1-2-2 魔族の武闘家ノーパン!今日限りでお前はこのチャンネルから追放する!ーノーパンー
〜ヤマノケ線〜
「同志シーフ。あのまま置いてきてよかったんでしょうか?」
「まあいんじゃね?なんかアイツ放置されて嬉しそうだったし」
「無敵ですね」『ちゅうちゅう』
「どうせアイツ俺の部屋に住んでだし、放置プレイに飽きたら勝手に帰るだろ」
「たしかに」『ちゅうちゅう』
承認欲求の化け物──じゃなかった──サイクロプスの女武闘家ノーパンを追放し、【聖雀の騎士】のメンバーは4人になってしまった。
本来ならばメンバーを補充すべきだが、すぐに新しいメンバーが見つかるわけもない。俺たちは4人のまま、シンジュクにあるダンジョンを攻略しようとしていた。
「まあひとりくらいいなくてもなんとかなるだろ」
「ええ。しかしチャンネルのメンバーが減るというのは寂しいものですね」
聖女アビスの表情は、憂いを帯びている。
仲間との突然の別れに傷ついているのだろうか。
「これでよかったんだ。このままあいつを生かしておいたら、俺達のチャンネルは本当に凍結されていたかもしれない」
『ちゅうちゅう』
そう。これは避けようのない運命だったのだ。
それにきっとノーパンなら……
『ちゅうちゅう』
……さっきからちゅーちゅーちゅーちゅーうるせえな。
「なあアビス」
「なんです同志?」
「お前さっきからなに飲んでんの?マヨネーズ?」
「マヨネーズなんて飲むわけないじゃないですか。マヨネーズは飲み物じゃあありませんよ」
「じゃあなんなんだよ」
「【つけて味噌ぬって味噌】です」
「味噌」
「ナゴヤ帝国民はみんな愛飲してますよ」
「味噌を」
揺れる吊り革を見上げていると、魔族の女武闘家ノーパンとの想い出が蘇る。
初めて会ったとき。
それからこれまで。
本当に色々な事があった。
【──あ、あのっ!ボク!サイクロプスの、ノーパンって、いいます!ふつっ、ふつつかものですが、こっ、これからよろしくお願いしますっ!──】
【──え?そ、装備?ち、ちゃんと着てるよ!こ、これは不可視の防具っていって、目では見えないんだよ………………うへへっ♥──】
【──ふう、今日も暑いねシーフ。……え?街中で全裸になって恥ずかしくないのかって?な、なに言ってるのさ!?めちゃくちゃ恥ずかしいに決まってるじゃないかっ……ソレガイインダヨふへへ♥──】
『♪〜次は〜〜シンジュク〜〜シンジュク〜〜』
ああっもうすぐシンジュク駅だ!
感情に浸っている暇はない!今は目の前の配信に集中だ!
俺達はヤマノケ線を降り、最寄りのダンジョンに辿り着く。
「装備!オン!」
俺達はダンジョン用の装備を身につける。着替えの面倒がないのは助かるよな。それから配信用自動追跡ドローンをセットすれば、準備は完了。
【聖雀の騎士】のダンジョン配信の開始だ!
「リスナーのみんなメリクリ〜」
◇メリクリ〜
◇メリクリ
◇クリトリ〜
◇は??
◇やめなー
「え〜今日もシンジュクダンジョンを攻略していきますわ」
「それとお知らせだが、ノーパンのやつはギオンモールのマネキンに就職することになった」
「毎日いろんな服が着られて幸せですわね」
◇そんな…ノーパン先生…
◇おつらい…
◇さっき雑談枠で追放してたんだよなあ
◇アーカイブ見直してもろて
◇アーカイブ消えてるんだよなあ
◇茶番はその辺にしとくのだ
「それじゃみんな〜!気合入れていくぞ!!」
「「「おーっ!!」」」
俺たち4人は士気を高めると、ダンジョンの奥に向かって進んでいく。
女子大生女たらし女騎士ユリ。
JK悪役令嬢デスワ。
実家がナゴヤの聖女アビス。
そしてこの俺、自称勇者のシーフ。
全員、ネット評価ではSランクの探索者だ。
たとえノーパンが居なくたって、俺達【聖雀の騎士】は、ダンジョンなんかにほぼほぼ絶対に負けたりしないッッッ!!!