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第五十一話 アリエラの過去:成人の儀〜王位継承

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

昔は髪が長かった。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル【楽々御粧し】の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

昔は茶髪だったが、女神の憑依の影響で蒼くなった。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

現在日差しと気温でダウン中。

昔は黒髪だったが、修行の過程で白くなった。


◇イエナガ・クズハ

アリエラの専属メイド。休暇を取って旅に同行中。

艶のある長い黒髪が特徴のキツネとハイエナの混相の獣人(ケモ度高め)。

尻尾を様々な形状に変化させられる。

アリエラを慕っている。

昔から髪を伸ばしている。

 

『『『()れッ! ()れッ!! ()れッ!!!』』』


『フフ……』『……!』

 幻影の闘技場の盛り上がりが最高潮に達すると、アリエラとアリエラの姉はそれぞれ半ばから大きく湾曲した至剛金(アダマント)製の斧剣(ケペシュ)を構え、それぞれの蒐集した黄金髑髏を背後に浮遊させて戦闘態勢に入る。

 ピチカにはアリエラの顔が強張っているように見えた。


「この時のワタクシが使えた黄金髑髏は

冶金帝(プタハ)〉〈享楽女帝(バステト)〉〈葬送帝(アヌビス)〉〈豊穣女帝(イシス)

暴嵐帝(セト)〉〈大地帝(ゲブ)〉〈安息女帝(ネフティス)〉の七つね。

 数はワタクシの方が多かったけれど、そもそも戦闘向きでないものか、姉上の蒐集に相殺あるいは封殺されるものばかりで終始姉上が押していたわ……──()()()()()()()()()()()()()()ね……」


 アリエラの語る通り、幻影に映る過去のアリエラは次々と黄金髑髏を付け替えては様々な方法で姉に攻撃を試みるが、植物攻撃に対しては普通に火の魔術で焼き払い・嵐は暗黒領域で吸収・引力は斥力で相殺・即死魔法付与武器はそもそも掠りもしない──……その上で術と術の合間には痛烈な反撃が直撃し、アリエラの姉は観客を積極的に巻き添えにしながらアリエラを追い詰める。

 闘技場はあっという間に粉々になった。


「メッチャ客席巻き込んでるじゃん!」

「苛烈な御方ですね……」

「まあ現代の闘技場とは違って結界で仕切られていたりはしなかったから……観客も巻き添えになっても構わないような命知らずばかりだったし……。

 問題はその観客が姉上の発動した死霊術──……今で言う〈冥府帝(オシリス)〉の効果で甦って一斉に襲いかかってきた事よ」


『フハハハッ! 起きろ愚民共ッ!! 次代の真なる王を決める闘いに参加させてやろうッ! 光栄に思うが良い!!』

 大きなゾウ獣人の黄金髑髏を被り魔力を黒混じりの濁った緑色に変質させたアリエラの姉は、魔力を植物の根が張るように地面を這わせて蹴散らされた観客の死体に接触させ、生ける屍(ゾンビ)としてアリエラに襲いかからせる。


『ギシャアぁあ゛!』『ガァあアァア゛あ!』

 並の獣人や鳥人のゾンビならば大した脅威にはならないのだが、アリエラに殺到するゾンビの素体は巻き添えになって死んだとはいえ、戦闘民族国家『ティトゥラエリン王朝』の中でも有数の命知らずたちの戦士たちの屍である。


『くっ……! ガる ァ ア ア゛ ッ ! !』

 アリエラは咆哮と共に口から爆炎と雷撃を放ち反撃するが、全身を炎で焼かれ雷に貫かれてもゾンビたちはお構い無しに突っ込みアリエラに痛打を与えた。


『なんだこの腑抜けた咆哮は!? まさか愚民共の死体に気を遣っているのか!? 巻き添えで死ぬ程度の弱卒共などに構うなッ!! 

 真なる王の咆哮とは……こういうモノの事を言うのだッ!

  ァ

    ッ

       ァ ア ア゛ ──────』


 アリエラの姉の口から途中から音と認識出来なくなる程の爆音と共に赫い閃光が視界いっぱいに放たれると、使役しているゾンビたち諸共アリエラを吹き飛ばした。

 地平線の彼方──砂漠の真ん中まで吹き飛ばされたところで閃光は爆発し、巨大なキノコ雲を作ってゾンビたちを消滅させた。


『ハァッ……! ハッ……! うっ──……(ガギンッ)くっ!』

 強靭な肉体と強い熱耐性を持つアリエラは耐えはしたものの、追撃で振るわれた姉の剣閃を防ぐために構えた斧剣を弾き飛ばされ、丸腰になってしまい後退って距離を取った。


『手駒が消えてしまったな。 補充せねばな──……(ゴポゴボッ)

 アリエラの姉が大きな蛙人(トードマン)の黄金髑髏を被ると、魔力は限りなく黒に近い藍色の粘液のように変質して地面に広がり、その魔力の粘液溜まりから次々と人型の影が這い出してくる。


『シュ────ッ……!』『ぶジュルルルッ!』

 産まれ出た“ソレら”はただアリエラに対する攻撃手段としての僅か数分の命しか与えられていない擬似生命体であった。

 発声器官や消化器官などは存在せず、最低限の内臓と戦闘本能しか与えられていないその身体は太く強靭な異形の手足や尻尾とは裏腹に、頭部や腹部は窪んでいて貧相である。


『チッ──うッぐッ!?』

『ハハハッ! さあ抗ってみせろ妹よ!』


 擬似生命体たちの猛攻を捌けば姉の攻撃が、姉の攻撃を防げば擬似生命体たちが異形の剛腕を叩き込みアリエラを追い込んでいった。


 ……というところで幻影は途切れ──


「──ワタクシが覚えているのはここまでよ……」

「…………え ッ ! ?」

「このあとはどーなったの?」


 どうやって状況を切り抜けるのかと手に汗握って話を聴いていたイエナガはつい大きな声を出してしまった。

 

「その後、気がつくとワタクシは狂獣化状態で……同じく狂獣化状態の姉上の首をもぎ取って殺していたわ……」

 

 語りが再開すると、幻影は燃え盛る砂漠の真ん中で完全に獅子面になり赫く変色した髪の姉の生首を持って勝鬨の咆哮を上げるアリエラを映し出した。


『ゴ ォ オ オ オ オ゛ オ゛ オ゛ ッ ! !』

『見事だ……お前こそが余の娘“ネフェラリエラ”……次代の真なる王よ……』


 吹き荒れる炎の嵐の中を平然と歩き、鷹揚に拍手をしながらアリエラに近づいて来た父王ネクアバを見たアリエラは正気を取り戻し、徐々に平常時の姿に戻っていく。


『ハッ……!? ワタクシの……勝ち……?』

『ん……これからは後継者として余の職務の半分を任せる故、精進するのだぞ。 

 ……その前にその首を飾り立てねばな……職人を集めておいてやるからお前はゆっくり帰って来るが良い』


『はっ!』

 幻影の中のアリエラは先に帰る父を見送り短く返事をすると、姉の首を担いで砂漠を後にした。



「こうしてワタクシの()()()()最強の黄金髑髏──……

殲滅女帝(セクメト)〉が完成したのよ」


「“()()()()”とは……?」

「アーちゃん使ったコトないの?」


 アリエラの妙な言い回しが気になり、二人が詳しく話を訊こうとすると、部屋の隅に設営していたテントからレイメイが呻きながら顔を出した。


「ゔ〜……それは早く取り戻しておきたいですね……魔王軍の戦力的にも……」

「あっメイメイ起きた!」

「レイメイ様お加減はいかがですか?」


「涼しくなってきたので大丈夫です。 アリエラさん、話の続きどうぞ」

「そう? (レイメイには後で猛暑対策の魔道具でも作ってやった方が良さそうね……)

 では……なぜ使った事もない〈殲滅女帝(セクメト)〉を最強と言えるかよね?」

「そうそう! なんで?」


 気を取り直して話を再開するアリエラは幻影を展開し、頭頂部に太陽円盤と二匹の猫の飾り、そして円盤の上に七宝の翼を広げたハヤブサの飾りが輝く自らの姉の黄金髑髏を映し出しながら最強の根拠について話し始める。


「南方大陸にはワタクシのものを除いても十一の大ピラミッドがあるでしょう? ワタクシの前にも双子の兄弟姉妹を黄金髑髏にして力を奮った王がいて……その伝説が王族に口伝されていたのよ。

 そして肝心のその力というのは至極単純──……

“あらゆる力を倍増させる術”よ。

 ワタクシは使いこなせる自信が無くて結局発動させる事無く紛失しているのが現状だけれどね……」


「アリエラ様の御力が……」

「倍増って……(絶対ヤバいやつじゃん)」

「……もし見つけても発動させないで下さいね」


 通常かつ手加減している状態でも様々な破壊活動を行うアリエラの“あらゆる力が倍増”と聴いた三人は軽く寒気を覚えた。


「使うに相応しい相手にしか使う気は無くてよ。

 さて……次は19の年ね。 この年に蒐集に加えたのは今発動している腹違いの妹で幻影術の〈霧幻女帝(テフヌト)〉とその実の兄で……ワタクシから見れば腹違いの弟で魔力を不可視化する〈大気帝(シュー)〉ね。

 ワタクシが次代の女王に内定したからって王族の職務を放棄しようとしたから処刑したわ」


 “職務を放棄しようとしたから処刑した”という部分を聴いて三人は一時沈黙した。


「それはその……なんと言いましょうか……」

「へ、へぇ……(その過去があって職務放棄して旅してるってマジ……!?)」


 イエナガとピチカは思うところがあっても口には出さなかったが──


「そんな過去があって自分も職務放棄して旅してるってアリエラさん正気ですか?」

「「──!!(訊いちゃった!)」」


 レイメイは気を遣わずアリエラにずけずけと物申した。


「ゔ……ワ、ワタクシはちゃんと魔王陛下から許可を頂いたのだから問題無くてよっ。

 そ、それより続きね! 20の年にワタクシが正式に王位継承すると叔父上が反逆してきたので処刑! その息子──……ワタクシの従弟が仇討ちに挑んできたから処刑! 

 これが〈太陽帝(ラー)〉と〈天導帝(ホルス)〉ね! 次ッ!」

(逃げたな……)


 アリエラは都合の悪い話に繋がりそうになったからか、既に回収済みで力も見せている黄金髑髏の話だからか雑に語って話を流した。


「21の年は……外敵は攻め込んで来なかった代わりに、ワタクシの(まつりごと)が気に入らなかったのか、国家運営の要人から決闘を申し込まれたわ。

 運河の管理を任せていたワニの蜥蜴人(リザードマン)の〈大河帝(セベク)

書物の生産や管理を任せていたトキ鳥人の〈書架帝(トト)

動像(ゴーレム)製造を任せていたヒツジ獣人の〈創造帝(アトゥム)〉の三名が蒐集に加わって、後任の人材を見つけるのに苦労したものよ……。

 この三名の髑髏も未回収ね……」


 それぞれの黄金髑髏の幻影を見せられたところでレイメイが再び口を開き、アリエラに質問を投げかける。


「そんな不満が出るような政をしていたんですか?」

「まさか! 猫ちゃんや猫妖精(ケットシー)ちゃんたちの為の新しい税を導入しただけよ」 

「あー……そりゃ怒るヒトも出てくるよアーちゃん……」


 政治には明るくないピチカだが、前世の知識もあり増税関連──しかも為政者の個人的感情が強いと思われる──なら反発する者が出てきてもおかしくは無いと納得した。


「まあ……そうね。 現代の考古学者に言わせたら『最後の女王ネフェラリエラ』は王朝を終わらせた暗君だそうだし……」

「そ、そのような事はッ……いや少しはそう言う学者もいるようですが、歴代最強という意見は定番ですよッ! 

 ねェッ!? ピチカ様ッ!」

「ギャヒッ!? うんうん! あーしですらネフェラリエラって名前聞いたコトあるしマジ偉人だってアーちゃん!」


 イエナガもそのような学説を聞いた事があるのか、しどろもどろになりながら擁護し、ピチカもそれに同調した。


「フフ……無理に擁護はしなくてよくてよ。

 遺された文献を紐解けばこの翌年……ワタクシが22の年を境に『ティトゥラエリン王朝』は衰退──……次代の王も決まらず国は分裂したそうよ」


「……? アーちゃんも直接は知らないの?」

 なぜか伝聞形で語るアリエラをピチカは訝しんだ。


「ええ。 詳しく知ったのは魔王軍に加入してからよ。

 なにせワタクシはこの22の年に一度死んでしまったのだから……」

◇〈殲滅女帝(セクメト)

アリエラの一族相伝の魔術の一つにして単純な破壊力ならばおそらく最強と思われる術。

歴代の双子の王の口伝から“あらゆる力が倍増する魔術”だと推定される。

触媒となる黄金髑髏はアリエラの双子の姉のもの。

式典などで冠代わりとしても着用する予定であったため、頭頂部には太陽円盤・二匹の猫(アリエラの趣味)・そして七宝の翼を広げるハヤブサの飾りが施されていた。

アリエラの過去について聴いた魔王が命名した術名であり、四天王としての二つ名の由来でもある。

現在紛失中。

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