメイ。こっちがイエナガ。

 さて単刀直入にお伺いしますけれど村長さん。この村にはもしかすると“黄金と宝石で覆われた髑髏”……なんてモノが置いてあるのではなくて? きっとそれがこの豪雨の原因ですわ。少し拝見させて頂けると話が早いのですけれど案内して下さりませんこと?」


 事を急ぐあまり雑に全員の紹介を済ませたアリエラは駆け引きなど抜きにして黄金髑髏のある場所まで案内するよう早口で迫った。


「うおっ……ぉおん……確かに少し前に河底から見つかった豪華な髑髏を飾り出したあたりから雨が増えたかなあ……」

 アリエラの勢いに気圧されながらもエゴットは記憶を遡る。


「間違い無さそうね……では行きましょうか村長さん。場合によってはワタクシが買い取らせて頂きますわ。……支払いは南方通貨でよろしくて?」

「ちょっと……強引ですよアリエラさん」

「アーちゃん落ち着きなよ……」

「では早速参りましょうッ」


──────────


 エゴットら村人たちの案内で村の北側の外れにある他よりも装飾が多い簾の掛かった建物の中には確かに黄金に覆われたワニのものと思われる髑髏があった。


 しかし──……アリエラの探しているワニのリザードマンの髑髏ではなかった。

 アリエラの身長を超える程の魔物化した巨大なワニの髑髏であり、装飾にも紅玉ではなく妖しく光る藍玉を中心に様々な色の石が使われている。


「残念……〈大河帝(セベク)〉の黄金髑髏ではなかったわ……大き過ぎる……。

 でも、この豪雨の原因がこの髑髏なのは間違いなさそうね……強力な雨乞いの魔道具だわコレ」

 アリエラは肩を落としながらも品定めすると、目の前の髑髏から只ならぬ魔力が発せられているのを感知した。


「おぉ……どうにか出来そうですかな?」

「額にはまっている魔石を外して魔力の供給を絶てば数日で雨雲は霧散するかと思いますわ。

 後は雨が欲しくなったら魔石をはめ直せばまた雨が降り出すかと……良い拾い物をなさいましたわね」


 そう言いながらアリエラは髑髏の額にはまった藍色の魔石を取り外し、エゴットに渡した。


「こんな小さな魔石と髑髏が原因だったとはのう……使い方が分かれば便利そうな魔道具じゃわいな」

 アリエラからすれば拳大の立派な魔石だが、自分からすれば小石程度の大きさしかない魔石をしげしげと見つめてエゴットは感心した。


「……これで解決と言うのも味気無いし……せっかく来たのですから今上空に停滞している雨雲をこのアリエラが晴らしてご覧に入れますわ村長」


──────────


 長雨で泥濘む地面をズンズンと進み村の中央辺りの広場に到着すると、アリエラは徐に空を見上げ魔力を滾らせ右眼に集中させ──


「ハァッ──……(ビシュウッ)! ……これではまだ(ザァアアア……)足りないようね……」

 右眼から放たれた赫い熱線(ビーム)が雨雲を貫き、大穴を穿った事によりウラカン村に一瞬陽光が差し込んだが、すぐに雨雲が不自然に動いて修復され再び豪雨が降り注いだ。


なんだぁ?(ザワ)」「なんか光ったか!?(ザワ……)

 突然の光と音に村人のリザードマンや、アリエラたちよりも早くに村に来ていた『逆雨乞い祭り』に参加するために滞在していたであろう魔術師や祈祷師らしき様々な種族の者たちなどが次々と広場に集まって来た。


「ピチカ! 〈太陽帝(ラー)〉を使うわ!」

「オッケー! ホイっと☆」


 周囲の目があるため、ピチカは「手品ですよ」とアピールするべくアリエラの頭の周囲を翼腕で隠してから神業(チートスキル)を発動させハヤブサ鳥人の黄金髑髏を装備させる。

 この時点でレイメイは既に姿を消していた。


「レイメイはもう避難済みね。

 それじゃあ他の光や熱……あと乾燥に弱い方も家の中や日陰に隠れておいて頂戴ね?

 ──〈太陽帝(ラー)〉! そして〈翼獅身(スフィンクス)〉ッ!!」

 術を発動したアリエラは全員から純白の光を放ち、翼の生えた発光体となって雨雲の中へ飛んで行った。


「「「…………ッ!!」」」

 尋常ではない出力のアリエラの魔術に危機感を覚えた一同は急いで家の中に飛び込んだ。


「──“緋色の亜麻布”……!」

 全員が避難し終えた数秒後、アリエラの詠唱によって発生した一際強い閃光が厚い雲を粉々に千切り飛ばし、その後も詠唱に合わせて数段階に分けて強さを増す光と熱が雲を退け続け、完全詠唱一歩手前で雲は完全に消滅した。


 小さな擬似太陽と化したアリエラに本物の太陽から敵意とも興味ともつかぬ気配が発せられたが、アリエラは努めて無視し、術を解除して地上に降りて行った。



 ◇



「やったー!」「久々の陽気だぁ!!」

「やっぱ南方大陸は渇いてなきゃな!」「酒持って来〜い」


 想像よりも早く豪雨問題が解決したため、『逆雨乞い祭り』は単なる昼間からの酒宴と化した。


 美しい虹を肴に、リザードマンたちが次々に注ぎ献上して来る酒をアリエラは全て呑み干し、煙管休憩なども挟みながら宴を満喫した。

 黄金髑髏は回収できなかったものの、珍しくトラブル無しで問題を解決できた事もあり、上機嫌で日が暮れるまで呑み床に就いたのであった。



 そして深夜──……


「……ギャ……──クーちゃ──」「お静かに──」

「ハァ……」「プフフフ…」


「……? ピチカ? イエナガ……? レイメイまで……!?」

 アリエラは誰かが小声で話す声を聞き目を覚ました。

 しかし同じ屋根の下で雑魚寝していたはずの三人はいつの間にか姿を消していた。


「グルルルル……」「フシュー……」

ぅうゔッ……(ガチッガチッ)」「殺す……殺……(ジャキッ)

 そして周囲からはウラカン村の住人のものと思われるリザードマンの殺気に満ちた息遣いや唸り声が聞こえていた。

 牙を打ち鳴らす音の他に、銃器をいじっているような金属音までもが聞こえ、襲撃する気マンマンなのが感じ取れる。


「チッ……!

 (囲まれている……! 妙に上手く事が運んだと思ったら……罠だったというワケね……!)」


 寝起きのアリエラが構えると、仕切りの布や屋根を突き破ってリザードマンたちが一斉に襲いかかって来た。

◇ 〈大河帝(セベク)

アリエラの一族相伝魔術の一つ。

魔力を藍色に変質させ、淡水を操り術者自身も淡水の激流と化す事ができるようになる。

触媒となる黄金髑髏はアリエラに仕えていたリザードマンの運輸大臣で運河の管理を任されていた。

増税に反発して決闘を挑み、アリエラの片腕を食い千切る奮闘を見せたが、水と化した身体を沸騰させられて絶命。蒐集に加わった。

黄金髑髏を許可無く所持すると〈豪雨の呪い〉が発動する。

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