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1-3-3 廃課金令嬢デスワ!今日限りでお前はこのチャンネルから追放する!ー地下77階層ー

 〜シンジュクダンジョン地下77階層〜



「──まさかこんなに強いスライムが居るなんて──」


 ダンジョンの地下で、俺たちはセイントスライムと対峙していた。


◇セイントスライム、超危険なレアモンスターなのだ

◇またかよ

◇スライム属はただでさえ物理攻撃が効かない特性を持っているのに、セイントスライムはさらにすべての属性魔法にかなりの耐性があるのだ。さらにこいつは強力な攻撃魔法を習得しており、貯め時間無しで連発してくるのだ

◇いつもながらあざやかな解説


 なんだこの【ぼくのかんがえたさいきょうのすらいむ】は?

 一般冒険者に探索させる気あるのか?


◇ノーパン先生、セイントスライムは全裸になって尻を広げれば攻撃されないよ


「わ……わかった!脱いで──お尻を────こうかな!?」


◇それワザップなのだ


 こんなときになにワザップに引っかかってんだブルーベリージャムにすんぞあのアホ露出まぞく!?


「なにしてるんですかノーパンさん!スライム(すりゃあむ)だからといって油断しないよう!」

「すりゃあむ」

「転スラ(すりゃ)とかでも最強キャラですからね!」

「転すりゃ」


 くそっ!こっちはこっちでアビスの帝国語が気になって集中できねえ!!


◇えっちな展開希望

◇えっちな展開希望

◇えっちな展開希望

◇えっちな展開希望

◇詰んだもんなのだ


「心配すんなリスナーども!ここからなんとかすっから!」

「いやいやいや!もう持たないぞシーフ!!」

「ッマジかよ!?!?」


 俺も全属性の攻撃魔法は使えるが専門職には劣るし、魔力も多いわけではない。

 白魔導士の聖女アビスは、防御魔法で手一杯。

 このままではジリ貧、突破されるのも時間の問題だろう。そうなれば対抗手段のない俺達は全員スライムの餌になるしかない。


 攻撃魔法が得意なデスワを捨ててくるべきではなかった。

 ひとりの穴を軽視し過ぎた。


 リーダーである俺のミスだ。


「ッくそ──こんなハズじゃあ──!」


 俺たちは、こんなところで全滅するのか。

 ──そう覚悟を決めたときだった。


「そこまでですわ!!」

「「「「!!!!」」」」


 洞窟内に俺達を呼ぶ声が反響する。

 苦戦する俺たちの前に、ブランドもののスカートを翻し、ドブ川の水が滴る少女が現れる。


 あの姿は。

 悪役令嬢デスワ。

 さっき始末……じゃなかった、パーティーから追放したはずの少女だった。


◇きたあああああああああ!!

◇きちゃああああああああああああ

◇おっぱい!?

◇おっぱいぷるんぷるん!!

◇おっぱいきたああああああ!!

◇流れ変わったな

◇確定演出

◇もうやらせでもなんでもいい!!乳を揺らせ!!


 ────リーダースキル【超新星】発動!!

 仲間になったデスワの潜在能力が極限まで引き出される!!


「生きていたのか、デスワッ!!」

「地獄の沙汰も金次第っ!ですわ!」


 よくわからない事を叫びつつ、少女は左手を俺の方に差し出す。


「指環を!はやく!」

「え?これか??」


 なにを考えているのかわからないが、それはいつもの事だ。促されるままにアイテムボックスからガーネットの指環を取り出して、デスワに嵌めてやる。

 デスワは掌をセイントスライムの方に向けた。


「破ぁああぁぁあっ!!!」


 ────アイテム効果発動!【ガーネットの指環】!!

 敵モンスターが持つ火属性への耐性を少し減少!


 ────スキル発動!【インフェルノ】!!

 デスワの掌からあらわれた無数の火焔熱線がスライムの身体を撃ち抜く!!スライムは煙とともに消滅した。


 ガーネットの指環は砕け散った。


「デスワ、どうしてここに──」

「なんとか港に辿り着いたと思ったら借金取りに追われてここまで逃げてきたのですわ」

「ッそうじゃない!俺達は、お前を追放した、それなのに──!」

「え?いやいやいや追放っていうか殺そうとしましたわよね……?もしや記憶を上書きされてらっしゃる?」

「それなのに──!」


 それなのにどうして、助けに来てくれたんだ?

 わからない。

 俺には、わからなかった。


「ふふっ。そんなこと、当然ですわ」


 悪役令嬢デスワは、ふくよかな胸を張る。


「わたくしは悪役令嬢ですのよ。わたくしのモノはわたくしのモノ。そして、みなさまのモノはわたくしのモノなのですわ」

「デスワ……」

「このパーティー【聖雀の騎士(サイレント・ナイト)】はわたくしのモノです。それを奪おうなんて許しませんわ!」

「デスワ……リーダーは俺だけど……デスワ……!」

「それでもわたくしを追放するというのなら、きっちりと退職金を払っていただきますわ!」


 そう言った彼女の面の皮は、ダンジョンの壁よりも分厚かった。俺は呆れてすとんと肩の力が抜けた。


「……ああわかったわかった!俺の負けだよ!お前が納得できるような退職金なんて払えない」

「シーフ……!」

「借金取りはちゃんと撒いたんだろうな?」

「モチのロンですわ!【ドヤタ】のナビ技術で最短ルートを検索してきましたもの!」


 スポンサーへの配慮も完璧だ。

 俺とデスワの、ハイタッチの音が鳴り響く。


「「せ〜のっ、ドヤタイムズ!!」」


◇ドヤタイムズ!!

◇ドヤタイムズ!

◇ドヤタイムズ!

◇ドヤタイムズ!

◇てぇてぇだな…

◇え?

◇お前がてぇてぇと思うのは自由なのだ


 借金なんていくらでも踏み倒せばいい。

 これからはたまにしかパーティー追放なんてしない。

 俺はそう胸に誓った。


「それじゃあみんな、キリもいいし今日の配信はここまでだ!ハッピーニューイヤー!」


◇ハピニュ!

◇ハピニュ

◇ハピニュ

◇ハピニュ!

◇今更だけどこの挨拶どうなん?


 チャンネル登録と高評価、よろしくな!

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