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第三十二話 ミノタウロス四天王

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

『殲滅女帝』の二つ名を持つ。

褐色肌にボブカットの黒髪、猫のような紅い瞳、獅子の耳と尻尾が特徴の獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者。

ミノタウロスは特に抵抗無く食べられる。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル『楽々御粧し』の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

二級冒険者。

ミノタウロスは気分的に食べたくない。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者。レイメイ(首無し)とレイメイ(蛇)に分離中。

ミノタウロスは角が邪魔で丸呑みしにくい点を除けば悪くないと思っている。


◇カメリア

中性的な顔立ちで金髪ポニーテールに緑基調の騎士装束のデュラハン(エルフ)の特級冒険者。享年224歳。

二つ名は『首愛でるカメリア』

自らのスタイルに絶対の自信があり、様々な美女や美少女の顔写真との合成写真を作成するのが趣味。

ミノタウロスは出来れば食べたくない。


◇ダチュラ

カメリアの愛馬で白い首無し馬。メス。

周囲の会話内容は結構理解している。

ミノタウロスがどうの以前に草食である。


◇ウストクヴ

質素な革鎧を身に付けたサイクロプスの特級冒険者の男。

二つ名は『辻研ぎウストクヴ』

無駄な飾り気の無い武器を好む。

ミノタウロスは自分で斃した分は食べる(ゾンビは除く)。


◇アクオグ

身の丈程もある角飾りの付いた兜に各所に、『地の女神』のレリーフが施された黄金鎧を身に付けたドワーフの特級冒険者の男。

二つ名は『竜斬りアクオグ』

とにかく派手な武器を好む。

ミノタウロスは良い部位ならなんとか食べられる。



 ◇



「お? なんか来た!!」


 特級案件『イース島 巨人牛(ミノタウロス)駆除』を五手に別れて取りかかる事となり、レイメイ(首無し)を掴んで南の海沿いを飛んでいたピチカは正面から二足歩行の何かが走って来るのを目視した。

 

「モ゛ッ、オ゛ッ、ブオ゛ッ、ブモッ」

 識別名『巨人牛の(ミノタウロス)疾駆者(ランナー)』──……

 魔物化によって通常のミノタウロスよりも圧倒的に引き締まった細身の肉体に凝縮された筋骨格を躍動させ、走りの邪魔にならないように極短い石斧を両手に掴み、数多の冒険者を翻弄し屠ってきたミノタウロス四天王の魁である。


「わ〜お☆ 足速ーい!!」

 ──しかし、飛行しているため地形に左右されない上、飛行する種族の中でもかなりの速さを誇る女面鷲(ハーピィ)であるピチカには追い付けなかった。


「モ゛ッ……オオオオォォォオ゛!!!」 

 その俊足でのし上がってきた『巨人牛の(ミノタウロス)疾駆者(ランナー)』は、全力というわけでも無さそうに自分を上回る速度で……しかもレイメイ(首無し)を引っ提げて飛び回るピチカの存在を許容できず全身に血管を浮き上がらせて追いかける。


「やばー……あーしまだ攻撃してないのになんかガチギレじゃ〜ん……どーしよ……メイメイボディはやれそう?」

 ミノタウロスに致命傷を与える程の攻撃手段を現状持たないピチカは、腹に貼り付けた呪符を通じて尋ねると──……


「……!」     

レイメイ(首無し)は親指立て(サムズアップ)で答えた。


「OK? んじゃGO! メイメイボディー!!」

 ピチカは首無し状態とはいえ『魔王の右腕』を名乗る実力を信じ、迷い無くレイメイ(首無し)をミノタウロスランナーに向けて放り投げる。


「ム゛ゥッ!? オォオオ゛ッ!!」

 今まで逃げに徹していた鳥のような生物が突如人間の首無し死体を放り投げて反撃してきたと思い、ランナーは死体を斧で軽く切り払って追走を続けようとしたが──……


「……!」

レイメイ(首無し)は空中で身を捻って斧を躱し、ランナーの腕や身体を足場にして背後に跳び上がると両手を勢いよく引いた。


「ム゛ッ──オ゛ッ……?」

 一瞬、視界に無数の輝く何かを見た気がしたランナーはそれがレイメイ(首無し)の袖口から展開され巻き付いた輝鋼銀(ミスリル)の糸であると理解する事無く、自慢の俊足にて自らの身体をコマ切れにしてしまった。


「ギャヒィッ……サイコロステーキ……」

 てっきり毒か爪による吸血で仕止めるのだろうと思っていたピチカは、想像以上に飛び散る血肉に慄く。 


……(ビチャ)! ……(ベチャッ)!! …………(ドブチャッ)!!!」

 レイメイ(首無し)は付着した血や脂を振り払って糸を袖に収納し終えると、小さく脈動するランナーの血肉片の海に伸縮する両手を叩き付け始める。

 乱雑に見えて血の一滴もその白い長袍(チャンパオ)には飛び散らないように且つ丹念に何かを探すように肉片を細かく砕く。


「わ゛ああ゛あ゛あ゛!? ちょメイメイボディなにやってんの!!」

 散ってくる血飛沫を避けながらピチカが止めようとするとレイメイ(首無し)は血肉の海から歪な拳大の青い宝石のような物体──魔石を引き抜いて見せた。


「あー魔石探してたんだ〜……」

「……!」


 ピチカに見せ終えるとそのままレイメイ(首無し)は青い魔石を握り砕く。

 すると僅かに脈動していたランナーの血肉の海は完全に沈黙し、死を迎えた。


「今のヤツが識別名付き(ネームド)ってのだったってコトかな? メイメイボディお手柄じゃーん☆」


 その後ランナーの手下たちも遅れてやって来たが、ピチカが揺動しつつ隙を見ては目を潰し、レイメイ(首無し)は爪による吸血や毒を駆使してミノタウロスたちを全滅させたのであった。


──……(ズン……ズズン……!)……!」

 全てのミノタウロスの血を爪から吸い終える頃、レイメイ(首無し)は島の中心部から断続的な揺れが起こるのを感知した。



 ◇

 


「──む……! 〈屠絲魘縛(としえんばく)〉ッ!!」

「うおっ……急に叫んでどうしたんだい? レイメイくん」


 レイメイ(蛇)が急に謎の言葉を叫んだため、ダチュラに騎乗し並んで宙を駆けていたカメリアは驚いた。


「あ……すみません。私の身体の方が技を使ったみたいなのでつい……どうやら識別名付き(ネームド)を斃したみたいですよ」

「ああ……技名かぁ。

 レイメイくんって技名叫ぶタイプなんだ──……っとボクたちの方もお出ましみたいだね」


 会話を中断し処刑剣を鞘から抜いたカメリアの視界の端には、白い毛並み・血のような紅い目・血色の悪い地肌をした個体を先頭に駆けてくるミノタウロスの集団が映った。


「先頭のヤツが識別名付き(ネームド)かな? とりあえず首を刎ねてみようか。

 ダチュラ! ハイヨーッ!!」

「ヒヒィイイイン!!」

「では私は胴体を丸呑みにでも……」 


「──ふッ!!」

 カメリアがダチュラを疾駆けさせると同時に霊体化し、黒い靄のような魔力を処刑剣に纏わせて横一閃に振り抜くと、刃から放たれた黒い魔力がミノタウロスたちの首を通過しながら飛んで行く。

 

「オ゛ッ……!?」

 声を上げる事ができた先頭の白いミノタウロス以外は皆無言で首と胴が泣き別れとなり、切断面から盛大に血を噴き出して絶命した。


「うん。綺麗に刎ねられた──……おや?」

「……やっぱり識別名付き(ネームド)ですね」


モォオオ゛オ゛ッ!!(ボコボコボゴッ)

 カメリアが自らの技前にて吹き上がった血飛沫を満足気に眺めていると、先頭にいた白いミノタウロスの身体は起き上がり頸部断面の血肉が不快な音を立てて泡立ち、あっという間に頭部を再生させて雄叫びを上げた。


 識別名『不滅の(イモータル)巨人牛(ミノタウロス)』──……

 理由は不明だが吸血鬼(ヴァンパイア)(もど)きと化し、驚異的な肉体再生能力・筋力強化・吸血による肉体活性能力を獲得した事により、数多の冒険者を屠ってきたミノタウロス四天王で最も凶暴な個体である。


 ──しかし、再生力や筋力強化が脅威となるのは通常のミノタウロスに苦戦するような冒険者にとっての話であり、現在対峙しているカメリアとレイメイ(蛇)はそれに当てはまらない。


 頭部を再生したばかりのイモータルの眼前には、宙を文字通り蛇行するレイメイ(蛇)が矢のような速度で迫り──


「〈呑龍(どんりゅう)(くちなわ)〉ッ!!」

技名の発声と共に真っ赤な口腔を曝け出しイモータルを頭からするりと丸呑みにしてしまった。


「ブモォッ……!? モ゛ォオオ゛……ォ……」

 レイメイ(蛇)の食道による強烈な締め付けでイモータルは身じろぎ一つ許されず胃腸まで運ばれ、自慢の再生能力を上回る早さで消化されレイメイ(蛇)の養分となった。


「ム……味はイマイチですね」

「味とか分かるのかい? 丸呑みだったけど……」


「正確には匂いと喉ごしで──……(ド ズ ン !!)おっと……アリエラさんですね……」

 響いてきた大きな衝撃音に会話を遮られたレイメイ(蛇)は島の中心部に視線を遣る。

 

「派手にやってるみたいだね……ボクらも加勢しに行こうか」

「いや……巻き添えは嫌なので私は身体とピチカさんを回収に行きます。カメリアさんも退いた方が良いと思いますよ……」


「ふむ……じゃあボクは北側(あっち)の方に行った鍛冶師コンビの様子でも見てこようかな」


 そう言うとカメリアは北へ、レイメイ(蛇)は南へ向かって移動を開始した。



 ◇



「この激しい衝撃……アリエラが起こしているのか……? とんでもないな……」

 島の北側から中心部に向かっているウストクヴは地揺れに足をとられないよう注意を払いながら走っていた。


 しばらく走り続けるとウストクヴの単眼がゾロゾロと歩くミノタウロスの集団を捉えた。

 ……が向こうからもウストクヴは見えているだろう距離になっても走る気配が無く、ミノタウロスの集団は呻き声を上げよろめき、腐臭を放ちながら歩いてくる。


生ける屍(ゾンビ)か……嫌なのに当たったな……」 


「オ゛ォオ゛オー!!」「ア゛ァ〜!!」

「ボォオ゛オ゛……!」「ム゛ゥ……!!」

 鼻を突く腐臭に顔を顰めながらウストクヴが大斧を振りかぶると、生前の本能が刺激されたのかミノタウロスゾンビたちは斧を求めて一斉に駆け出した。


「屍でも良さがわかるとは……我ながら良い斧を造ったものだ……フゥンッ!!」

 アリエラには味気ないとこき下ろされた武骨な大斧を欲して群がってくるゾンビに気をよくしたウストクヴは、渾身の力を込めて大斧を振り抜き、先頭を駆けてきたゾンビたち五体をまとめて薙ぎ払う。


「ムンッ! ゼェイッ!! うおァアアア!!!」


「オ゛ッア゛──」

 その後もウストクヴが大斧を振るう度にゾンビが数体ずつ斬り飛ばされ、ゾンビ集団の中で唯一後退しようとしていた個体にも大斧の刃が迫る。


 識別名『巨人牛の(ミノタウロス)感染者(インフェクター)』──……

 何者かの魔術によってゾンビ化したこのミノタウロスは噛み付いた相手もゾンビ化させ支配下に置く能力を持ち、『巨人牛の(ミノタウロス)暴君(タイラント)』に逆らうミノタウロスたちすらもゾンビ化させて兵力とする、最も悍ましいミノタウロス四天王であった。


「ガッ……!」 

 ──しかし、感染と支配能力……それらと幾許かの理性を除けばただのミノタウロスゾンビに過ぎないインフェクターが特級冒険者『辻研ぎウストクヴ』に敵うハズも無く……識別名付き(ネームド)だと気付かれもせず、大斧に両断されただの屍となった。


「……識別名付き(ネームド)はどれだったんだ?」

 ゾンビ化したミノタウロスの識別名付き(ネームド)が居るというのは組合(ギルド)からの情報で知っていたウストクヴだったが、見た目では区別が付かない。


「どうしたものか──……(メキメ゛キ゛ッ!!)ッ!?」 

 途方に暮れていたウストクヴがゾンビの残骸を眺めていると、島の中心部から嫌な音と振動が響き、地面に大きな亀裂が走った。



 ◇



「一体全体な〜にが起きとるんじゃ?」

 轟音と共にひび割れた地面を見たアクオグは、両手脚と角を切断され、全身に真っ赤な鱗が生えたミノタウロスの心臓を剣で突きトドメを刺した。


 識別名『竜擬きの(ドラゴニック)巨人牛(ミノタウロス)』──……

 イモータルと同様に何者かによってヴァンパイア擬きと化し、竜のような鱗や角が発現した事により生半可な攻撃では傷一つ付けられない強靭な肉体を生かして数多の冒険者を屠ったミノタウロス四天王最強の個体であった。


 ──しかし、相対したのは特級冒険者『竜斬りアクオグ』……自作の剣を試すために本物の竜を斬った豪傑である。

 そのアクオグの振るう『護宝剣(ごほうけん)セフィルグ』の原型たる剣の斬撃を竜擬きの鱗で防げるハズも無く、接敵間も無くバラバラに斬り刻まれて心臓を貫かれ、青白い炎を上げて灰の山となった。


「フゥ……ヴァンパイア擬きか……キナ臭くなってきたのぅ……」

 ただの魔物化したミノタウロスではなく、明らかに何者かの手が加わって変異したであろうミノタウロスの灰の山を見つめてアクオグは溜め息を吐く。


「おーい! アクオグくーん!!」

「ヒヒィイイン!!」

 

 そんなアクオグに駆けつけて来たカメリアとダチュラが声をかけた。


「おお! カメリアか。 島の中心部に行ったアリエラ嬢は大丈夫かのぅ……」

「レイメイくん曰く、この地割れはアリエラくんの仕業らしいから……アリエラくん()大丈夫だと思うよ」


「おいおい……ミノタウロスを駆除出来ても島が滅んじゃあ依頼は失敗じゃぞ」

「それはそうだけど……いくらなんでもそこまでは──……(ドゴォオオオン!!!)うわあ!?」


 突如カメリアの言葉を遮るように爆発音が響くと、天を灼き尽くさんばかりの赫い火柱が地平線から噴き上がり、雲を千切り飛ばして遥か上空まで到達すると巨大なキノコ雲が形成された。


「カメリア! 逃げるぞい!! ワシもダチュラに乗せてくれい!」

「よしきた逃げようッ!! ウストクヴくんは自力で逃げてる事を祈ろう!」

「ヒィーヒヒヒヒヒヒヒィ〜ン!!」


 アクオグが乗るとダチュラはカメリアの指示を待たずに東イース島へ引き返した。



 ◇



「ガ……あ……モ゛オ゛ォ……」

 爆心地に横たわる『巨人牛の(ミノタウロス)暴君(タイラント)』は体内の魔石の力で辛うじて命を繋いでいたが……目の前の襲撃者(アリエラ)から逃げられる程の余力など到底無く、呻き声を上げて爆発の余熱で焼け死なないよう肉体を再生させ続けるのが精一杯であった。


巨人牛(アナタたち)の境遇には同情すべき点があるけれどね……かと言って他の島や大陸に解き放つワケにもいかないのよ。

 気休めにもならないでしょうけど慰霊碑を建立して……肉や骨も出来るだけ活用すると約束するから諦めて頂戴」


 アリエラは虫の息のタイラントに憐憫の情を向けるが、当のタイラントはアリエラの言葉は殆ど聞こえておらず、聞こえた部分も何を言っているのかは理解出来なかった。


 そしてタイラントは自分を死に追いやったアリエラとは別の誰かへの恨み言を叫び始める。


「あ゛ッ、アイ゛ツ……!! ダマシたな゛ッ……! ごんな゛バケモノがいるナンテ、きいてなっ……オレ゛はセカイの──……」

 肉体再生に精一杯だったタイラントは無理に喋った結果、生命維持をしていた体内の魔石が遂に限界を迎えて崩壊……事切れた。


「可哀想に……中途半端に知能を得たばっかりに誰かに唆されたのね……どうせ『ゲダの指』あたりでしょうけど。

 さて残ったミノタウロスも殲滅しなきゃ……後味の悪い依頼ね全く……」


 その後、アリエラが更に数回発生させたキノコ雲と、キノコ雲から発生した無数の赫い落雷によって西イース島の利用価値と共にミノタウロスは全滅。


 特級案件『イース島 巨人牛(ミノタウロス)駆除』は駆除には成功したが、西イース島の状態は依頼主の要望通りとはいかず、島の面積は半分以下まで消し飛んだ。


 そして、僅かに残った島のほぼ全域にはアリエラ主導で地面に突き刺さる斧のようなデザインの慰霊碑が建立され、さすがに特級冒険者が建てた慰霊碑を取り壊してまで事業をする気にはなれなかったのか依頼主の業者は西イース島から手を引く事に決めたのであった。



 ◇



「──それじゃあ『護宝剣セフィルグ』の所有権は私が持つという事で良いですね? ヘヒヒッ……」

「「「あ゛……?」」」 


 駆除終了から数日後、慰霊碑の建立が完了しイース島を後にしようかという流れになった時、レイメイが『護宝剣セフィルグ』の所有権を主張し始めた。


「駆除依頼に一番貢献した人が剣の所有権を得るって話でしたよね? 私は識別名付き(ネームド)を二体仕止めましたよ。 ねえ?」

 レイメイはピチカとカメリアに同意を求める。


「うん。 脚速いヤツをバラバラにしてたよ」

「ヴァンパイア擬きのヤツは丸呑みにしてたね……」


「ね? 御三方はどうです?」

 表情こそ変わっていないが、レイメイは明らかに挑発的な声色で問いかけた。


「俺は……ゾンビ化したヤツを……くっ……」

 ウストクヴは自分の斃したゾンビ集団は他の特級の誰でも容易に斃せたであろう事を分かっているため、悔しげに口を噤んだ。


「ワシはドラゴン風のヴァンパイア擬きを倒したが……一体だけじゃからなぁ……」

 アクオグも討伐数の有利を覆す反論は出来ず、諦めた。


「ワタクシは魔人化した上に魔王を自称する個体を斃したのだから、ワタクシが一番貢献したのではなくて!?」

 アリエラは島のボスを撃破した事をアピールして食い下がるが──……


「アリエラさんは依頼主の要望を無視して島を破壊したので今回の貢献度は一番下ですよ」

「なッ……!?」


「それはそうだね。 この島でまた同じような悲劇が起こるのを危惧して破壊したんだろうけど……ちゃんと依頼をこなした上で業者に厳重抗議をした方が良かったね」


 カメリアも意見に賛同したため、アリエラも反論出来なくなり、剣の所有権は正式にレイメイに移譲された。


「フン……! まあいい。 もっと優れた武器を造れば良いだけの事だ……」

「アリエラ嬢のお陰でコツは掴めたしのう!! フン! アホーッ!!」


 ウストクヴとアクオグは捨て台詞を吐いてイース島から去って行く。


「メイメイいーの? 怒らせちゃったけど」

「これでずっとヘソ曲げるような人たちならそれまでですよ」

「剣が惜しいのは確かだろうけど、二人共そんなねちっこい性格してないよ」


「まあ勝負に負けたからには護宝剣(その子)はレイメイに託すわ……大事にして頂戴ね」

「はい……(魔王陛下かジークさんへのお土産にしようと思っているとは言い辛くなってしまった……)」


 こうして冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』初の特級案件は半分失敗ではあるが負傷者も無く幕を閉じ、一行は次なる島へ旅立つのだった。

生ける屍(ゾンビ)

亡者(アンデッド)の一種。腐乱死体が動き出したもの。

ウィルス・細菌・魔術・寄生生物・身体改造の不具合など様々な原因が考えられるが、基本的に頭部か頸部を破壊すれば斃せる。

噛まれて感染するかどうかはゾンビ化した原因による。

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