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第四十五話 特級フィーバーの正体

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

大抵の物を咀嚼できる丈夫な歯の持ち主。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル『楽々御粧し』の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

歯が折れたり抜けたりしても数日で生え変わる。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

よく見ると犬歯が少し発達している。


◇フィアラル

金髪金瞳に黄金比の肉体美を持つ巨人の特級冒険者。

二つ名は『黄金のフィアラル』

〈太陽帝〉の触媒たる黄金髑髏を賭けてアリエラと試合をする事に。

魔王軍四天王『格闘覇王マスクドヴィゾフニル』の中の人だった。

歯並びも黄金比。


 ◇



──……(ドサッ)ハッ!? ……どれくらい寝てた?」

「5秒弱ってところかしら」


 戦っていた無人島から少し離れた別の無人島の地面に放り投げられた衝撃でフィアラルは目覚めた。

 遠くでは今も噴火が続き煙が立ち込め、海水で冷やされた熔岩が凝固し新たな島になろうとしている。


「チッ……今回は俺の負けか……」

()()()でしょう?」


 頭を抑えながら起きあがろうとするフィアラルをアリエラが煽る。


「あ゛ァ!? ……まあいい事実だしな……そんで? 自分探し(笑)とやらは捗ってんのかよ?」

「そうね……わかっていた事ではあるけれど、ワタクシはかなり世間知らずで金遣いが荒いという事がわかったわ」


「だろうな……強いヤツには会ったか?」

「『西方公ワン・ソンミン』は待ち伏せしていたレイメイに勝ちかけていたわ。ワタクシがトドメを刺したけれどね」


 アリエラはかつて噛みちぎったソンミンの肉の異様な硬さを思い出しながら軽く歯を見せた。


「もう『ワン五兄弟』の暗殺始まってんのかよ!?

 俺も呼べよな……他には?」

「『南方公ワン・イェンジュー』は身重だったとはいえピチカに負けてシィシアに捕捉されたわ」


「ピチカ……? ああ、あの派手な新入りか」

「それから……『饕餮宮』の店主と共闘して反社会的妖鬼(ゴブリン)の組織を壊滅させたり、パキケファロサウルスの蜥蜴人(リザードマン)のイクストゥスと頭突き対決したら頭を割られたわ」


 アリエラは額をさすりながら切り株の上での闘いを思い出す。


「イクストゥス……そいつの名前は聞いた事あるぜ。特級闘士だったハズだ……アリエラの頭をなぁ……ケケケッ……今度会ったら勝負してみるか」

「それから新たな王種(キング)妖巨人(トロール)のロア・ムト・ロゾの誕生にも立ち会ったわ。

 アナタに頭を両断されたと聞いているけれど?」


 アリエラはキングに変異させる決め手となったのはピチカの不意打ちであった事は伏せつつ、フィアラルも面識があるはずだという事を思い出した。


「お〜アイツか! そうか……『三巨頭』の他にもキングトロールがなぁ……また手合わせしてみるか」

「程々にして頂戴ね……せっかく誕生したのに即崩御なんて事になったら魔王陛下も落胆なさるわ。

 あとは……特級冒険者の中でも()()()()は文句なしに強者でしょうね……短期間で何人も特級冒険者に昇級するワケだわ……──! 噂をすれば……」


 初対面のハズだが既視感のあった特級冒険者二名を思い出していると、二つの強大な気配が近付いて来るのを感知した。


 気配のする方向を向くと、竜尽くしの意匠の赤い宝剣が地面に突き刺さり、無数の蝿と蝶の群れが二人の目の前に集まり始めた。


──……(ブォンッ……)ククク……やはりもうバレていたか」

 宝剣の刺さった位置に『神竜剣のクリーム』が空間転移して現れ──……


──……(ブブブブ……)流石はアリエラ殿。

 この程度の変装は御見通しですな」

 蝿と蝶の群れは一点に集まると凝縮し人型を形成、あっという間に『付け火のベル』の姿に擬態したが、声は可愛らしい翅妖精(ピクシー)の少女のものでは無く、低いが良く通る男性の声であった。


「ジークにゼブブ卿……貴方たちも特級冒険者になっていたとはね……」

「あァ!? お前らあの二人なのかよ!? ……同僚が女装してるかと思うとキツいな」


 フィアラルは四天王として活動している同僚二人との違いを見て居心地悪そうな表情をする。


「ククク……我に性別の概念は無い。宿る鎧が女用の物になっただけの事だ……」

「我輩の自我を形成する群れは雌雄入り乱れる両性ですからな……女装と言うのは少々語弊があるかと」


「ああそうかい……というかゼブブ卿は魔王城に残るんじゃなかったのかよ?」

「本体は残っているので問題ありませんぞ。この『付け火のベル』は分身に過ぎませんので御心配無く」


「なら安心だな。じゃあ勝負も着いた事だし……俺は一旦リッキーの旦那と距離を取りてぇからこのまま出発するわ」

「待ちなさい。ワタクシに叔父上を返してからにして頂戴」


 アリエラはさっさと立ち去ろうとするフィアラルの足首に尻尾を巻き付けて引き止めた。


「あ? アレお前のおじさんのドクロなのか?

 ……組合(ギルド)の俺の部屋に置いてあるから勝手に持ってってくれ! じゃあそういう事で──」

 

「──おーい! アーちゃん大丈夫〜!?」

「あ〜あ……また地形が……」


 今度こそフィアラルが去ろうとしたその時、ピチカとピチカの鳥脚にぶら下がったレイメイが文字通り飛んで駆け付けた。


「ゼブブ卿には紹介したけれど、フィアラルとジークにはまだ紹介していなかったわね。

 あの娘はピチカ。異世界転生者で元『風の聖女』で女面鷲(ハーピィ)の新入りよ」

「属性盛り過ぎだろ……」

「ククク……強いのか?」

「一級冒険者ならば並の戦闘員よりは強いのではないですかな?」


「いよっと! 暑ぅ……またムチャクチャやったね〜! アーちゃん勝った?」

 レイメイを置いて着陸したピチカは新たに誕生した火山島を眺めながら翼腕で顔を扇ぐ。


「当然よ。良い所に来たわねピチカ。ちょうど四天王が揃っているから挨拶しておきなさい。

 『神竜剣のクリーム』が『魔剣聖君ジーク』で、『付け火のベル』がゼブブ卿で、『黄金のフィアラル』が『格闘覇王マスクド・ヴィゾフニル』よ」


 アリエラは自らの勝利は軽く流して他の四天王の情報を一気にピチカに吹き込んだ。


「ぅえ? あっ、あ……ピッ、ピチカでーっす☆ よろしくお願いしまーす……ゼブブ卿? は東方大陸ぶりでーす……ギャヒヒ」

 他二人はともかく『付け火のベル』と『蝿蛆元首バアル・ゼブブ』が同一人物(?)である事がしっくりこないピチカは戸惑いながら挨拶した。


「おう。まあよろしく──……(ズドドドド……)あっヤベっリッキーの旦那が来た! 俺は南東大陸本土で修行するから旦那には俺は別の方向に行ったって伝えといてくれ!! じゃあなッ!」

 『超角力士リッキー』の接近を察知したフィアラルは早口で伝言を残して南東へ跳び去って行った。


 その後激しく水飛沫を上げながら海面を走って来たリッキーが到着した。


兄弟(ブラザー)ァアア!! おいアリエラ関!

 兄弟(ブラザー)はどこに行った!? まさか消し飛んだんじゃないだろうな!?」

「勝手に力士扱いしないで下さる? フィアラルは南東に向かったわ」


 アリエラは馬鹿正直に話した。


「助かる! 待ってろ兄弟(ブラザー)!! ウォオオオォオッ!!!」

 リッキーは再び水飛沫を上げ海面を走り去った。



「行ってしまったわ……まあ紹介を続けましょうか。

 ピチカ。手っ取り早く仲良くなるためにもジークに魔剣を見せてあげてはどう?」

「オッケー!」

「あっ……ピチカさんそれはやめといた方が──」


 レイメイが止めに入る間も無く【楽々御粧し(ドレスアッパー)】が発動し、ピチカの鳥脚に蒼水晶の大曲剣が握られた。


「ククク……素晴らしい……! いくら出せば譲る?」

「えッ!? そういうのはちょっと……」

「確か一度は手離していたのよね? 何かあったの?」


 知っている範囲では最初はロアム・トアゾが所持していた事をアリエラは思い出した。


「あー……旅に出た時はまだ【楽々御粧し(ドレスアッパー)】で武器は出し入れできなくてジャマだったから質屋に入れてたら質流れしちゃってたみたい……」

「ククク……一度手離したのならそう執着する事もあるまい……なんなら代わりの魔剣と交換でもよいが……?」


「え゛〜……今はあーしのメイン武器なんでちょっと……」

「ククク……まあそう言うな……」

「ジーク殿。無理強いはよくありませんぞ」


「これは長引きそうね……」

 アリエラとしては良かれと思って魔剣の話を振ったのだが、予想外に食いつきが良すぎて困った事になってしまった。


 その後なんとかジークを説得して諦めさせた頃、ギルドから飛行手段や優れた遊泳能力を持った者たちが続々と駆けつけ、アリエラが『爆心地』の二つ名を与えられた理由を目の当たりする事となった。


 一方アリエラは行き過ぎた破壊行為について大叱責を喰らい、冒険者ギルドマスター・イベアスが何故『大叫竜』の二つ名で呼ばれているのかを身をもって体感する事となったのであった。



 ◇



「フィアラル君とリッキー君は遅刻して来て誰よりも早く帰るとは全くけしからんな…………(ブツブツ)」 

 

 アリエラの起こした噴火の後始末を終えた頃にはすっかり日も暮れ、特級会合の続きは夜から再開された。


「確か特権の授与がまだでしたわよね? マスター・イベアス。

 ワタクシは猫ちゃんや猫妖精(ケットシー)ちゃん絡みの依頼を──」

「──却下だアリエラ君。君の()()については聞き及んでいるからね……依頼人や職員に危害を加えかねないので却下。他の内容にしてくれ給え」


 イベアスはアリエラに反論を許さず早口で言い切った。


「んな゛っ…………では今日ワタクシがフィアラルから取り返したような黄金髑髏の情報を優先して渡して下さいますこと?」

「それなら問題あるまい……ではフィアラル君はいないからもう飛ばして──他の三名は?」


 イベアスはアリエラから視線を外し、クリーム(ジーク)ベル(ゼブブ)・レイメイに視線を遣る。


「ククク……我は竜狩りと魔剣に関する情報を所望する」

「ワタシは珍しい魔物の情報が欲しいですゾ❤︎」

「私は蛇の魔物の情報でお願いします」

 

「うむ……了解した。では皆他には何か連絡事項はあるかね? 特級案件の手伝いが欲しいとか──」 


 最後にイベアスが特級冒険者全員を見回しながら質問をすると、少し間を置いてアリエラが挙手した。


「──それでしたらワタクシから一つ……」

「な、なんだね……?」


 すっかりトラブルメーカーという印象のアリエラの挙手にイベアスは身構える。


「そちらのアナタ──……

 『闇篭りのウォトゥオス』さんだったかしら? アナタの身体を覆っているその呪いの拘束衣から解放して差し上げてよ」

 アリエラは話を聴いているのかいないのかイマイチ分からない態度のウォトゥオスに話しかける。


「ン゛!? ン〜ン!」

 突然話を振られて驚いた様子のウォトゥオスは呻きながら首を振り出した。


「グヘヘ! よかったなぁウォトゥオス! 解除できたら一緒に酒呑もうや!」

「そうじゃのう! せっかくなら──……? 何を首を横に振っとるんじゃ?」

「ウォトゥオスくんは呪いの装備を外す方法を探すために冒険者になったんじゃなかったかな? 妙だね……」


 呪いの装備から解放されるというのにそれを嫌がるような態度を取るウォトゥオスに全員の不審がる視線が集中した。


「ピチカ! 【全能鍵】を!」

「ん!」

 何かを感じ取ったアリエラは素早く立ち上がりピチカに短く指示を出し、ピチカは即座に【全能鍵】を装備させた。


「ふッ──……(パキャッ)!」

 アリエラが一足飛びでウォトゥオスに近付き、中身の顔を斬らないように【全能鍵】を振り下ろすと、軽い破砕音と共にウォトゥオスの鉄仮面が砕け散った。


「くッ……!」

 砕けた鉄仮面の下から現れたウォトゥオスの顔立ち自体は十人並の平凡な黒い短髪の人間の男のそれであった。

 ──しかし血色が異様に悪く、瞳は血のような赤、極め付けに口からは鋭い牙が覗いていた。


「……! アンタ吸血鬼(ヴァンパイア)だったのか!」

「アッシはてっきり宇宙人なのかと思ってやしたが……」

「俺は魔人なんだと思っていたが……」


 特級冒険者たちが各々予想していたウォトゥオスの中身と実際の正体を見比べて好き勝手に話しているのには構わず、当のウォトゥオスは身体を戦慄かせながらアリエラを睨んで口を開く。


「き、貴様──ッ!!

 何故このオレが冒険者として潜入していた『ゲダの指』が一柱『握食(あくじき)のウォトゥオス』であると分かった!?」

 

 正体を見破られたと観念し、名乗りを上げるウォトゥオスに対しアリエラは──


「そんな事知らないのだけれど……」

 単なる厚意で呪いの装備を破壊してやろうと思っていただけなので困惑していた。

◇『魔剣聖君ジーク』

“魔王軍最強の魔剣士”の称号を持つ四天王の一角。

魔王の魔術〈勝利の剣(ジークシュライデ)〉と〈竜血鎧(ジークフリート)〉の同時発動によって偶然自我が発生した動く鎧(リビングアーマー)

普段は形状と属性全てが異なる九振りの魔剣を背後に浮遊させ、王冠の様な角が生えた赤黒い竜を模した鎧に宿っている。

宿る鎧によって声質が変化する。

現在は『神竜剣のクリーム』という偽名で特級冒険者として活動している。


◇『蝿蛆元首バアル・ゼブブ』

“魔王軍最強の召喚士”の称号を持つ四天王の一角。

魔王の魔術〈嵐の王(バアル)〉と〈蝿の王(ベルゼブブ)〉の同時発動に加え、『暴食の魔王』の魂の一部を与えられた事によって群れを成す蝿が人格を形成するに至った存在。

吸血鬼の『蝶の真祖』と『蟲の真祖』を兼任している。

普段は蝶の翅と口吻のあるハエ蟲人の王侯貴族のような姿に擬態している。

現在は群れの一部を『付け火のベル』として活動させている。

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