共通点の多い僕たち
「4月17日…」
僕、佐藤そらの誕生日と同じ日付だ。僕とソラは誕生日まで一緒なのか…同一人物じゃないというのが信じられないレベルだ。
「ソラ?おーい、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫。ごめん、ちょっと混乱しちゃって」
「ああ、俺のせいだよな。ごめん」
「いやいや、全然大丈夫だよ」
「…これ、プレゼント。良かったら使って」
そう言ってアイビーは僕に白い紙袋を差し出した。
「え…!」
「開けてみてよ」
袋の中には細長い箱が入っていた。箱には空色のリボンが綺麗に掛かっている。
箱を開けると、1本の万年筆が入っていた。空色の万年筆に、ところどころ桜の花びらが描いてある。キャップには小さくソラの名前が彫ってあった。
「可愛い…!ありがとうアイビー!」
「ソラ、最近勉強頑張ってるから、万年筆にしたんだ」
「そうだったんだ…ありがとう!大事にするね」
「喜んでもらえてよかった。王子様のお眼鏡にかなうか、不安だったからさ」
「すごく気に入ったよ!…あのさ、アイビーの誕生日っていつなの?」
「ん?俺の誕生日は10月27日だけど」
「10月27日…分かった、期待しててね」
「半年後だけどな。まあ楽しみにしとくわ」
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待ちに待った昼休みがやってきた。シアンに会うため、僕はご飯も食べず校内を歩いていた。
「ソラくん、久しぶり。」
中庭で後ろから急に声をかけられた。僕はすぐに振り返る。
「え…」
そこにいたのはヒロインだった。彼女は微笑みながら僕を見ていた。
「お誕生日おめでとう。17歳かあ…私と同い年だね」
…なんだか彼女の声を聞くと苦しくなってくるような感じがする。僕、緊張してるのかな?
「ありがとうございます」
僕はそれ以外、何も言えなかった。
「ふふ、じゃあまた明日」
そう言い残して、彼女はどこかへ行ってしまった。
…あれ、彼女、僕の記憶喪失について触れてこなかったよね?
「あの…!」
今度は知らない少女たちに呼び止められた。…待って、ほんとに誰かわかんない。ソラとなにか関わりがある人たちなのか?
「ソラ様、お誕生日おめでとうございます!これ受け取ってくれませんか?」
誰かわからない人からプレゼントを貰ったら、お返しできないよな…彼女たちの名前を聞きたいけど、記憶喪失だと思われてはいけない。…どうしよう。
「あーえっと…」
「ソラー!」
アイビーがこちらに走ってくる。
「お前、先生が…ってだれ?」
…僕も分からない。
「…ああ、隣のクラスのやつか。ソラになんか用?」
アイビーは僕が分からないことを察してくれたようだ。助かった…
「ソラ様に誕生日プレゼントを渡したくて」
「…君ら、ソラと面識あるの?」
「いえ、ないですけど…」
「ソラは王子なんだから、知らない人からのプレゼントなんて受け取れないだろ。王宮に送るならまだしも、直接渡されたら困るんじゃね?」
「…あ!そうですよね、すみません…」
「アイビー、強く言いすぎ。プレゼントありがとう。ここでは受け取れないから、王宮に送ってくれたら嬉しいな。わざわざごめんね」
アイビーが隣のクラスの人と言っていたし、多分彼女たちには敬語を使わなくても大丈夫だろう。
「わかりました…!絶対送ります!ありがとうございました」
彼女たちは校舎に戻っていった。
「…アイビー、ありがとう。助けてくれて」
「別にいいよ。…はあ、やっぱソラは、人気あるよな」
「…王子だからだよ」
「はいはい、そーですね。…あ、そうだ。ソラ、明日の放課後、生徒会の集まりがあるって。リーマ先生からの伝言。」
「そうなんだ…伝言ありがとう」
「なんか、明日は1年に向けて生徒会の見学会をするらしい」
「え、ほんとに?…やばい、生徒会のことほぼなんにも分からないんだけど」
「まあ、リーマ先生に助けてもらえよ。今は職員室に居るはずだぞ」
「行ってくる。ありがと、アイビー」
「おう、気をつけろよー」
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ソラは急いで職員室に走っていった。…そういえばあいつ、まだ昼食とってないよな?
「あと20分で昼休み終わるけど…大丈夫か?」
俺がソラの心配をしていると、後ろから誰かに話しかけられた。
「あの、すみません」
俺は声のする方に体を向ける。
「ん?君は…」