第二十四話 ヤティグ島ニセモノ市場
登場人物紹介
◇アリエラ
主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。
褐色肌にボブカットの黒髪に猫のような紅い瞳の獅子獣人。
冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。
特級冒険者。
好きな果物はザクロ。
◇ピチカ
蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。
異世界転生者。チートスキル『楽々御粧し』の使い手。
冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。
二級冒険者。
好きな果物はマンゴー。
◇レイメイ
魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。
白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。
魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。
冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。
四級冒険者。
好きな果物は白桃。
◇カメリア
中性的な顔立ちで金髪ポニーテールに緑基調の騎士装束のデュラハン(エルフ)の特級冒険者。享年224歳。
二つ名は『首愛でるカメリア』
自らのスタイルに絶対の自信があり、様々な美女や美少女の顔写真との合成写真を作成するのが趣味。
好きな果物は梨。
◇ダチュラ
カメリアの愛馬で白い首無し馬。メス。
周囲の会話内容は結構理解している。
好きな果物はリンゴ。
◇
「いやぁ……しかしあのチョウチンアンコウの魔物……見事な擬態だったねぇ……動くまでまるで気付けないとはボクとした事が不覚をとったなぁ……」
船の進行と共に遠ざかって行く、自ら仕止めた魔物の死骸を眺めながらカメリアは呟く。
「ん……このココナッツ(?)ジュースなかなかイケるじゃない。
安定供給できれば流行りそうね……チョウチンアンコウの魔物の一部だからシーフードに分類されるのかしら?」
アリエラはやや落ち込んでいる様子のカメリアを無視し、赤いパレオに身を包み船の甲板にデッキチェアを広げてすわり、飾りのパラソルを付けたココナッツジュースにストローを挿して啜っていた。
「魔物由来じゃ難しいんじゃないですかね……当の魔物も殺しちゃいましたし」
「でっかいのに出くわしちゃったね〜……船長さんにめっちゃ怒られちゃった……」
「出航早々にあれじゃあ この先何が出てくるかわからないから船旅の間ピチカにはこの子を預けておくわ」
そう言うとアリエラは黄金の石棺から紅玉で飾られ鋭い牙の生えたツチブタ獣人の黄金髑髏を取り出し、ピチカに渡した。
「いーの? 大事なドクロなんでしょ?」
「盗んだりはしないでしょう? ピチカに預けておいた方が咄嗟に〈暴嵐帝〉が発動出来て安心だわ。別行動する時には返して頂戴ね」
「オッケー☆」
ピチカが黄金髑髏を亜空間に収納しようとしたその時、カメリアが自分の頭を持ち上げて他の面子よりも高い位置から話しかけてくる。
「もうちょっとボクにも構っておくれよ。
……んん〜? そのドクロって南方大陸の遺跡なんかで稀に発掘されたりするヤツだよねぇ? 次に寄港する『ヤティグ島』で似た物を見かけたよ」
カメリアは何の気無しにアリエラを迎えに東方大陸にやって来る最中に見かけた工芸品の事を口にしただけだったが、アリエラは思いの外食いついてきた。
「……!! 具体的には? 種族は? 大きさはどのくらいだった?」
「種族……? 猛禽類の魔物の骨かと思ってたんだけど、その言い方だともしかしたらあのドクロって鳥人のものがモデルなのかな?
大きさはボクやアリエラくんの頭よりも一回り二回り大きかったかな……派手だから目に付いたけど、下顎部分が無かったしボク個人としては唆られなかったから男の骨なんじゃないかなぁ。
……もしかしてアリエラくんはアレ集めてるの?」
「まあ……そうね。旅の目的の一つでもあるわ。
(猛禽の鳥人……男……もしかして叔父上かしら)」
「うーん……それじゃぬか喜びさせてしまったかもしれないね。十中八九ニセモノだろうから」
「……何故そう思うの?」
「今向かってるヤティグ島は“ニセモノ市場”として有名だからね」
◇
ヤティグ島──……。
元は宝擬きと呼ばれる人工的な容器に擬態し、体内に蓄積または生成した財宝で獲物(主に知的生物)を誘き寄せて捕食する幻獣が大量に棲みつく魔窟『偽王の宝物庫』を主な収入源とする島であった。
しかし、本来は稀に遭遇するからこそ脅威となるミミックが大量に居たところで大した脅威とはならず『偽王の宝物庫』はあっという間に踏破・閉鎖されてしまい、それに伴って客足は途絶え寂れてしまった。
その後、ダンジョンから逃げ出したミミックを試行錯誤の末に手懐ける事に成功した島民たちは、ミミックの体内で生成される宝を売り始めると「ニセモノとはいえ比較的安価で様々な宝飾品が手に入る」と評判になりダンジョン需要全盛期よりも発展する事となった観光島である。
今となっては「ヤティグ島で養殖されたミミック由来の宝飾品」というブランドになっており、ヤティグ島ブランドを騙った「ニセモノのニセモノ」まで現れる始末だ。
……そんなヤティグ島の船着場とその近辺には古今東西様々な財宝を揃えた露店や宝飾品店がそこかしこに立ち並び、それらを買い求める客の中には身長3mを優に超える巨人系の種族の者も多く見受けられる。
その中では比較的小柄なアリエラとカメリアだが、黄金の石棺と黒檀の棺を引き摺っているのでかなり目立っている。
「カメリア 着いて早々で悪いのだけれど……黄金髑髏を売っていた店に案内してくれる?」
「それは構わないけどさ……きっとよく似たニセモノだよ」
「万が一があるでしょう? とても大切な物だから可能性が有るなら確認しておきたいの。
貴女だって自分の蒐集のためなら嘘くさい情報でも確かめに行くのではなくて?」
「……違いないね。じゃあ行こうか」
「あーしはアクセとか買い漁ってくるからアーちゃんの金ピカドクロは一旦返すね〜☆」
ピチカは預けられて早々に黄金髑髏をアリエラに返却し、宝飾品店のある方向に駆けて行った。
「迷いなく行ったけれど……店の場所がわかるのかしら」
「ピチカくん南東育ちって言ってたし、この島に来るのも初めてではないんじゃないかな?
レイメイくんはどうする? 一緒に行く? 行こっか♡」
「ひぇっ……私は冒険者組合に顔出しして良さげな依頼とか探してきます。
特級冒険者と行動するのに四級冒険者のままじゃ問題ありそうなんでチャチャっと昇級してきますね」
いつの間にかいつも着ている白い旅装束に四級冒険者の証である白いベルトを装備していたレイメイはカメリアを躱すように離れ、人混みの中に消えて行った。
「つれないなァ……」
「無理に誘うと逆効果よ。さあ案内して頂戴」
アリエラはカメリアに案内され、ヤティグ島内で通称『曰く付きっぽい店』と呼ばれる土産物屋を訪ねた。
他のヤティグ島内の店同様にミミックの体内で生成されたニセモノの宝を販売しているのだが、この店では取り分け“デスマスクのような物”や“派手な彩色の奇怪な仮面”などのいかにも呪術的な要素を感じる様々な仮面と添え物のアクセサリーや不気味な置物が所狭しと並べられている。
「いらっしゃ──おや、これはこれはカメリア様。
またいらっしゃって下さるとは……そちらのお連れの方は……?」
二人が店に入ると据わった目に枯れ木のような手足が不気味な雰囲気の店主が店の奥から現れ、揉み手をしながら一見のアリエラを窺う。
「彼女はボクと同じく特級冒険者のアリエラくんだよ。
ちょっと気になる品物があるって言うから連れて来たんだよ」
「……これとよく似た品が置いてあると聞いたのだけれど、ちょっと見せて頂けるかしら。ワタクシの探している物なら言い値で買い取らせて頂くわ」
アリエラはピチカから返却された〈暴嵐帝〉の触媒である牙の生えたツチブタ獣人の黄金髑髏を見せながら店主に尋ねた。
「あぁ〜……アレですか。残念ながら数日前に売れてしまいまして……。
あ、そうそう! そのお客様も特級冒険者の方でして……」
「へえ……誰だったんだい?」
「『黄金のフィアラル』様という方です」
「どんな冒険者なの? カメリア」
冒険者としては新参でまだ顔も広くないアリエラは名前を聞いてもわからなかったのでカメリアなら知っているだろうと踏んで『黄金のフィアラル』なる人物について尋ねたが──……
「知らないなぁ……いやトボけてるんじゃ無くてね? アリエラくんと同じく新参であっという間に特級になったんじゃないかな。
ボクはこう見えて特級の中じゃ社交的で顔が広いからね。よほどの新参じゃなきゃ皆顔見知りだよ」
「そうなの……?
まあいいわ。ところで店主さん随分やつれているようだけれど……もしかしてそのフィアラルという人物に売ったのは……」
「おや……分かりますか?
アレはミミックから採取された物ではなく、本物の曰く付きの品でしてねぇ……南方大陸で出土した物らしいですが巡り巡ってウチに来たんですよ。
過去の持ち主たちも皆やつれてしまったそうですが、わたしもこのザマですよ。本物の曰く付きの品も有った方が箔が付くかと思って仕入れたんですが……手放せて正直ホッとしてますよ」
店主は枯れ木のような手足をひらひらさせながら胸を撫で下ろす。
「そのフィアラルとやらになるべく早く接触しなくてはね……」
「まさかのドンピシャとはね……ギルドに行ってフィアラルくんの足取りを調べて貰おうか。
あ、そうそうヤティグ島のギルドの受付嬢には猫妖精もいるんだよ」
「!?!!?!!!? 何故それを最初に教えてくれないの!? 早く行くわよッ!!!」
その後アリエラは受付嬢のケットシーに過剰な触れ合いを実行し冒険者組合ヤティグ島支部を出入り禁止となった。
◇〈暴嵐帝〉
アリエラの一族相伝魔術の一つ。
魔力を青紫色の雷を伴う嵐のように変質させる。
触媒となる黄金髑髏はツチブタの頭にオオカミの牙が生えた混相の獣人の盗賊であり、アリエラと激しく争った末に首を刎ねられた。
アリエラは贖罪させる意味を込め、船や隊商の護衛などをする際に多用する。




