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第二十二話 『首愛でるカメリア』

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

褐色肌に短めの黒髪に猫のような紅い瞳の獅子獣人。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

特級冒険者。

『饕餮宮』の“龍のフルコース”が食べられなかったのがやや心残り。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル『楽々御粧し』の使い手。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の一応リーダー。

二級冒険者。

南都イマニムで買い物できなかったのが心残り。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』所属。

四級冒険者。

姐のシィシアに後処理を任せて大丈夫なのかと気が気ではない。



 ◇



「二人とも飛べるんだから自力で飛んでくださいよ……」

 

 騒ぎの後処理はシィシアとワン・イェンジューに押し付けてウーヴ皇国の南都イマニムから急いで立ち去った『パリピ☆愚連隊』は、レイメイの出した〈白毒雲(はくどくうん)〉に乗って空を移動していた。


 旅がすぐに終わりかねないので、基本的に空を飛んで移動するのは控えようと決めてはいたが、今回はさすがに騒ぎが大きかったのでさっさとウーヴ皇国を脱出してしまおうという運びとなったのだ。


「ふぅ〜……いいじゃない。街中で襲われた上に相手がシィシアじゃあ消し飛ばすワケにもいかなくて手加減が大変で疲れたんだから……」

 アリエラは〈白毒雲〉に載せた黄金石棺の上に腰掛けて煙管を吹かしながら答えた。


「あーしも食べてすぐに(バト)ったせいでお腹痛いから乗せてって〜☆」

 ピチカは腹を抑えながら仰向けに寝転がって動こうとしない。


「……そういえばピチカさんはなんでワン・イェンジューと戦ってたんです? そんな好戦的でしたっけ?」

「んあっ……あー……っとねぇ〜ほら……ヤバイ組織のヒトって聞いてたから“売り飛ばされる〜!”って思ってぇ〜……」


 レイメイの疑問にピチカは歯切れ悪く答えた。


「まあいいじゃない。身重だったとはいえ『ワン五兄弟』の一角と張り合えるなんて大したものよ」

 疲れて色々と面倒になったのか先程からアリエラは殆どの事柄を曖昧に肯定して受け流している。


「いやぁ〜それほどでも☆」

「相手が万全だったら殺されてましたよ?」

「それはそうね……今後は気をつけなさいピチカ」


「ゔっ……はーい……」

「まあワタクシも今回は油断して右手を切り落とされたから気をつけなくてはね……切られたおかげでロケットパンチが撃てたわけだけれど……」


「ロケットパンチ!? アーちゃんロボだったの!?」

「そんなワケないじゃないですか(ロケットパンチ!?)」


 その後話題はロケットパンチ中心になり、国境付近まで続いた。



 ◇



 一行はウーヴ皇国の南側──南方に鏃のように伸びる国土を持ち、東方大陸では二番目の広さを誇る大国『イプニース王国』に差し掛かった。


「そろそろウーヴ皇国から出ますけど……このまま南東群島辺りまで飛んで行きますか?」

「ん……このまま大陸を去るのも味気ないし……南端の港町でも観光してから船で行きましょ?」

「いいね! なんか食べてから行こーよ☆

 ……今はお腹いっぱいだから明日出発にしない?」



 突然空から町に降り立つと目立ちすぎるため一行はイプニース王国南端に位置する港町近郊の荒野で野営をして明日に観光してから東方大陸を後にする運びとなった。

 

 野営とは言っても今日は全員『饕餮宮(とうてつきゅう)』で十分すぎる程に食い溜めできているので食事はせず、焚き火を囲んで話し込んでいた。

 三人共に旗袍(チーパオ)から赤・ツギハギ・白のストールを羽織った旅装束に着替えている。


「東方大陸といえばさ〜……あーしパンダ見てみたかったなー……やっぱ珍しいのかな?」

「熊猫ですか──「猫ちゃん!? どこ!?」──熊です……」


「なんだ熊か……猛獣じゃない……イクネト島を出てからずっと猫ちゃんがいないじゃない……どうなってるのかしらこの大陸は……」

 アリエラは頬杖をついてブツブツと独り言を呟き始めた。


(猫不足が限界までキてますね……) 

「パンダもカワイイのに……あ、でも港町ならネコちゃんいっぱいいるんじゃない?」


「……! 今日は早く寝て夜明けと共に町に行きましょ?」

「うん……ネコちゃん見つけても無理にナデナデしちゃダメだよ?」


「じゃあ私が見張りしてるんで二人は寝ちゃって下さい」

「ありがとー! おやすみ☆」

「おやすみなさい」



 ◇



「冒険者ベルトのおかげでアッサリ入国審査が通って楽ですね」

「便利だよねー☆」

神器(チートアイテム)で管理されているだけあるわね」


 翌朝早くに目覚めた『パリピ☆愚連隊』一行はイプニース王国最南端『黄金の港町ニカキップ』に到着した。


 黄金の名の通り金で覆われた建物や寺院が並び建ち、風通しを良くするために扉や壁を極力排除したそれらの建物の上座にはこれまた金で覆われた名状し難い姿の偶像が祀られている。

 決まった姿を持たなかったと言い伝えられる今は亡き『混沌の女神ノク・ノト』の偶像のようだ。

 

 しかし、一行の目を引いたのは町並みや偶像ではなく町の寺院や広場の偶像の前に佇み、奇妙な姿勢で瞑想をする住人の姿であった。

 

「話には聞いていたけれど……“混相(こんそう)”の住人が多いのね」 


 ──“混相”──

 それは複数の亜人種の身体的特徴を一人の身体で兼ね備える者たちの総称。


 亜人種は通常ならば祖先や両親のいずれか一つの種族の身体的特徴を受け継ぐのだが、今アリエラたちが見ているような“トラの頭にウシの角が生えた男”のような者や“鳥の頭に水掻きのついた手足、背中には蝶の翅の生えた女”など独自の特徴を持つ身体の者たちが稀に産まれるのだ。

────────────────


 国や地域によっては「異形」「忌み子」等と蔑まれる事もある混相だが、『混沌の女神』を崇めるイプニース王国では蔑まれるどころか、より多数の種族の特徴を持つ者こそが貴ばれる文化がある。

 実際、この町で見る限りでも常人とはかけ離れた容姿をした住人ほど豪華な服や装飾品を身に纏っている。


 その他にも混相でなくとも珍しい体質や体型を持つ者も一目置かれるようで、外見はイプニース王国では一般的な浅黒い肌の人間でも、異様な柔軟姿勢で瞑想している男などは現地人から畏敬の視線を向けられていた。


「あーしも実は混相だよ☆ 会ったことないけどパパがサメ魚人なんだって〜 ほら!」

 ピチカは口を開いてギザ歯を見せた。


「あら そうだったの。斯く言うワタクシも混相なのだけれどね……瞳が母上譲りなの」 

「へえ! アーちゃんもそうなんだー!」


「ええそうネコ獣人の母上譲り──猫……ところでこの町の猫ちゃんたちはどこかしら?」

「そういえば全然いないね〜」

「港町と言ってもこの辺は海から少し遠いですし、漁港近くならおこぼれ狙いの猫がいるんじゃないですか?」



「──猫も猫妖精(ケットシー)もこの町にはいないとボクは思うなァ」


 深刻な猫不足のアリエラの精神の均衡を保つために食事や観光の前に猫探しをしようとしたアリエラたち『パリピ☆愚連隊』に中性的な女の声がかかった。


「!? それは一体何故──……!!」

 アリエラが声の方向へ振り返ると、変わった体型の者が多いイプニース王国に於いてもなお珍しい特徴を持つ女の姿が目に入り、疑問をぶつけるのを一旦止めた。



 その女は声と同じく中性的で整った顔立ちで長く尖った耳を持ち長い金髪をポニーテールに纏め、控えめ過ぎず主張し過ぎないスラリとした肢体を持ち、腰には蕾の飾りが付いた柄頭の直剣を佩き緑基調の騎士装束に身を包んでいた。


 それだけならば多少の場違い感はあるが森妖精(エルフ)の女騎士がいたという話で終わるのだが──……

 

 その女騎士の最大の特徴……それは胴体から切り離されて浮遊している頭部が口を開いて話をしているという点である。

 ついでに言うと女騎士が連れた黒檀の棺を引き摺っている白馬も頭部が浮遊していた。

 女騎士と白馬ともに首の断面からは黒い靄のようなものが発生している。


「首が……あっ……メイメイのお姉ちゃん?」

「違います。あの人首無し妖精(デュラハン)ですよ多分……私も初めて見ました」


「ンフっ……御名答。ボクはデュラハンだよ。ああ まずは名乗ろうか。

 ボクは特級冒険者『首愛でるカメリア』

 こっちはボクの愛馬で首無し馬(コシュタバワー)の『ダチュラ』だよ。

 キミたちがチーム『パリピ☆愚連隊』で間違いないかな?」

「ブルルルッ……」


 デュラハンの女騎士改めカメリアが自己紹介するとダチュラの頭部は鼻を鳴らしてアリエラに擦り寄り始め、アリエラはその(たてがみ)を手櫛で梳いてやった。

 猫ではなくとも、今はなんでもいいから動物の毛を撫でたい気分のようだ。


「これはご丁寧に……ワタクシはチーム『パリピ☆愚連隊』所属の特級冒険者アリエラよ。ほら二人も自己紹介なさい」

 アリエラはダチュラの頭を撫でながらピチカとレイメイに促した。


「あー……パっ、『パリピ☆愚連隊』……一応リーダー? のピチカでーす☆ 二級でーす」

「(自分で名付けたチーム名のくせに恥ずかしがるのか……)

 四級のレイメイです……前に会ったヤブキチさんと違って偶然出くわしたワケじゃ無さそうですね」


「ああ そうだよ。組合長(ギルドマスター)からの依頼で冒険者ギルド総本部までキミたちの案内人(ツアーガイド)を仰せつかったんだ。

 各支部からの情報や目撃証言を集めてヤマを張ってこの町で待ってたってワケさ。……逃げないでね?」


 カメリアは結構な期間待っていたのか懇願するような声色と上目遣いでアリエラを見つめた。


「心配無くてよ。ちょうど総本部に向かおうと思って東方大陸を南下していたところだから」


「それは良かった! いやぁ特級になるような冒険者って言うこと聞いてくれないのが多──

「それより聞きたい事があるのだけれど」

──なにかな?」


「この町に猫ちゃんがいないってどういう事なのかしら?」

「ああ そういえばその話が途中だったね。

 この町というかイプニース王国は愛玩動物を飼う文化が一般的じゃないし、最近では下水道の整備や狭い場所の掃除を鼠人(ラットマン)たちが請け負ってるから猫やケットシーは追い払われちゃったみたいだね」


「なんて事……!! ううううゔゔ……!!」

 やっと猫と触れ合えると思っていたのに、また猫不在の事実を叩き付けられたアリエラは身体をわななかせ尻尾を激しく左右に振り出す。

 遠巻きに様子を伺っていた民衆はアリエラの怒気に反応して解散して行った。


「な、南東群島だったら猫いますって! ねっ?ピチカさん」

「そうそう! あーし南東育ちだけど大体どの島にもネコちゃんいたし!!」


 いくらアリエラでもさすがに町中で爆発したりはしないだろうが、うっかり物を壊すのはよくある事なのでピチカとレイメイは必死にアリエラを宥めた。


「ふぅ……そんなに怖がらなくてもよくてよ。

 この子(ダチュラ)も乗れる程度には大きな船に乗らなくちゃね……」

 意外にも早く冷静になったアリエラはダチュラの頭部を小脇に抱えて港に歩いて行った。


「ヒィ〜ン……」

 そろそろ離して欲しいのかダチュラの頭部は甲高くか細い鳴き声を上げた。


「ちょっ……ダチュラの頭返して?」

「アーちゃん! 無理にナデナデしちゃダメだってばー!!」



 ◇



 港に着き、馬の輸送も可能な大きな帆船の搭乗手続きを済ませた『パリピ☆愚連隊』とカメリアはダチュラの身体部分を船内の厩舎に預け、後は船に乗り込むだけとなった。


「あ、そうだ……乗る前に何枚かいいかな?」

 カメリアは黒檀の棺からレンズの付いた黒い箱のような物を取り出した。


「あ! カメラだー! いいな〜……高価(たか)いしなかなか売ってないんだよね〜」

「ワタクシは構わなくてよ」

「えぇ〜……私はちょっと……」


 乗り気なピチカとアリエラに対し、レイメイは隠密・暗殺・呪殺が本領の自分の姿を記録されるのを忌避した。


「ダメかい……? ボク個人としてはレイメイくんの写真が特に欲しかったんだけど……」


「……なんでですか?」

 もしや自分の素性に気づかれたのかと警戒し、レイメイは半身に構える。


「なんでって……単に顔が好みだからだよ。

 ホラ……ボクって世界一スタイル良いだろう? だからボクの身体に一番似合う顔を探して冒険者になったんだ。

 ちょっとボクのコレクションを見ておくれよ」


 カメリアは再び黒檀の棺をまさぐって一冊のアルバムを取り出し、その中身を見せてきた。


 アルバムの中にはカメリアの身体に別人(各種族の基準で美女ばかり)の写真の顔部分の切り抜きが合成されている写真が大量に保管されている。


(コラ画像作ってるんだ……)

 ピチカは前世の文化(?)に思いを馳せた。


「本当は写真の合成じゃなくて実際に首を繋げる方が好きなんだけど……首を刎ねてもいい美女ってなかなかいないから写真で我慢してるんだ……」

(それで『首愛でるカメリア』というワケね……)


「それで東方大陸中原系の顔立ちだとレイメイくんは個人的にトップだから……ダメかな?」


「やれやれ……そこまで言われたらしょうがないですね……やれやれ全く」

 褒められて良い気になったレイメイはしぶしぶ風を装って撮影を承諾した。


(技名を叫ぶ事といい……性格があまり隠密向きじゃないのよね……)

 

 その後、集合写真(カメリアとダチュラは首だけ)とカメリアのコレクション用に何枚か個人写真を撮って一行は船に乗り込んだ。


 特級冒険者『首愛でるカメリア』を一時的に加えて冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』は東方大陸から出航し、『風の女神』の支配領域とされる南東群島の海域に突入した。



「──てかメイメイは首外せる系女子なんだから別に無理して写真撮らなくてもよかったんじゃない?」

「え……!? それ本当かい!?」

「ちょっとピチカさん!」


「全く……騒がしいんだから……」

「ヒヒィン……」 


 ダチュラはアリエラに「お前もだろ……」とでも言いた気な表情と嘶きを上げ、先行きを案じるのであった。

首無し妖精(デュラハン)

妖精と亡者の中間の存在。

非常に珍しい種族で現在十三名しかいない。

全員の共通点として元は普通の妖精だったが騎馬諸共に首を刎ねられてデュラハンに変化している。

しかし騎馬諸共首を刎ねられた妖精種全員がデュラハン化しているわけでは無く、詳しい変化条件は不明。

実体と霊体を自在に行き来する能力を持つ。


森妖精(エルフ)

妖精の一種。

尖った耳と美しい中性的な顔立ちが特徴。

20歳前後までは人間と同程度の成長速度で大きくなり、200歳で成人扱いとなる地域が多い。

南西大陸に聳える『世界樹』から産まれる者と人間のように生殖活動で産まれる者がいる。カメリアは前者。

種族全体が『樹の女神』の器候補であり、魔力・髪・瞳が翠色に近い女性の地位が高い。

寿命は人間の約十倍。

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