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第四十四話 〈頂の雄鶏〉

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『爆心地のアリエラ』

好きなお菓子は猫を象った物だが、なかなか食べる決心がつけられない。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル『楽々御粧し』の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

一級冒険者。

今回は出番無し。

好きなお菓子はとにかく甘くてカラフルなやつ。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者としての二つ名は『毒蛇姫レイメイ』

今回は出番無し。

好きなお菓子は月餅。


◇フィアラル

金髪金瞳に黄金比の肉体美を持つ巨人の特級冒険者。

二つ名は『黄金のフィアラル』

〈太陽帝〉の触媒たる黄金髑髏を賭けてアリエラと試合をする事に。

魔王軍四天王『格闘覇王マスクド・ヴィゾフニル』の中の人だった。

好きなお菓子はカロリーバー。



 フィアラルは一瞬の内にアリエラの前へ降り立つと、防御の事など一切考慮しない手本通りの美しい所作で正拳突きの構えを取った。


──1秒経過──


(〈頂の雄鶏(ヴィゾフニル)〉──……

 魔王軍四天王『格闘覇王マスクド・ヴィゾフニル』のリングネームの元であり、魔王陛下直々にマスクド・ヴィゾフニルを勧誘する決め手となったという究極の体内魔力操作術──……!

 全身の魔力を一切のムラも揺らぎも無く完全制御する事により、ヴィゾフニル──ややこしいからフィアラルと呼びましょうか──フィアラルのあらゆる行動は最大の防御であり攻撃と化す……!)


──……(パァンッ)!!」

 今までとは打って変わって無言で放たれたフィアラルの正拳突きは当然の様に音速を超え、炸裂した空気と衝撃波が〈大地帝(ゲブ)〉の力で引き寄せられ発生した大波を粉砕し、足場として残っていた地盤を陥没させた。


──2秒経過──


「……〜ッ!!

 (掠ってすらいないのにこの威力……! 

 けれど〈頂の雄鶏(ヴィゾフニル)〉は無呼吸かつ持続時間は10秒足らず……!

 時間切れまで〈大地帝(ゲブ)〉を駆使して(ボコボゴッ)凌いでみせるわ!!)」


 アリエラは衝撃波によって左耳から出血しつつも、フィアラルの身体から強制排出された魔力球を再び自らの体内に収め、周囲に飛び散る岩石や海水を引き寄せ圧縮し、各部関節や背中から激しく蒸気を発する鎧へと加工して全身に纏った。


 その際引き寄せられた多数の岩石がフィアラルの背中や後頭部に激突したが、当のフィアラルは意に介さず腰を落として逆水平チョップの構えを取り、激突した岩石の方が粉々に砕け散りアリエラの鎧に吸収されて行く。


──3秒経過──


────…………(ヒュッ……パァンッ)ッ!!」


 それはフィアラルの逆水平が音速を超えた音なのか、それとも防御したアリエラの右前腕が“くの字型”に折られた音なのか定かでは無いが、炸裂音と共に鮮血と骨の一部が皮膚を突き破った。


「くっ──……(ゴキッメキメキ)!」

 アリエラは後退りしながら瞬時に右前腕を引っ張り、易々と砕かれた右手甲をギプス代わりに再構築し、右前腕の骨折を無理矢理固定した。


──4秒経過──


(このワタクシが時間稼ぎに徹さざるを得ないなんて……〈暗澹帝(アポピス)〉の黄金髑髏さえあればあるいは──“たられば”の話をするだなんてワタクシとした事が(ゴッバキバギバキッ)……!)


 アリエラは後ろに倒れ込み、同時に引力場の範囲を鎧の周囲数cmに限定する代わりに引力を極端に高め、足場の岩盤を次々と鎧に吸収しながら削り地下深くに落ちて行く。

 岩盤には人型の穴が穿たれた。


(逃げて時間稼ぎか? 策が有るんだろうが……らしくもない事を……(バキバキッ)!)

 フィアラルはすぐさまアリエラの空けた穴をこじ開けながら岩盤の中を泳ぐように追いかける。


──5秒経過──


(このままでは追いつかれるわね……早く()()()に辿り着かなくては……!)

 凄まじい速さで岩盤を潜行して追いかけてくるフィアラルの気配を察知し、アリエラは自身に本来かかっている引力を強めて高速で岩盤を削って更に地下深くに潜って行く。


(このまま潜り続けて冥府にでも逃げるつもりかよ? させるか──……(ピシッゴポゴボッ)なんだ?)


(……見つけた!!)

 追いかけるフィアラルが何か亀裂の走るような音と液体の煮えたぎるような音を聞いた直後、地上の光が届かない地下深くだというのに二人の魔力とは別の光源が灼熱と共に姿を現した。


 地下に圧縮され眠っていたマグマ溜まりである。


──6秒経過──


────…………(ドゴォオ゛オオッ!!)〜ッ!?

 噴火!? 地上……どころかまた上空か?)

 

 真っ赤な閃光と巨竜の怒号の如き轟音が響いた次の瞬間、フィアラルは熔岩と噴煙の激流に揉まれながら再び上空に打ち上げられていた。


 いくら〈頂の雄鶏(ヴィゾフニル)〉発動中で一切のダメージは無いとはいえ、さすがにしがみ付く物も無い空中では〈大地帝(ゲブ)〉に引き寄せられ勢いを増した噴火の威力には抵抗できなかった。


──7秒経過──


 アリエラも噴火の勢いに乗り上空に打ち上げられていたが、フィアラルから距離を取るべく自身への引力を強めて高速で地上に落下していた


(あと数秒で〈頂の雄鶏(ヴィゾフニル)〉が維持できなくなるハズ──)

(──とか思ってんだろ? )


──……(ザパァアア!!)!?」

(もう何秒も要らねぇよ! 地上に降りたいなら手伝ってやるぜ!!)


 天を衝く熔岩柱の内部を美しいフォームのバタフライで泳いで降りてきたフィアラルが勢いのまま飛び出し、空を蹴って加速しアリエラを殴り岩盤に叩き付けた。


──8秒経過──

 

「くッ……!」

 すぐさま立ち上がるアリエラだったが、頭上には垂直飛び蹴りで落下してくるフィアラルが迫っていた。


 咄嗟に上を向いて両腕を交差して防御姿勢を取ったアリエラは少し前の事を思い出していた。



 ◇



 ウーヴ皇国・西都イーシン──……

 『西方公ワン・ソンミン』の暗殺に成功し、キョンシー化させたソンミンから〈麒麟震天脚〉の指南を受けていた時の事……。


「ねえ、そろそろ〈麒麟震天脚〉の極意を教えて頂戴」

「極意だとォ……? テメッ……オレ様を嘗めてんのか?

 せめて年単位で修行積んでからほざけやァ!!」


 いくらスジがいいとはいえ、僅か数日の修行で極意に至ろうとするアリエラにソンミンは怒りを露わにした。


「落ち着きなさい……なにも習得までしようと思う程思い上がってはいなくてよ。

 やり方や心構えを知っていれば旅先でも修行に活かせるでしょう?」

「フン……まあアンタならやり方知ってりゃぶっつけ本番でもやれそうではあるがな……。

 オレ様よりもソンフゥの兄貴の方が得意なんだが……まず相手の攻撃を──……」



 ◇



(まず相手の攻撃を受け止めて……(メキッ)

 落下して来るフィアラルの蹴りがめり込み、交差したアリエラの両腕がひしゃげ始める。


(身体全体に衝撃を散らし、散らした衝撃と意識と氣を丹田に集中!)

 ソンミンの言葉を脳内で復唱しながら実行するが、流石に衝撃を散らし切れず両腕は完全に砕かれた。


(脚を上げず体重移動だけで〈麒麟震天脚〉を放ち、地面に衝撃を……押し付けるッ!!(バギッ!!)


 普段は地面を揺らすだけの〈麒麟震天脚〉が地面を豪快に粉砕し、熔岩が粉砕された岩や灰を巻き上げてフィアラルの視界を覆った。


──9秒経過──


(防がれただと!? そろそろ息が限界だ!!

 どこへ行きやがった!? 熔岩は〈頂の雄鶏(ヴィゾフニル)〉が切れたら火傷くらいはするだろうが問題無い……しかしアリエラに不意打ちされるのはマズい……!)


 〈頂の雄鶏(ヴィゾフニル)〉の効果でフィアラルの動体視力も極限まで跳ね上がっているとはいえ、透視ができるようになるワケでは無く、溶岩や粉塵によって一瞬アリエラを見失っていた。


 フィアラルが全力で眼球を動かして周囲を探ると、視界の端の噴き上がる熔岩の向こうに人型の影を見た。


(──! そこッ!!(バキャッ)

 フィアラルは一も二もなく影の胴体を貫手で撃ち抜く。


「(仕止め──……ッ!! ()()()()()……!)

 ──ッ……ブハァッ!! ハァッ……ハッ──……(ズンッ!)ぎぃえぇ エ エ!?」


 確かにフィアラルの貫手はアリエラの岩鎧を撃ち抜いたが、撃ち抜いたのは岩鎧のみであり中にアリエラは入っていなかった。

 度々意表をつかれたフィアラルの集中は遂に乱れ切り、息を吐き出して無敵の身体強化〈頂の雄鶏(ヴィゾフニル)〉は終了。 

 岩鎧の中にアリエラの代わりとして入っていた〈大地帝(ゲブ)〉の魔力球に引き寄せられ地面に磔にされた。


「クソォオオッ──……(しゅるっ……キュッ)があ゛ッ……かハッ」

「〈頂の雄鶏(ヴィゾフニル)〉が切れたなら……勝負アリね」


 腹這いに倒れるフィアラルの首の上に立ったアリエラは、その体格に対してやや太く長い尻尾をフィアラルの首に巻き付けて引っ張り、意識を刈り取りにかかる。


「無茶しないの。死んでしまったら怒られるのはワタクシなのよ?」

(無茶しねぇで“四天王最強”の座が獲れるかってんだよ……! 見てろよ……今このチンケな引力から抜 け出 し て────……(ドサッ)


 抵抗虚しくフィアラルの意識は闇に呑まれた。

◇『格闘覇王マスクド・ヴィゾフニル』

“魔王軍最強の格闘士”の称号をもつ魔王軍四天王の一角。

本名は『フィアラル』。

普段は4mを超える巨躯の全身に闘技大会のチャンピオンベルトや金メダルを素肌が見えなくなる程に身につけ、頭には黄金の鳥の覆面と八本のアーチを持つ立派な王冠を被った姿をしているが、素顔は絶世の美丈夫である。

鳥の覆面は鶏を象っており、かつて魔王と対峙した際、戦術的な意味も無く後退りをしてしまった自分を“臆病者”と戒めるために被り始めた。

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