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第十三話 西都からの出立

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

褐色肌に短めの黒髪に猫のような紅い瞳の獅子獣人。

特級冒険者。

そこそこ技名を口に出す方。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル『楽々御粧し』の使い手。

二級冒険者。

技名付きの技は無い。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

魔王軍でもトップクラスの技名叫び率を誇る。


◇ワン・ソンミン

東方大陸最大国家ウーヴ皇国を支配する『ワン五兄弟』の末弟。

獣率高めの白虎の獣人。

ウーヴ皇国の西都イーシンの領主。

技名は〈麒麟震天脚〉と〈白虎金剛手〉だけで十分だと思っている。



「ハァ……随分と反撃されたのね……どうせまた無駄に技の名前を叫んで相手を怒らせたのではなくて?」

 屋敷の中庭で折れ曲がったレイメイ(首無し)を見てアリエラは呆れた目をレイメイ(蛇)に向けた。


「いや今回はそのおかげで決定打が入ったんですよ?

 ……まあその決定打でソンミンが狂戦士化しちゃって反撃されたんですけどね」

「そうなの……? まあ今後は技名は程々にしておきなさい。

 では修復するわよ……──〈葬送帝(アヌビス)〉……!」


 アリエラの声と共に頭に被ったオオカミ獣人の黄金髑髏の眼窩に赫い光が宿り、黒い影のような魔力が全身から溢れた。


「よろしくお願いします(アリエラさんも技名言ってるし……)」

「随分とこっ酷くへし折られたものね……。

 待ち伏せしたレイメイ相手にここまでやれるなら、正々堂々と決闘できていたらワタクシの蒐集に加わっていたかもしれないわね」


 言いながら黄金髑髏を指で突くとアリエラの足元を中心に黒い影の沼が広がり、中から影で形作られた大量の腕が湧き上がりレイメイ(首無し)の折れ曲がった身体を逆に折り曲げ直し、同じく影の沼の中から浮いてきた真紅の包帯を巻いて固定して行く。


「あっ……私包帯は白がいいです」

「ワガママ言わないの」


「ちぇっ……じゃあ次はソンミンさんとザオハンさんの修復お願いします。

 急いで僵尸(キョンシー)にしないと……」


「そうね。ではソンミンから……左眼球欠損に……首の損傷が酷いわね……」

(首はアリエラさんがやったんじゃないですか……)


 アリエラは口を動かしながら影の腕を使って手際良くソンミンとザオハンの死体を修復、レイメイは〈五毒飛頭降(ごどくひとうこう)『蛇』〉を解除して人型に戻り死体の鳩尾辺りに自らの氣を込めた呪符を叩きつけるように貼り付けた。

 するとソンミンとザオハンの身体が跳ね上がり目を覚まして辺りを見回した。


「ハッ……!? オレ様は……そうか()られたのか……糞ッ!

 ……今更気付いたが、アンタら魔王軍だな?」

 自我が残っているためかレイメイの支配下に入ったにしては荒い口調かつ確信を持った眼差しでソンミンは二人に問いかけた。


「おや……バレましたか。アリエラさんが派手にやりすぎなんですよ……」

「レイメイが口を滑らせたのではなくて?」


「両方だよ! レイメイ……様は“自分は『ゲダの指』じゃない”って言ってたし、オレ様の首を喰い千切れる強さの獅子獣人って事はアリエラは『殲滅女帝』なんだろ……?

 魔王軍四天王が直々に暗殺に来るとはな……」


「ソンミンさんが様付けで人の名前呼ぶのウケますねハハハ」

 既に死からの目覚めを経験済みで余裕があるザオハンは初めての感覚に戸惑っている様子のソンミンをからかって笑い始めた。


「うるせぇぞザオハン! 支配下に入っちまってんだからしょうがねぇだろーが!!

 ……で? オレ様に何をやらせようってんだい?

 オレ様の兄貴たちの暗殺の手伝いでもさせようってか?」

 兄貴分たちの命がかかっているというのにソンミンの表情は楽しげに歪んだ。


「えぇまあ……そんなとこです。本命はワン・チィリンですが……なんか楽しそうですね?」

 自我を残してキョンシー化させたので兄貴分の暗殺には難色を示すかと思っていたレイメイは訝しんだ。


「ああ、兄貴たちはいつかオレ様が全員叩きのめしてよぉ〜……このウーヴ皇国……いや東方大陸はオレ様のモンにしようと思ってたからな。

 ……んでチィリンの大兄貴を殺ったらオレ様たちの扱いはどーなるんだい? レイメイ様よぉ」

「ソンミンさんは働き次第では私の支配下から解放して魔王軍最上級戦闘員の地位を用意します……四天王への挑戦も認められる高待遇ですよ。

 ザオハンさんは一般戦闘員からですね」

「そんなァ〜……」


「アーちゃん! メイメイ! もう終わった〜?

 そろそろ他の冒険者が来ちゃうよー!」

 中庭で今後の身の振り方について話し込んでいると上空からピチカが飛んで来た。


「ギリギリ間に合いましたね……じゃあザオハンさんは先に帰っといて下さい」

「畏まりましたレイメイ様。

 そんじゃあソンミンさんお先に失礼しや〜す」


 そう言うとザオハンは縮地で中庭から瞬く間に消え失せた。


「……さてワタクシたちも突入して来る冒険者たちを誤魔化したら早いとこ撤収しましょ。

 “領主と協力して『ゲダの指』構成員と戦っていた”という設定でよろしく。

 レイメイは……“肝試しで屋敷に入ったら巻き込まれてしまった旅人”という設定ね」

「私がマヌケみたいじゃないですか」

「まあまあいーじゃん! とにかくこれでメイメイも冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』の仲間入りだね☆」


「なんですかそのチーム名は!?」

「オレ様もどうかと思うぜ……? そのチーム名」

 


 ◇



 ──それから数日後……。

 ウーヴ皇国の西都イーシンは物理的に揺れ動いていた。


 現在ワン・ソンミン邸の中庭で〈麒麟震天脚〉の指南をするソンミンと、それを手本に繰り返す『パリピ☆愚連隊』──特にアリエラの震脚によって引き起こされる平常時の倍を超える頻度の地揺れにイーシンの住民は頭を悩まされている。

 だが圧倒的な暴力を持つ領主や特級冒険者にハッキリと文句を言える者もいないため、住民たちはなるべく早く『パリピ☆愚連隊』が別の町へ旅立ってくれるのを祈るばかりであった。


 自分たちがそんな風に思われているとは露知らず『パリピ☆愚連隊』はソンミンと修行しつつ今後の身の振り方についての打ち合わせをしていた。

 武術修行という事でピチカの「修行っぽいカッコしよーよ!」という提案に乗り『パリピ☆愚連隊』はそれぞれ赤・青・白の居士服(こじふく)を着て修行に精を出していた。


「そうだ! 地面を踏み砕かずに衝撃を伝えんだ!!

 そして反動と大地からの氣を丹田経由で全身に流せっ! 見てろよ!? そんで繰り返せ! フンッッッ!!!」

「「フンッ!!」」


「うわぁああん!!」

 アリエラとレイメイの放った衝撃にピチカは弾き飛ばされて地面を転がり回った結果服が土だらけになってしまった。


「ま〜た転がってんのかよピチカぁ!! この程度で転がってっと実戦で通用しねーゾ!? ……まあ他の二人のスジが良すぎなだけなんだけどよ。

 もう基礎は大体教え終わったが……兄貴たちの暗殺はいつ始めんだ?」

 兄貴分の暗殺に前向きなソンミンは牙を剥き出し、目を爛々とさせながら問いかけた。


「さあ……? 決まってるのは兄弟分四人を暗殺・再起不能にしてからワン・チィリンを暗殺しようって部分だけで……基本的に後は各自判断(アドリブ)ですね。

 ソンミンさんを殺って仕事が一段落した私はアリエラさんの旅に同行するので……道中で私の姐さんたちに会ったら手伝おうかな〜って感じですね。

 チィリン暗殺決行まではキョンシー化した事がバレないように且つ一般民衆には危害を加えずに大人しく待機してて下さい」


「ンだよ……しばらくお預けかよ……。

 道中ってオメーらこれから何処行く予定なんだよ?」

「当ての無い旅だから特に決めては──……いや冒険者ギルド総本部からいずれ召集がかかるはずだから南東群島かしら」


 アリエラは特級冒険者になった際に受付嬢から聞かされた用事を思い出した。

 続報がまるで無いため忘れていたのだ。


「南東か……南に行くってんなら『南方公ワン・イェンジュー』の姐御が狙い目だな。

 武器やら魔薬(ヤク)の密売やらにかまけて腑抜けちまって……オレ様よりかは弱いからチャチャっとブッ殺してくれや……そんじゃあ今日の武術指南は終わり!

 じゃあオレ様は〈白虎金剛手〉の修行するから解散!」


 しばらく会っていない姐の事を思って苦虫を噛み潰したような表情を見せたソンミンは話を打ち切り、束ねた青竹が設置してある方向へ足早に去って行った。


「ギャヒィ……(ちか)れた……おフロ入ろ……?」

 正午から夕方まで修行し疲れ切ったピチカは半開きになった口からギザ歯と舌をのぞかせフラつきながら浴場へ向かった。


「そうしましょ。レイメイは?」

「私は新技の〈鵺雷鳴掌(ぬえらいめいしょう)〉が完成するまで修行してから行きます」


「ホントそういうの好きね……」

「はぁああああ……〈鵺雷鳴掌〉! 〈鵺雷鳴掌〉ッ!!」

(うるせーなァ……コイツら早く出発してくんねぇかな)


 その後……氣で硬化させた掌に全身のしなりや回転を伝えて振り回し、雷鳴のような衝撃音を轟かせるレイメイの新技〈鵺雷鳴掌〉──派手な劈掛掌──が完成したのは日付が変わる頃であった。



 二日後……冒険者としての依頼を主にレイメイの活躍で幾つもこなした『パリピ☆愚連隊』は西都イーシンから出立、悩みのタネであった地揺れがマシになりイーシンの住民は安堵した。


「いやぁ〜メイメイ大活躍だったねー☆

 もう四級冒険者とか早すぎィ!」

「ヘヒヒッ……まあこんなもんですよ」

「レイメイなら一級くらいならすぐになれるのではなくて?

 あ、でも階級が上になっても『パリピ☆愚連隊』のリーダーはピチカなんだからちゃんと敬意は払うのよ?」


「そうそう……あーしがリーダーだったの!?」

「チーム発起人だもの」 

 

 衝撃の事実が判明した冒険者チーム『パリピ☆愚連隊』はとりあえずウーヴ皇国の南都イマニムを目指して旅立つのであった。

◇ワン・ソンミン

東方大陸最大国家であるウーヴ皇国を支配する『ワン五兄弟』の末弟。享年28歳。

西都イーシンの領主であり『西方公』の異名を持つ。

本名『バイ・ジンフー』。幼少期のあだ名は『シャオフー』。

〈麒麟震天脚〉と自らの考案した〈白虎金剛手〉の達人。

領主とは名ばかりのタチの悪いならず者であり、側近たちと共に民衆相手に好き放題やっていた。

レイメイとアリエラに暗殺され、キョンシー化した。

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