1-1-3 女子大生女騎士ユリ!今日限りでお前はこのチャンネルから追放する!ー地下39階層ー
〜シンジュクダンジョン地下39階層〜
「──ッチ、囲まれたか──」
ダンジョンの奥で、俺たちはダークウルフの大群に囲まれていた。
ダークウルフは危険なレアモンスターだ。
暗闇を作り出す特性のせいで、光魔法は小さな灯りくらいにしかならず、他の魔法も狙いが定まらない。
味方を巻き込みかねない大魔法は使えないし、四方八方から襲いかかってくるので接近戦でもかなり苦戦する相手だ。
ぶっちゃけ残りの敵の数すらわからない。
◇よく見えないんだけどこれ大丈夫か?
◇放送事故かな
◇がんばえ〜
◇詰んだもんなのだ
「心配すんなリスナーども!ここからなんとかすっから!」
「いやもう持ちませんわ!?」
「ッマジかよ!?」
普段の俺達ならこんな失態はあり得ないだろう。
ダークウルフの対処もそうだが、ユリ無しでここまで降りてきたために俺達は消耗しきっていた。
ひとりの穴を軽視し過ぎた。
リーダーである俺のミスだ。
「ッくそ──こんなハズじゃあ──!」
俺たちは、こんなところで全滅するのか。
──そう覚悟を決めたときだった。
「待てぇえええええええいッ!!」
「「「「!!!!」」」」
洞窟に怒声が反響する。
あれは。
聞き覚えがある、あの声は。
◇きたあああああああああ!!
◇きちゃああああああああああああ
◇ユリちゃん!?
◇流れ変わったな
◇ドクダミ¥5000:ユリ様おふつくしひ
◇やらせ確定
◇チンパンジー¥5000:やらせでも同意の上ならよくない?
◇同意の上のやらせってなんなのだ…?
「とうっ!」
ユリは俺達とダークウルフの間に立ち塞がる。
暗闇の中、狼の耳のシルエットが見えた。
ダンジョン装備状態のユリは銀狼人になる。
その嗅覚と脚力で、俺達を追ってきてくれたのだ。
────リーダースキル【超新星】発動!!
仲間になったユリの潜在能力が極限まで引き出される!!
「かかってこい!ダークウルフども!!」
────スキル発動!【挑発】!!
ダークウルフの群れは暗闇から姿を現し、一斉に女騎士ユリに襲いかかる!!
10──20────いや、30匹は居る!?
「ッユリ!!!」
「問題ない!むしろ好都合だ」
ユリは腰の剣を、背負うように構える。
そして、すべてのダークウルフがその間合いに踏み込んだとき!
「破ぁああぁぁあっ!!!」
────スキル発動!【カウンター】!!
攻撃の威力を69倍にして返す、横薙ぎの一閃!!
『『『──ギャオオオオオオオンッ!!──』』』
ダークウルフの断末魔と共にあがった土煙。
俺達がユリのもとに駆け寄ったとき、既に戦いは決着していた。
「ユリ、どうしてここに──!?」
「キミ達の配信を見て急いで追ってきたんだ、間に合ってよかった」
「そうじゃないっ!俺達は、お前を追放した、それなのに──」
それなのにどうして、助けに来てくれたんだ?
わからない。
俺には、わからなかった。
「ああ、なんだ。そんな事か」
女騎士ユリは、俺の肩にポンと手を置く。
「たとえ追放されたって、かつての仲間を放って置けるわけないだろう?」
「ユリ……」
「あとこのチャンネル、美女が多いしな」
そう言った彼女の顔は、なによりも気高く、凛々しかった。
「……また、キミ達と一緒に配信してもいいかい?」
「──ああ!!」
俺とユリは、固い握手を交わした。
俺達【聖雀の騎士】はいつもの5人組のパーティーに戻ったのだ。
◇8888888
◇8888888888
◇てぇてぇ…
◇てぇてぇだな……
◇てぇてぇかこれ?
◇雰囲気に騙されてない?
もう二度と、このチャンネルから追放者なんて出さない。ダンチューバーの誇りにかけて、俺はそう誓った。
「それじゃあみんな、キリもいいし今日の配信はここまでだ!ハッピーニューイヤー!」
◇ハッピーニューイヤー!
◇ハピニュ
◇ハピニュ
◇まだ6月ですよ
◇初見は帰れなのだ
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