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1-3-2 廃課金令嬢デスワ!今日限りでお前はこのチャンネルから追放する!ー勅使河原姫初ー

 〜ヤマノケ線〜


「簀巻にして川に放り込むのは流石にやりすぎじゃないか?」

「企業が滅んでも図太く生き残った女みたいなゴキブリだ。間違えた、ゴキブリみたいな女だ。あれくらいじゃ死なねえよ」

「まあ確かにデスワの生命力は凄まじいが……」


 あの後俺はデスワをふん縛って、ジャイサウンドの裏手を流れるドブ川に放流した。

 ようやく気づいたのだ。アイツの生活レベルを落とすよりもアイツ自身を橋から落とす方が遥かに容易だという事に。


「ッくそ、あいつめ!俺の【アイテムボックス】がほとんどあいつの出した産廃アイテムじゃねえか!!あとで全部アイテムショップに売っ払ってやる!」

「で、でもシーフ……このマスカレードの仮面、すごいかも!体が軽やかになった気がするっていうか……」

「それはね。お前が服を着てないからだよ変態全裸仮面(ノーパン)


 パーティーに巣食う寄生虫──じゃなかった──廃課金令嬢デスワを追放し、【聖雀の騎士(サイレント・ナイト)】は4人になってしまった。

 本来ならばメンバーを補充すべきだが、すぐに新しいメンバーが見つかるわけもない。俺たちは4人のまま、シンジュクにあるダンジョンを攻略しようとしていた。


「まあひとりくらいいなくてもなんとかなるだろ」

「ハーレムメンバーがひとり減るというのは寂しいものだな」


 女子大生女騎士ユリの表情は、憂いを帯びている。

 だからいつからお前のハーレムになったんだよ。


「これでよかったんだ。このままあいつを生かしておいたら、今ごろ破産してたのは俺達だったかもしれない」

「借金取りから逃げ続けるのも大変だからな」

「体力はつくけどな」


 そう。これは避けようのない運命だったのだ。

 それにデスワならきっと、良いもの食って栄養蓄えているだろうし、川の魚達も喜ぶ。残念な女だったが仕方ない。


 揺れる吊り革を見上げていると、ジェイサウンドに捨ててきた請求書の束が蘇る。


 初めて会ったとき。

 それからこれまで。

 本当に色々な事があった。




【──おーっほっほっほ!わたくしは勅使河原(てしがわら)姫初(きうい)。天才魔術師ですわ──】


【──まずはクラファンで執事を10人ほど募集しましょう。え?執事は集まらない?執事が居ないならメイドを雇えばいいのですわ──】


【──むきー!剣のイヤリングと剣のイヤリングがダブってしまいましたわ!もう二度と引きませんわこんなクソガチャ!はぁ……はぁ……気持ちを落ち着かせるために一回ガチャりますわ──】



 そういや、こいつが最初の仲間だったんだよな……。

 どうせ泳いで帰ってるだろうし、帰りにちくわでも買っていってやるか。



『♪〜次は〜〜シンジュク〜〜シンジュク〜〜』



 ああっもうすぐシンジュク駅だ!

 感情に浸っている暇はない!今は目の前の配信に集中だ!


 俺達はヤマノケ線を降り、最寄りのダンジョンに辿り着く。




「装備!オン!」


 俺達はダンジョン用の装備を身につける。着替えの面倒がないのは助かるな。そうだよなノーパン?それから配信用自動追跡ドローンをセットすれば、準備は完了。

 【聖雀の騎士(サイレント・ナイト)】のダンジョン配信の開始だ!


「リスナーのみんなメリクリ〜」


◇はじまった

◇メリクリ〜

◇メリクリ

◇いま8月ですよ

◇初見は帰れなのだ


「迷える視聴者のみなさん、今日もシンジュクダンジョンを攻略していきますよ」

「それとお知らせだが、デスワのやつは借金取りに捕まって海外に売り飛ばされた」

「タダで海外旅行ができるなんてお得ですね」


◇そんな…おっぱい…

◇おっぱい…

◇どこの国?

◇さっき雑談枠で追放してたんだよなあ

◇アーカイブ見直してもろて


「それじゃみんな〜!気合入れていくぞ!!」

「「「おーっ!!」」」


 俺たち4人は士気を高めると、ダンジョンの奥に向かって進んでいく。


 女子大生女騎士ユリ。

 謎の変態全裸仮面。

 実家がナゴヤの聖女アビス。

 そしてこの俺、なんちゃって勇者のシーフ。

 全員、ネット評価ではSランクの探索者だ。


 たとえデスワが居なくたって、俺達【聖雀の騎士(サイレント・ナイト)】は、ダンジョンなんかにたぶん絶対に負けたりしないッッッ!!!





「──ところで迷える視聴者のみなさん!」

「なになに〜?」

「この配信用自動追跡ドローンってとっても便利ですよね!」

「ああ。配信者の必須アイテムだよな!」

「セットすればダンジョン内に勝手に着いてきて映像を拾ってくれるし、みなさんのコメントもいい感じの場所に投影してくれる優れもの!」

「技術の進歩を感じるぜ!」

「このドローンを作っているのがなんと!ナゴヤ帝国の誇る世界でもトップの企業【ドヤタ】なのです!」

「へえ〜っ!ドヤタって自動車だけじゃなかったんだな!」

「ええそうですとも!ドヤタはいつでも技術の最先端をお客様に提供しています!それだけではありません!SDGsに配慮した非常にクリーンなエネルギーの活用にも取り組んでいるんです!」

「すげえな!流石は世界のドヤタだぜ!ドヤタのドローンは概要欄からチェックだ!」

「「せ〜のっ、ドヤタイムズ!!」」


◇なんだ急に

◇どうした急に

◇シーフさんとアビスさん洗脳された?

◇なんだこのCMという名の茶番劇

◇たぶんコレ企業案件なのだ

◇露骨w

◇よくこんなイカれたチャンネルに依頼しようと思ったな

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