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第十話 屋根裏部屋

登場人物紹介

◇アリエラ

主人公。魔王軍四天王最強の怪力と頭脳を持つ紅一点。

褐色肌に短めの黒髪に猫のような紅い瞳の獅子獣人。

特級冒険者。

王族や要人には敬語を使う。


◇ピチカ

蒼い髪と瞳にギザ歯が特徴のアクセサリー付けすぎなギャルっぽいハーピィ。

異世界転生者。チートスキル『楽々御粧し』の使い手。

二級冒険者。

偉い人には敬語を使ってやり過ごす。


◇レイメイ

魔王直属暗殺部隊『五毒姫』の末妹。

白い長髪と肌に鬼灯のように赤い瞳と愛嬌紅が特徴。

魔王特製の最上級キョンシー(札は丹田に貼っている)。

使い分けが面倒なので誰にでも敬語を使う。



────────


 渾身の自己紹介が空振りしたレイメイは不貞腐れた態度でアリエラとピチカを屋根裏部屋に案内した。


 屋根裏とはいえ屋根自体が大きいため窮屈さはあまり無く、レイメイが拠点として使うために掃除しているのか他の部屋と違い清潔感もあり良い家具も揃えてあるので居心地は悪くなさそうだった。

 ピチカは部屋の隅の薬品棚に蛇の入った瓶や不規則に震える壺、砕けた異形の頭蓋骨が陳列されているのは見なかった事にしてそう思った。

 

 レイメイは五脚の椅子の備わった円卓の上に置いてあった魔術式ランプを灯し、椅子を引いて二人に座るように促した。

 

「どうぞ……驚かし方や自己紹介と同様につまらない部屋ですがくつろいで下さいね……」

「ゴメンってば……情報量が多くてリアクションできなかっただけだから……。

 いやぁ……それにしても屋根裏部屋って秘密基地みたいで憧れてたんだー☆ なんかテンション上がってきた!」

「ワタクシもあまり馴染みが無いから気持ちは分かるわ」


「それで……今日はなぜこの屋敷に……?」

「ちょっと地響きを起こしちゃってね……」


「ああ……あれアリエラさんの仕業だったんですね……てっきりワン・ソンミンに何か動きがあったのかと……」

「そうそう、それでワン・ソンミンに難癖つけられて幽霊屋敷の調査に来たってワケよ」

「タカる気マンマンって感じだったよね〜」


「……! 接触したんですか!?」

「ええ。あぁそういえば『五毒姫(あなたたち)』は『ワン五兄弟』の暗殺を命じられていたのよね」


「はい……姐様たちと一人ずつ手分けして暗殺任務中で……ソンミンの部下は全員()って僵尸(キョンシー)に変えて潜入させてるんですけどぉ……」

 そこまで言ってレイメイは悔しそうな表情を見せて言葉を詰まらせた。


「何か問題があるのね?」

「まず前提としてですね……他の兄弟分に警戒されないために死んだとバレないようにコッソリ殺した上でソンミンもキョンシー化させておきたいんですけどぉ……」

(物騒な話になってきたな〜……)


 魔王軍である事は承知の上で同行していたピチカだったが当然のように始まった裏の仕事の話に気圧され始めた。


「それで毒を盛ったりはしてるんですけど肝心のソンミンには一向に効き目が無くて……正直私や他のキョンシー達が束になっても討ち取れるか怪しいので、少しでも有利になるように罠を張り巡らせたこの屋敷にソンミンが踏み込んで来るのを待っていたというワケなんですよぉ……」


 レイメイはアリエラに何か期待をしているような視線を向けた。


「なるほど……ワタクシに手伝って欲しいと」

「手伝いというか……私が失敗した時の保険として控えていて欲しいというか……あ、あとソンミンを誘き寄せるのもやって欲しいかなぁ、と……」


「申し訳なさそうに随分と要求するのね……。

 ワタクシが手伝うのはいいけれど……ピチカは? 暗殺経験はある?」

「ないよ!? あー……でも何人か()っちゃった事ならある……かな……野盗とかをね?

 んで……あのトラの人って悪者なの?」


 ピチカの質問を受けたレイメイはうんざりしたような表情を見せて答えた。


「そりゃあもう……。

 部下と一緒に強引な地上げをしたり、金の押し貸しに……強盗殺人・強姦殺人・詐欺・身売りの強要……そしてそれらの犯行の揉み消し等キリがないですよ」


「いいこと? ピチカ 魔王軍はね……世界征服を目指しているの。

 だから将来の国民候補である一般民衆を虐殺なんてしない……でも今回のように一般民衆に危害を加える輩は容赦なく始末する……そんな組織よ」

「そもそも新入りのピチカさんに重要人物暗殺の手伝いなんて頼めませんよ」

「へぇ〜規模がでっかい必〇仕事人みたいな?

 あ、でもあーしも見張りくらいはやろっか?」


「そのくらいならまあ……お願いします。

 ところでアリエラさんはピチカさん以外の供回りは連れてないんですか? まずいですよ四天王ともあろう人が……」


 レイメイからの指摘を受けたアリエラは「確かに……」と言うような表情になった数瞬の後、レイメイの顔を見て「そうだわ!」とでも言っているような表情を見せ口を開いた。


「それなら暗殺が終わったらレイメイもワタクシ達と一緒に旅をすればいいのではなくて? はい決まりね」

「えっ」

「おぉ〜! 仲間が増えるよ! やったねアーちゃん☆」


「えぇ〜……? まあいいですけど……」


 レイメイが旅の一行に加わる事が流れで決まった。


────────


 暗殺計画のざっくりした内容を共有した三人は計画実行まで時間があるので時間潰しに雑談していた。


「ところでアリエラさんが持ってるその斧……【全能鍵】じゃないですか? ダメですよ勝手に神器(チートアイテム)なんて持ち出しちゃ……」

「これは魔王軍に入る前から持っていたのだからワタクシの物よ?」

「えッ!? アーちゃんも転生者だったの!?」

 

 まさかの情報に驚いたピチカに黄金の消防斧【全能鍵】を見せびらかしながらアリエラが答えた。


「違くてよ。ワタクシから盗みを働こうとした異世界人から没収したのがこの【全能鍵】よ」

「そういうコトかぁ……ビックリした……あーし他の異世界人に会ったコトないんだー。

 まあ会ったからなんかあるってワケでもないけど」

「え、ピチカさん異世界転生者なんですか?

 じゃあ大型貨物車(トラック)に轢かれてこの世界に?」


 レイメイは異世界転生者あるあるの軽口を叩いて話を盛り上げようとしたが──……


「いや? あーしは病死パターンだよ。

 けっこーがんばったんだけどね〜……」

「あっ……すみません……」

「レイメイ……もう少し気を遣いなさい」


重い答えが返って気まずい雰囲気になってしまった。


「いいっていいって☆ あーしも異世界転生者に会ったら聞こうと思ってたし(笑)」

「いや……本当すみませんでしたピチカさん……」


「もういーってばー……あ、じゃあ……メイメイって呼んでもいーい? これでもうチャラね☆」

「いいですけど……そんな事でいいんですか?」


「うん! よろしくメイメイ!」

「よろしくお願いします……ピチカさん」


────────


 気を取り直してピチカへの質問が再開された。


「ピチカさん転生者って事はアレですか……女神からチートは貰ったんですか?」

「もらったよ! あーしの神業(チートスキル)は【楽々御粧し(ドレスアッパー)】!!

 一瞬で着替えができるんだよ! 便利っしょ?」


 ピチカは説明しながら立ち上がってその場でくるくると回り安っぽい修道服から蒼い踊り子衣装へ、踊り子衣装からカラフルなツギハギのワンピースに衣装を変えて見せた。


「おお……! 隠密に使えそうなスキルですね。

 ……貰う時ってどんな感じなんですか? 異世界人とゆっくり話す機会ってあまり無いんですよね……」


「あーしの場合はねぇ……一年くらい前に前世の記憶がもどったんだケドぉ〜そしたらなんか白い空間につれてかれて女神サマ? に囲まれて一人ずつプレゼンしてきてね……んで【楽々御粧し(ドレスアッパー)】が一番気に入ったから貰ったの!」

 

「へぇ……他にはどんなのがあったんです?」

「他は【どんなスキマからも出入りできるスキル】とか【中に入ってる間無敵になる鳥カゴ】とか……あー、あとは【死体を食べると強くなるスキル】とか? キモいから断ったけど(笑)」


 ピチカに与えられていたかもしれない女神の力(チート)の話に黙って会話を聞いていたアリエラも反応した。


「……死体を食べると強くなるチートスキルをゼブブ卿が手に入れたらさぞかし強くなる事でしょうね」

「あ〜……ゼブブ卿が欲しがりそうですね……そのチートスキルにしなくてよかったですねピチカさん。

 ゼブブ卿に狙われていたかもしれませんよ」

「えっ……? チートスキルって奪えるの!?」


 アイテムはともかくスキルまで奪えるとは思ってもみなかったピチカは驚愕した。


「奪えますよ? だってアリエラさんも……ねぇ?」

「もしかしたら先駆者がいるかもしれないけれど分かっている範囲ではワタクシが初のチートスキル強奪者だそうよ」

「アーちゃんチートスキルも持ってんの!?

 ……どんなスキルをどーやって奪ったの?」


 アリエラは指先に赫い雷電を発生させピチカに見せつけながら答えた。


「スキル自体はピチカもよく目にしている雷電(これ)よ。

 その名も神業(チートスキル)神の雷霆(ラミエル)

 雷の魔術を強化するスキルよ。

 奪おうと思って奪ったわけじゃないのだけれど……元の保有者の頭蓋骨を蒐集に加える儀式の一環で心臓を食べたらワタクシが継承してしまったの」

「実験で分かった事ですが心臓移植でも継承できますよ。

 まあピチカさんはもう魔王軍所属なんで魔王軍からスキル目当てで襲われたりはしないですよ……多分」

「ヘェ〜ヨカッタ〜(昔のあーしナイス!)」


 選択次第では自分が魔王軍四天王に付け狙われていた可能性があった事を知ったピチカは過去の自分を賞賛した。


────────


「あーしの事は一旦置いといてさー……今度はメイメイの事おしえてよ☆

 頭と体が離れてたけどアーちゃんが言ってた飛頭蛮(ひとうばん)って種族なの?」

「飛頭蛮は先天的に首を分離できる吸血種族で……私は呪術の修行を積んで後天的に分離できるようになった飛頭降(ひとうこう)使いです」


「そして魔王陛下の符術によって並のそれとは一線を画す性能を持つ最上級(ハイエンド)キョンシー……それがレイメイよ」

「セリフとらないで下さい……」


「……おフダはどこに貼ってるの? キョンシーって言ったらおフダを顔に貼ってるイメージあるけど」

「顔に貼ってるとキョンシー丸出しなんで丹田……おへそのすぐ下に貼ってるんですよ……ホラ」


 レイメイは長袍(チャンパオ)をめくってピチカに下腹部に貼られた小さめの呪符を見せた。


「わぁー(エッッッッッ)」

「よしなさいレイメイ……はしたない」


────────


「ところでさぁ……この部屋まで誘うためにカベとかにかけてあった板って……なんであんなにデコってあったの?」

「ああアレですか……」

「ワタクシは幽霊屋敷がどうこうよりも会わない間にレイメイの性格が変わってしまったのかと思って心配になったわ」


「いや最初はもっと地味な案内板だったんですけど気付いて貰えない事が多くてですね……目立つように飾り付けてみたらノッてきちゃって……」

「まあ見つけやすかったけど……逆に怖かったよ……」


「ところであの誘い出し方……異世界人から学んだのかしら」

「ええ 記憶抽出実験を施した異世界人から──おっと……機密情報でした。忘れて下さい」


(今日イチ怖い情報出た……!)

 ピチカは震えた。


────────


「話は変わるけれどレイメイ……この屋敷で“白い人影”が目撃されていたようだけど貴女の事?」

「あー……この屋敷って私の前は『ゲダの指』が拠点にしてたからその頃の目撃証言なんじゃないですか?

 白骨を纏って鎧みたいにしてる奴だったんですけど……こっそり始末するの大変でしたよ」


「そこの薬品棚に置いてある頭蓋骨の持ち主の事かしら」

「そうです。あ、ソンミンを誘き出すのに使っていいですよ。

 倒した『ゲダの指』の隠した財宝を見つけたとか言えば釣れると思うんですよ」


 それを聞くとアリエラは立ち上がり薬品棚にある捻れた角と牙の付いた異形の頭蓋骨を手に取った。


「ではありがたく使わせて貰うわ。

 そろそろ暗くなってくるだろうから計画実行と行きましょ」

「完全に夜になってからソンミンが来るようにお願いします」

「キンチョーしてきた……」



 ◇



 幽霊屋敷を出たアリエラとピチカはワン・ソンミンの邸宅に向かって歩いていた。


「もう星が出てるね☆

 星といえば……異世界転生して一番驚いたのはあーし達が今立ってるのが惑星じゃないってコトかなー……円形なんだよね?この世界って」

「正確には球体になる途中で止まっていて……湾曲した円盤のようになっているそうよ。

 異世界人は地球という惑星に住んでいたのよね? 惑星で暮らしていたなんてまるで宇宙人みたいよね」


「ギャヒヒ! 宇宙人なんているわけないじゃーん☆」

「いるわよ? 宇宙人」


「マジで!?」


 ピチカの異世界での一番の驚きが更新された。

◇【全能鍵】

黄金の消防斧の形をしたチートアイテム。

あらゆる封印・拘束・施錠の類を断ち切る事ができる。

盗賊をやっていた異世界人に風の女神が与えた物だがアリエラの私物を盗もうとした際に命ごと没収された。

生物を斬りつけると傷の再生を妨げる能力もある。


◇【神の雷霆】

雷属性魔術の性能を上昇させるチートスキル。

光の女神と雷の女神の合作。

真価を発揮するには雷属性に適した紫の魔力が必要。

最初の保有者は完全に使いこなし頭上に光輪、背中に六枚の翼の形の雷が発現したが、アリエラに命とスキルを奪われる結果となった。

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