4月17日
「君は…」
白い髪に桜のような色の瞳を持つ少女が立っていた。…この子、珍しい髪色をしているな。
「あの、私1年生のネリネ・リナリアというんですけど」
聞いたことない名前だ。まあ、まだ1年が入学して間もないし、当たり前か。
「そう、俺に何か用?」
「あの…ソラ先輩って生徒会にいますか?」
「ああ、いるけど?」
「…そうですか、ありがとうございました。失礼します」
「え?」
なんだったんだあの子…ソラ、もう1年のファンが居るのか、流石だな。
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「失礼します…」
僕は職員室の扉を開けた。
「リーマ先生いますか?」
「ああ、ソラくん」
奥の方からリーマ先生が出てきた。
「先生、少し相談があるのですが…」
「生徒会のことですね。場所を移しましょうか」
僕らは面談室に移動した。
「それで…なんの相談でしょうか?」
「アイビーから聞いたのですが、明日、1年生に向けて生徒会の見学会を行うんですよね?僕は何をすれば良いのでしょうか…?」
「そのことですか。見学会ではわたくしとソラくんは一緒に行動する予定です。ですから、1年生への説明はわたくしに任せてください。ソラくんは1年生とともに生徒会について知ってくれれば嬉しいです」
「ありがとうございます…!何から何まですみません」
リーマ先生、なんて頼りがいがあるんだ…
「いえいえ、一緒に頑張りましょう。ああ、わたくし、今日の放課後は忙しいので、申し訳ないですが補習はなしにします。ごめんなさいね」
「全然大丈夫です!お忙しい中、ありがとうございました。それでは失礼します」
「あ、ソラくん!…お誕生日おめでとうございます」
「えっ」
まさかリーマ先生にもお祝いされるとは…
「…ありがとうございます!」
そう言って僕は面談室を出た。
…あ!先生の誕生日、聞けば良かったな。
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ーー結局昼休みはすぐに終わってしまった。ご飯を食べられなかったまま、僕は午後の授業を受けた。
「お腹空いたなあ…」
午後の授業が終わった後、僕は誰もいない廊下を歩いていた。とりあえず、早く何か食べたい。
「おい、そら」
「…あ、シアン。ここに居たんだ」
「ああ。…そら、誕生日おめでとう」
「え!?…なんで僕の誕生日知ってるの?」
「いろんな奴が話してたから。今日はどこいっても、そらの誕生日の話が聞こえてきてた」
凄いな…流石、王子様だ。
「そうだったんだ…お祝いしてくれてありがとう。てかさ、シアンの誕生日はいつなの?」
「え?ボクの誕生日は…」
なんだかシアン、困ってるような?
…そういえばいつも喋っているから忘れてたけど、シアンは猫だった。猫だから誕生日を覚えていないんだろう。
「ボクの誕生日は8月4日だ。」
…あ、普通に覚えてたんだ。
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まだ何も食べていないまま、僕は家に帰った。
「ソラ様、到着いたしました」
「ありがとう、お疲れ様。」
僕はいつものように家の中に入る。すると、エントランスにソラの家族と多くの使用人たちが並んでいた。
え…これは、どういう状況?
「ソラ、誕生日おめでとう」
お父様が1番に口を切った。
「あ、ありがとうございます」
状況が飲み込みきれていないが…みんな、僕のために集まってくれたということかな?
「お誕生日おめでとう」
みんなが口々に言ってくれた。
「今日はみんなで夕食を食べましょう?」
「ソラの好きなものを作ってもらっているぞ」
お兄様やロイド…レザン様でさえ、僕の誕生日を祝ってくれている。…少し、この家族の温かさに触れられたような気がした。
感動で泣きそうだ。この世界に来てから、涙腺が緩んでいるな…
「…ありがとうございます」
僕は涙を堪え、震えた声でそう言った。
…ああ、僕も早く家族に逢いたいな。