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2-3 俺は自称勇者シーフ!今日限りでこのチャンネルは解散する!ー椎名風馬ー

 〜カラオケボックス・ジャイサウンド〜



「 な ん で ? 」


 真顔で迫ってくるユリ。

 くそっいつもと立場が逆転してる仕方ないけど。


 ノーパンは何故か興奮していた。

 デスワは腹が捩れるほど爆笑していた。

 アビスはトーキョーのメロンクリームソーダが小さいと電話口にクレームを入れていた。


「なんで靴下を片っぽだけ盗んで飾ってるの?え?意味わからないんだけど。そういう宗派なの?」

片っぽだけ(・・・・・)じゃなくて左側だけ(・・・・)だ。いいか?左側ってのは心臓に近い方だ。つまり心臓を支えているのは左脚だろ?右脚じゃあだめなんだよ。左靴下を10点とすると右靴下は5点くらいだ」

「ッキミのこだわりはどうでもいいわ!!!!!」

「ぐはっ!?」


 後頭部に強めの一撃を貰って向かいの席まで吹っ飛んだ。……痛ってえ!ぶつけたところを摩っていると、ノーパンに覗き込まれる。


「し、シーフっ!大丈夫!?」

「あ、うん」

「あのさ!シーフも、変態なんだね!?ボクと同じだね!」


 いやびっくりするだろお前。

 言葉のオブラートまで露出まぞくになったんかお前。

 あと目を血走らせるな怖い。


「シーフ、その……ボク達のコトも見てたの……?野獣のような眼光で……!?」

「あ、ああ。綺麗だもんなお前の脚」

「ふぁっ!?」

「どんな靴下履くのかなとかは考えたりしたけど」

「ねえ見たい!?ボクが左脚に靴下履いてるとこが見たいの!?!?」

「そりゃあ、見れるものなら見たいけど」

「……みみみ、みたけりゃみせてやるよおっ(震え声)♥」


 ノーパンはいつものように全裸になると、左脚に靴下を履かせる。靴下は左足の裏にある口にがぶがぶと飲み込まれていった。


「わああっ!?ご、ごめんシーフっ!は、はきだせこらぁ!」

「ありがとなノーパン。気持ちだけ受け取っておくよ」

「はぁ……はぁ…………ッ♥」


 興奮状態のノーパンを椅子に座らせる。


「はぁ……あと1枚で100枚達成だったのに」


 俺が天井のミラーボールを見つめてしみじみこぼすと、ユリが掴みかかってくる。


「この女の敵が!!」

「男のもw男のも盗んでますわwww」

「女と男の敵が!!!」

「犬のもですわww犬のも盗られたってさっきコメントでwww」

「女と男と犬の敵がァ!!!!!」

「ぷひーwwwwwwwwwwきっもwwwwwきもきもwwwww」


 そ、そこまで言う事ないだろ。

 犬のは一回しか盗んでないし……。


「しばらく頭を冷やすんだな!!!」


 そう言ってユリのやつは出て行った。



「メロンクリームソーダはブーツ型のグラスって決まっているんですよ!!いまからサンプルを持っていきますからそこで待ってなさい異教徒(トーキョーモン)!!!」


 そう言ってアビスのやつも出て行った。

 



 ────

 ──




 〜ヤマノケ線〜


「どうするんですのシーフ?ユリ怒ってましたわよ」

「そうだなあ……」


 俺とノーパンとデスワは、ヤマノケ線で自宅のアパートに向かっていた。


「ユリの言う通りだ。俺の性癖はとてもおおっぴらにできるものじゃあない。──【サイレント・ナイト】も解散だな」

「「ええっ!?」」

「まあ、お前らはうちに住んでるからな……不安になる気持ちもわかるけど、お前らの世話はちゃんと最後までしてやるから安心しろ」

「そっ……そんなことより……ほ、ホントに解散しちゃうの……?」

「そうですわよシーフ?あなたみたいな変人を受け入れてくれる場所(チャンネル)なんて他にありませんわよ?」


 誰が変人だ。俺か。


「だいたいシーフ、友達とか居ますの?居ませんわよね?生意気ですしクソガキですし、ひとりで配信回せるとはとても思えな────痛い痛い痛い!!!」


 煽ってきたデスワの顔面にアイアンクローをかけてやる。


「いいんだよ。俺は元々ソロだったしな。それに俺もこれまでバカなことをやったお前達を追放してきた。俺だけお咎め無しなんて不公平だろ。リスナーにも明日説明するさ」

「…………でもぉ……………」



『♪〜次は〜〜シンジュク〜〜シンジュク〜〜』



 俺達はシンジュク駅を通過する。

 結局、シンジュクダンジョンはクリアできなかったな……まあいいさ。ユリ達がきっと俺の後を継いでクリアしてくれるだろう。

 俺はもう、ここで降りる事も無いのかもな。


 そんな事を考えながら、俺は静かに目を閉じた。





『────キキィイイイイイ〜ィィイイ──ッッ────』



 俺達は、強力なGで吹っ飛ばされた。

 ヤマノケ線が、金切り声をあげて緊急停止したのだ。


「ふぁっ!?──く、くっしょんがあって助かったぁ……デスワ大丈夫!?」

「むぎゃ!!──クッションがあって助かったな……デスワ大丈夫か!?」

「きさまらのせいで大丈夫じゃありませんわ」


『────ハラジュクで緊急事態発生のため、運転を停止します。ご迷惑をおかけして────』


 かつて耳にしたことのないアナウンスに、なにが起きたのかと窓の外を見た俺は、乗客達とともに絶句していた。


 ワイバーン。

 ハーピー。

 ドラゴン。


 ダンジョン内にしか出現しないはずのモンスターが、ハラジュクの上空を飛び回っていた。



 ──スタンピードだ。

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