第四十七話 実は夏だ!
登場人物紹介
◇アリエラ
主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。
『殲滅女帝』の二つ名を持つ。
褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。
冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。
特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』
暑いのも寒いのも平気。
◇ピチカ
蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。
異世界転生者。チートスキル『楽々御粧し』の使い手。
冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。
一級冒険者。
暑いのは平気だが、転生してから寒い場所には行った事が無いため、寒さへの耐性は未知数。
◇レイメイ
魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。
白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。
魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。
冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。
特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』
暑いのも寒いのも苦手だが、蒸し暑さにだけは強い。
◇
「海だ────────────────ッ☆」
青い海・白い砂浜・照りつける太陽の眩しい風光明媚な島『トロセル島』──……。
カメリアと別れ南方大陸に向かう事に決めた『パリピ☆愚連隊』は寄り道し、ピチカの初となるチームリーダー命令により、三人揃って砂浜に向かって走り、両手を掲げて跳躍する。
ピチカはカラフルなフリルビキニに頭にはハートサングラスと海関連デザインの髪飾り、レイメイは白いワンピース水着に麦わら帽子、そしてアリエラは真紅のクロスホルタービキニを着用して砂浜に着地した。
「ずっと海だったじゃないですか……」
「リゾート的なキレイな海は初でしょ! 南東の旅のシメにちょっと遊んで行こーよ☆」
「なんだかんだドタバタしていたものね……」
わざわざ泳ぎに海に来たという事もあり、三人は水着に着替えて海に繰り出したのだ。
三人共に目立つ風貌のため、他の客から遠巻きに見られているが、もう慣れたもので気にするような事も無く楽しんでいる。
特にピチカは元『風の聖女』であると気付いている客の一部から拝まれているが、努めて無視した。
「バトルとか依頼とかばっかりだったし、シメくらい平和な遊びしよーよ☆ えいえいっ☆」
ピチカは波打ち際に行くとアリエラに翼腕ですくった海水を軽く浴びせた。
「フゥ……陽射しが強いので私はパラソルの下で休んでますね……ウミヘビとか見つけたら呼んで下さい」
レイメイは海に足先すらつけず備え付けのビーチチェアに腰掛けて休み始める。
「えー!! ……まあしょうがないかぁ……じゃあ続行だ! それそれっ☆」
「……水をかけ合えばいいのね? シッ──!」
ピチカに倣いアリエラも海水をすくって飛ばすと、海水は散弾の如く飛び散り、辛うじて躱したピチカの後方の海面が爆ぜる。
これを見てアリエラたちをナンパしようとしていた連中は皆踵を返した。
「ギャッ……! じゅ、準備運動はこれくらいにして本番に移ろっか☆ いろいろ対決しよーよ! 水飛ばすのはナシね!!」
「受けて立ってよ。始めましょ」
この後行われた対決でピチカが勝つ事は無かった。
具体的な勝負内容を幾つか挙げると──……
①ビーチフラッグス対決はアリエラが瞬足で旗を奪って勝利。
②サーフィン対決はピチカも健闘したが、アリエラが華麗なチューブライドをキメて観客を沸かせて勝利。
③競泳対決は半分魚人のピチカ有利かと思われたが、アリエラが後半追い上げ辛くも勝利。自信があっただけにピチカは少しヘコんだ。
④キレイな貝殻探し対決はそもそも勝敗の基準が曖昧なため引き分けとなった。
「ギャヒィ……勝てない……」
「対決である以上は勝ちは譲らなくてよ。
陽も暮れてきた事だし、何か食べましょ?」
────────
夕方になりレイメイも元気を取り戻し、三人は地元観光協会主催のバーベキューに参加し、腹を満たす事になった。
アリエラはドラゴン肉を提供し喝采を浴びた。(巨人牛の肉も提供しようとしたが断られた)
「B! B! Q!
B! B! Q!
イェ────────イ☆」
「ほんとドラゴン好きですねピチカさん……」
「提供した甲斐があったわ」
ピチカはドラゴンに限らず様々な肉だけが刺さった串を両の翼腕で掴み交互に食べた。
「野菜の串もちゃんと食べて下さいよ……?」
「バランス良く食べなくてはね」
等と言うレイメイとアリエラも肉と海鮮物だけが刺さった串を頬張る。
しばらくするとひとしきりはしゃぎ終えたピチカがいつに無く神妙な面持ちで口を開いた。
「ねえ二人とも……ちょっと相談なんだけどさ……」
「なんですか?」
「言ってごらんなさい」
「うん、『パリピ☆愚連隊』のリーダーさ……アーちゃんに交代しない?」
「ダメよ」「ダメです」
アリエラとレイメイは同時かつ間髪入れずに却下した。
「じゃあメイメイ!」
「それもダメです。仮初の立場とはいえ私とアリエラさんに明確な上下関係ができると色々と面倒事が起きかねないので……魔王軍内で」
「一番強いからリーダーに相応しいとは限らなくてよ。
南方大陸に着いたらワタクシの身の上話ついでにその辺りの事も話しましょうか」
「……それにアリエラさんがリーダーになったらリーダー命令を濫用して猫探しばかりやらされますよ?」
「それもそっか……」
「納得しないで頂戴……そんな事するワケ──…………やはりワタクシがリーダーになりましょうか?」
「んーん! やっぱあーしがリーダー☆ あーしがチームで一番パリピだしね!」
「フフ……そうね。では明日は朝一番で出発しましょ」
「南方大陸ですか……暑そうですね……」
翌朝、アリエラはこっそり買っていたサーフィン板に乗ってピチカに縄で引っ張られつつ、波に乗りながらレイメイの〈白毒雲〉と速さを競いつつ焦熱の南方大陸に向かうのであった。
◇
アリエラたちが海で遊ぶ三日前……。
「ウォトゥオスが滅されただと!? おのれ……!!」
赤黒い血の海・積み上がる白骨の丘・どこまでも昏い空の広がる世界の何処か──『ゲダの指』本拠地──……。
血の海に無数に屹立する巨大な異形の左腕の内、真紅の竜鱗と竜爪が生え、薬指には黄金の指輪がはまった腕の掌の上で怒り狂う女の姿があった。
「あの程度の眷属でも探し当てるのに妾がどれだけの時間と血を費やしたと思っておる!!
『爆心地のアリエラ』め……! ふざけおって! 妾が──……」
カルト死霊術師団『ゲダの指』最高幹部『指輪付き』の一角にして吸血鬼の十三血族『竜の血族』が真祖……
『竜血のエルトート』である。
青褪めた肌に血のような真紅の瞳と長い髪……そして竜角・竜翼・竜尾を持ち身に纏うドレスも全て血のような真紅尽くしである。
その左薬指には乗っている巨腕と対になる指輪が輝いている。
酷薄さが隠し切れていないという部分に目を瞑れば絶世の美女と言って差し支えない貌を歪ませ、怒りのあまり完全な竜の姿に変異しかけているエルトートの背後に燻る黒い巨大な左腕が現れ、その掌に立つ人影がエルトートの言葉を遮った。
その燻る黒い巨腕の薬指にもエルトートが乗る巨腕と同じように黄金の指輪がはまっている。
「──おっと、待て待て。『爆心地のアリエラ』はワタシの獲物だ。
ワタシはそういう契約で『指輪付き』として導師の下に付いている事を忘れてくれるなよ? ワタシの襲撃が誰よりも優先だ。
今警告してやったのも契約に含まれているからに過ぎん。アリエラを襲いたかったら襲っても構わんぞ? ワタシは導師の制御を離れて好きに動けるようになるからな」
人影はエルトートに反論を許さず言い切った。
「畜生擬き風情がッ……!
……まァいいだろう。連中はどうやら南方に向かっておるようだな。
あそこには別の眷属も配置しておる……彼奴は肉体は強いが頭はサッパリでなァ……縄張りに近付けば誰であろうが襲いかかる故、精々近付かぬ事だなァ!
妾はこれから瞑想に入る故、邪魔立てするでないぞ!!」
幾分か冷静になったエルトートは竜への変異を止め、元の美しい竜人の姿に戻り、乗っている巨腕ごと血の海に沈んで行き姿を消した。
「南方か。丁度良い……探し物ついでにアリエラにちょっかいを出しに行くか……フフ……」
そう言うと燻る黒い巨腕に乗った人影も口角を吊り上げながら血の海に沈んで行った。
◇『 握食のウォトゥオス』
『ゲダの指』の一柱にして『竜血のエルトート』の眷属の一人。
真祖エルトートから直接分け与えられた血で吸血鬼化した事により、両腕を双頭蛇竜に変じる事が可能になり肉体再生能力も並の吸血鬼を大幅に上回っていたが、これでも眷属内では最弱である。
冒険者組合に特級冒険者『闇篭りのウォトゥオス』として潜入していたが、口が軽いため鉄仮面と拘束衣で口封じをされていた。
しかし──……突如アリエラに正体を暴かれ、総攻撃に遭い、アリエラによって滅された。
享年27。吸血鬼としては約50年程活動。




