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第三十四話 王に至る傷

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者。

猫やケットシーのゴーレムを見かけるとあれこれ細かい修正点を指摘する。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル『楽々御粧し』の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

二級冒険者。

訳あって女神関連の偶像にはあまり近寄ろうとしない。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者。

ヘビ型ゴーレムはあまり販売されておらず残念がっている。


◇カメリア

中性的な顔立ちで金髪ポニーテールに緑基調の騎士装束のデュラハン(エルフ)の特級冒険者。享年224歳。

二つ名は『首愛でるカメリア』

自らのスタイルに絶対の自信があり、様々な美女や美少女の顔写真との合成写真を作成するのが趣味。

実寸大の美女の頭部を模った像を扱う店をよく訪れている。


◇ダチュラ

カメリアの愛馬で白い首無し馬。メス。

周囲の会話内容は結構理解している。

実際に走る小さなウマ型ゴーレムがお気に入り。




 ◇



「うわぁああああ!!」「うえっ……」

「キャアアア!!」「ヒィィ……!」


 爆発音と共に血肉が飛び散る光景に南ロディア島への大橋付近に集まっていた群衆は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。


(侮っていたつもりは無かったが……!)(ここまでとは……!)

 貴種(ハイ)妖巨人(トロール)のロアム・トアゾは勝負を挑んできたアリエラの”爆撃を伴う拳“によって腹部から大量の血肉を撒き散らし倒れ込む。


「うぁ……痛そー……」

「再生能力持ちが相手だからってやり過ぎだよアリエラくん」

「ブルルルッ……」

(破壊しているのが相手の身体だけとは……アリエラさん手加減が上手くなってきましたね)


 同行している面子はそれぞれ違った反応を見せたが、特に驚いた様子は無い。


「ワタクシの勝ち────…………ジュル……ゴボゴボゴポォッ……でよろしくて?」

 勝利を宣言しようとしたアリエラだったが、その間にもロアム・トアゾの身体が乾いたスポンジに水が染み込むように近くの血肉を吸収し、あっという間に傷を完治させる様を見て一応尋ねた。


「ああ。認めよう……我らの敗けだ」「財宝は持って行け」

 ロアム・トアゾは一切ゴネる事もなく財宝を詰め込んだ袋を掴んで差し出したが、アリエラはそれを手で制した。


「……全部ではなくて()()()()でよくてよ」

「……?」「どういう事だ?」


「アナタたち……王種(キング)妖巨人(トロール)を目指しているのでしょう?

 少しルールを変更して……一勝負につき財宝一つずつを賭けない?

 ……財宝が尽きるまではこの『特級冒険者アリエラ』が協力してあげてよくてよ?

 新たな王の誕生に立ち会わせて頂戴」


「「おお……! 有難い……!! よろしく頼むッ!!!」」 

 アリエラの提案に一瞬目を丸くしたロアム・トアゾは力強く返答した。



 ◇



「戦闘用動像(ゴーレム)の実験場だ」「ここなら周囲を気にせずに闘えるだろう」


 ロアム・トアゾの案内で一行は島の東側にある海沿いの丘陵地に到着した。

 戦闘用ゴーレムの実験場というだけあって、周囲には不自然な抉れ方をした地面や砕けた岩や人工物のような物が散見される。


「そうね。では始める前にさっきの勝利分の財宝を一つ頂けるかしら」

 周囲に自分たち以外の気配が無い事を確認したアリエラはロアム・トアゾの担ぐ大袋を指差した。


「そうだな。では……この魔剣はどうだ?」「柄が変だが、なかなかの業物だと思うぞ」


 そう言うとロアム・トアゾは魔術で内部が異空間化しているであろう大袋から刃渡り2m近い巨大な曲剣を取り出した。

 その蒼い結晶のような物で出来た剣身も目を引くが、特に通常の曲剣とは異なるのは柄頭から左右に突き出た持ち手ような部分によってT字型になっている柄である。


「ん……? あー!! その剣あーしが昔持ってたヤツだー! なつかし〜☆」

 大袋から取り出された曲剣を見るなりピチカが大声ではしゃぎ始めた。


「ピチカ 貴女剣士だったの?」

「ピチカくんが使うには大きすぎないかい?」

「そもそもちゃんと握れるんですか?」


 身の丈よりも大きな曲剣がピチカの所持品であった事に疑問を抱いた一同は、ピチカに次々と質問をぶつけ始める。


「ムッ! 剣士じゃないけどちゃんと使えるし! ちょっと曲剣(それ)貸して!」

 ピチカは実力を疑われたと感じたのか──実際は女面鷲(ハーピィ)の翼腕で剣を扱えるのかと疑問を呈されただけだが──ムキになってロアム・トアゾに曲剣を渡すよう迫った。


「貸すも何も……勝負の代価として供するつもりで出したのだぞ」「元の持ち主だと言うのなら尚更お前が持っておくといい……構わないか?」

 ロアム・トアゾは曲剣の柄頭をピチカに差し出しながら、本来渡す予定だったアリエラに一応の確認を取る。


「構わなくてよ。前からピチカは大型の魔物に対する攻撃力に欠けていると思っていたから良い戦力補強になるわ。

 ……それで? その曲剣はどうやって使うのかしら」

 

「ギャヒヒヒヒ……それはねぇ〜……とうっ!」

 ピチカはわざとらしく笑うと、曲剣の柄頭から左右に突き出した部分をその大きな()()()()()()飛び上がり──……


「こーやって脚でつかんでぶら下げて飛び回って斬りつけるんだよー☆」

 

2mもある刃をぶら下げて上空を旋回し始めた。 


「脚で掴むための突起だったのか……」「我々の身体で試し斬りするか?」

 自分たちの身体に十分な傷を与えられるであろう大きな業物が本来の持ち主の元に戻った事でロアム・トアゾは期待の籠った眼差しをピチカに向けた。


「いーね☆ でもこの剣って不意打ち用だから一旦その辺飛び回って──……あ! 組合(ギルド)で昇級査定受けるの忘れてたから、受けた帰りに不意打ちしに戻ってくるねー!!」

 ピチカは一気に喋ると曲剣をぶら下げたまま冒険者ギルドのある方向へ飛び去って行った。


「刃物ぶら下げたまま街中を飛ぶのは危ないんじゃあないかな……」

「ギルドから叱られそうですね……」

「ピチカの技前は後のお楽しみとして……早速始めましょうか」

 

 飛び去るピチカを見送るとアリエラはロアム・トアゾに向き直り、赫い魔力を全身から滾らせて構える。


「うむッ!!」「行くぞッ!!」

 短く返事をしたロアム・トアゾは猛然と襲いかかり蹴りを放ったが──


「──ふッ!!」

 蹴りに対して一歩踏み込んだアリエラは肘鉄をロアム・トアゾの脛にめり込ませ脛骨を砕き、肘先から魔力を放ち脚を爆破した。


「がぁああ゛あ゛ッ!?」「()ッ……ぬ゛ぅおおお!! ──……(ボグジュッ)どこだ!?」

 いくら再生するとはいえ痛みを感じないわけではないため、脛を爆破された痛みで一瞬動きが鈍ったロアム・トアゾだったがなんとか両腕を振り下ろそうとした時には視界からアリエラの姿は消えていた。


「ワタクシは背後(こっち)よ。

 ──レイメイとカメリアも試してみる?」

 アリエラは背後に回っており、全身に付着した血を焼き飛ばしながらロアム・トアゾの()()()()()()()()越しにレイメイとカメリアに話しかける。


「かッ……!?」「い、い゛つの間に゛っ……」

 傷を自覚すると同時にロアム・トアゾは自分の血と臓物の海へ仰向けに倒れ、アリエラを地面から見上げた。


「へぇ……不意打ちだと再生が少し遅くなるみたいですね……」 

「うーん……ボクは首を増やすんじゃなくて首を無くすのが専門だからなァ……」


 凄惨な光景には似つかわしくない緩い語気で三人が会話をしている内にもロアム・トアゾは血肉を吸収して身体を再生して起き上がる。


「ぬぅ……早速二敗目かッ!」「だが頭は増えず……か。もう一戦だッ!」



 ◇



「再生力が落ちてきたようね……」


 その後のロアム・トアゾに対するアリエラの攻撃は苛烈を極めた。

 単純な殴打はもちろん、引き裂き・切り裂き・爆破などアリエラの思い付く範囲の様々な方法でほぼ一方的にロアム・トアゾを蹂躙した。

 旅に出てからというもの手加減を強制される場面が多く久しぶりに遠慮なく攻撃できる相手であるという事、歴史上数名しか到達した者がいないキングトロールの誕生に立ち会えるかもしれないという期待がアリエラの暴力性の(たが)を外しかけていたのだ。


「ぬ゛うぅ……ここまでやっても……」「やはり我らには到底無理──(バチッ……)──……(ドブチュッ!!)〜!?」

 左頭のトアゾが諦めの言葉を口にしかけたその時、アリエラの手先とトアゾの頬を赫い雷が繋ぎ、刹那アリエラの裏拳がトアゾの顔面を打ち抜いた。


「何をする!?」「あガがッ……ゴボッ……」

 今までのアリエラは苛烈な攻撃こそしてくるものの、重傷を負って身体を再生している最中に追撃してくる事は無かったため、油断していたところを攻撃されたトアゾは何が起きたか理解するのに手間取っているようだ。


「弱音なんて聞きたく無くてよ。

 キングトロールに変異する正確な条件は知らないけれどね……皆常軌を逸した不屈の精神の持ち主だったのではないかとワタクシは思うわ」


「常軌を逸した不屈の精神……つまり狂気か」「しかし我らは死ぬ訳にも狂気に飲まれる訳にもいかんのだ……」

 遅れながらも身体の再生を終えたロアム・トアゾは単なる上昇志向だけでは無い──使命感のようなものを秘めた面持ちで拳を握り締める。


「キングを目指すのは“強くなりたいから”以外にも何か理由がありそうね……休憩がてら聴かせて頂戴。

 ついでに腹拵えもしましょ。巨人牛(ミノタウロス)の肉は平気?」


 そう言うとアリエラは黄金石棺から取り出した黄金髑髏を被り〈葬送帝(アヌビス)〉を発動。影の沼からイース島で大量に保存したミノタウロスの肉を取り出した。


「あまり好きではないが……」「再生力も落ちてきた事だしな……頂こう」

 

「あ、それじゃあ私が調理するんで……ついでにご相伴に預からせて貰っていいですか?」

「任せるわ」

「あっ……ボクはダチュラをその辺走らせてくるから勝手にどっか行かないでね!」


 ダチュラに乗って走り去るカメリアを見送ると、アリエラは火を熾し、レイメイは黄金石棺から調味料と巨大な調理台や器具を取り出して“ミノタウロスの肉の香辛水煮”を手際良く調理し始める。

 

「ほォ……なかなか本格的な……ん?」「お、おい……それは適量なのか!?」

 調味料を惜しみなく使うレイメイを見て感心していたロアム・トアゾだったが、想像を遥かに超える量の蕃椒(レッドペッパー)が投入されドス赤く染まる水煮を見て慄いた。


「適量の範囲内ですよ。こういうのは入れ過ぎなくらいが丁度良いんですから」

「……口から火が出そうね」 


「アリエラさんはいつもそうでしょ……さあ出来ましたよ。箸使えますか?」

 レイメイは香辛水煮を調理台の上に置くと、巨人サイズの箸をロアム・トアゾに差し出す。


「ああ。問題無い。頂こう! ……がァッ!?」「では食べるのはロアムに任せて我が話そう」

 右頭(ロアム)が香辛水煮の辛さに悲鳴を上げているのを尻目に、左頭(トアゾ)がキングトロールを目指す理由を話し始めた。


「あまり言いたくは無いが……我々トロールは基本的に頭が良くない……!

 他種族の都合の良いように利用される者やハイトロールに頼り切りで自分で考えるという事を放棄する者のなんと多い事か……!」

 トアゾは悔し気に表情を歪めた。


「うーん……なんと言っていいか困りますね……」

「トロールに限らず上位種や力の強い者に従いたがる気質の種族は多いけれどね……」


「そう! それだッ! だからこそ我らがキングトロールとなって同胞を導き、学びを与え“トロールは生命力だけが取り柄の愚鈍な種族”という風潮を払拭したいのだッ!!」

 トアゾは拳を握り締めながら種族の命運を左右する大望を語る。


「良い志ね。応援するわ」

「私も良いと思います。よし……休憩が終わったら私も参戦しましょう」


 “代表者が種族全体を取り纏めてくれると魔王軍としては傘下に取り込みやすい”……という思惑もあったが、自らの種族の繁栄に尽くそうとする姿勢にアリエラとレイメイは素直に感心した。


「がァっ辛ッ……馳走になった」「よしッ食べ終えたな。再開しよう」

 食事を終え、早速闘いを再開しようと立ち上がったロアム・トアゾだったが、アリエラは手をかざして制止した。


「再開する前に……このまま闇雲に貴方たちの身体を傷付けても無駄に体力を消耗するだけだと思うのよね。

 だから貴方たちが普通のトロールからハイトロールに変異した時の状況を教えて頂戴」

「再現性がある方法なら試してみると良いかもしれませんね」


「なるほど……では今度はトアゾに代わってこのロアムが話そう。

 つい最近の話だが、別の島で橋を占拠していた時の事──……金色の髪と瞳をした『フィアラル』と名乗る巨人の男が現れたのだ」


「……! 『黄金のフィアラル』……!?」

 現在探している人物の名前にアリエラは強い興味を示した。


「ああ。現在では特級冒険者だそうだな。

 それでまあ勝負をした──……いや闘いになっていなかったな……恥ずかしい話だがヤツの舞う様な美しい動きに見とれているといつの間にか頭を左右に両断され、海に放り込まれ……必死で陸に這い上がると頭が二つになっていたのだ。

 今にして思えば恐らく頭を蹴り上げられたのだと思うのだが……」


「その話を参考にすると……もしかして意識外からの攻撃が重要なのかしらね」

「それなら私の本領ですよアリエラさん。

 二人がかりで死角から攻めてみましょう」


 レイメイもかなりやる気を出し始め、魔力を滾らせるアリエラとは対照的に視界に入れていなければすぐに見失ってしまいそうな程に気配を鎮めて構える。


「腹が満ちたらなんだかイケそうな気がしてきたな!」「ああ! 我らは今から王となり同胞たちを導──……(ヒュッ……)く……?」


 決意を新たに両手を広げて構えようとしたその瞬間、右頭(ロアム)左頭(トアゾ)の間を風切り音と共に()()()()が矢のような速度で通り過ぎる。


「イェーイ☆ 不意打ち大成功〜☆」


 それは大曲剣を脚にぶら下げて高速飛行して来たピチカであった。

 大曲剣の剣身には僅かに血が着いている。


「あっ──……(プシュッ……)?」「ガッ──……(ドチャッ……)!?」

 通り過ぎたピチカの大曲剣で胴体を縦に裂かれたロアム・トアゾは一拍遅れて血を噴出させながら膝を折り倒れ伏した。


「ギャヒィッ……深く斬りすぎちゃった? 大丈夫……?」

 想定よりも大量の血にたじろいだピチカが大曲剣を地面に突き刺してロアム・トアゾに駆け寄る。


「良い斬れ味の魔剣ね……ジークが欲しがりそうだわ」

 アリエラはピチカの大曲剣を品定めしながらロアム・トアゾの再生を待つ事にした。


「ちょっ……聞かれたらどうするんですか。その名前出すのやめ──「「「グ ォ オ お゛ お お オ ォ ッ !!!」」」──様子が変ですね……?」


 レイメイが他の四天王の名前を出すアリエラを嗜めていると、ロアム・トアゾの方から同時に()()()()()()が響く。


「アーちゃん! メイメイ! 見て見て!」


 翼腕で指差す先には右頭(ロアム)左頭(トアゾ)の間のピチカが付けた傷口が再生と共に泡立ち、“大きな鷲鼻”の様なものが生え出し、みるみる内に盛り上がって両目・両耳・荒々しい赤髪が生え三つ頭を持つトロールに変異した。


「「「ハァッ……ハァ……視界が、感覚が、()()()()……!!!」」」


「おぉ〜……! オメデトー☆ キング爆誕ッ!!」

「なによりだわ……おめでとう……」

「そうですね……おめでとうございます……」


 自分たちでキングに変異させたかったのか、アリエラとレイメイは祝福したいような悔しいような微妙な気分になった。

 

「おお……! ついに至ったのか!」「力が漲る……! お前はどうだ? 新たな我……『ムト』よ!」

 今までロアム・トアゾと名乗っていた左右の頭が新たに生えてきた中央の頭……『ムト』に話しかけた。


「ああ……! 素晴らしいッ……!!

 協力に心から感謝するぞアリエラ殿にレイメイ殿、そして『風の聖女ガブ──「わ゛ ー  ッ  !  !」──な、なんだ?」


 感謝を述べるムトが本名を肩書き付きで言いかけたのをピチカは大声でかき消した。


本名呼ばないで……!(ヒソヒソ)

お忍びか? (ヒソ)すまない……。(ヒソ)

 まあとにかく感謝する! おかげで同胞たちを導けるぞ!!」


「……? まあとにかく良かったわね。

 それでピチカは昇級したのかしら」

 アリエラはピチカの様子を訝しんだが、結局深く考える事はせず、冒険者ベルトを装備していないピチカの査定結果を尋ねる。


「おっ! よく聞いてくれました!!

 デケデケデケデケ(※ドラムロール)……ジャーン! 一級冒険者に昇級しましたァー!! ヒューッ! ドンドンパフパフー!!」

 異様にテンションの上がったピチカは一級の証である青ベルトを神業(チートスキル)楽々御粧し(ドレスアッパー)】で瞬間装備して見せた。

 

「あらっ……じゃあ新たな王の誕生とピチカの昇級祝いにドラゴン肉でも料理しようかしら」

「マジ!? やったー☆」

「調理道具はまだ片付けてないですし、早速始めましょうか」


「「「激辛は勘弁してくれ!!!」」」

 ロアム・トアゾ改め、『ロア・ムト・アゾ』は現在もヒリヒリしている右頭(ロア)の舌に危機感を覚え、激辛料理を拒否した。


「そーだそーだ! メイメイの料理美味しいけど辛すぎるって!」

「えぇ〜……」

「ワタクシは嫌いではないけれど……今日は主賓の意見を尊重しましょ?」


「しょうがないですね……」


 その後、渋々了承したレイメイ主導でドラゴン肉料理が振舞われ、ささやかながら豪勢な誕生・昇級祝いが開催された。

◇ロア・ムト・アゾ

新たなキングトロールとなった男。145歳。

他種族や上位種の都合のいいように扱われがちな同族たちに危機感を抱いており、種族全体に教育の機会を与えたいと思っている。

頭が増えてから“満腹なのに口はまだ食べたい”状態が頻発して困っている。

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