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王の鏡と廻る時計  作者: 蒼井のあ
第1章 何度目の桜だろう
18/28

17歳の春

表紙には「セレステ・アカシア・ノワール」と書いてある。きっとこれはセレステ様のものなのだろう。本には綺麗な文字が並んでいる。



「ポトス、花言葉は華やかな明るさ。この子には明るく元気に育って欲しい」



これ、もしかして…僕は1番後ろのページを開いてみた。



「アイリスの花言葉は強い希望。この子にぴったり」



やはり、ソラの名前を決めていたのだろう。この本は何十ページもぎっしりと文字で埋め尽くされていた。



これを書ききるのに、どれほどの労力がかかったのか。ソラはとても愛されていたのだろう。



ところどころにソラへの思いが綴られており、ソラの名前を決めるセレステ様の姿が容易に想像できた。



すっと、何かが頬を伝う感触があった。



「あれ、泣いてる…?」



今日は泣かないって決めてたのに…1度気づいてしまったらもう止まらない。



僕も早く元の世界に戻りたいな。



―――――――――――――――――――――――



「お兄ちゃん、今日は何の日でしょうか!」



いちごが僕に話しかけている。ああ、漸く元の世界に戻れたのかな…



「今日…?なんの日だっけ?」



僕の意志とは関係なく、僕は口を開いていた。



「もーなんで忘れちゃったの。今日は…」



―――――――――――――――――――――――



今週から、僕とお兄様、お姉様は別々に登校することになった。今までは記憶喪失の僕を気遣って一緒に登校してくれていたらしいが、元々はいつもばらばらだったみたいだ。



僕は今日、早めに家を出た。とある人に会うために。



「練習、お疲れ様でした」



僕はルイス先輩の練習を見学させてもらっていた。この前、ルイス先輩にした「お願い」はこれのことだ。僕が剣術に興味がある訳では無いが、ルイス先輩と話せるきっかけになればと思い、お願いした。



ルイス先輩は何分間もずっと素振りをしていた。素人からみても、フォームが美しいことが分かる。



ルイス先輩って、王宮騎士団なんだよね。そんな先輩の練習が見れるなんて…



「見学させてくださってありがとうございました。朝早くからすみません」



「いえ、こちらこそ嬉しかったです。こんなんで良ければいつでも見せますよ」



「ほんとですか!もしよかったら、また見学してもいいですか…?」



「はい、もちろんです!」



ルイス先輩はとびきりの笑顔を見せてくれた。ルイス先輩、本当に剣術が好きなんだな。



授業が始まるまでまだ時間があったので、僕らは少し木陰で話すことになった。



「あの、お兄様って、どんな方ですか?」



「そうですね…レグルス様は勇敢なお方です。俺はレグルス様のこと、とても尊敬しています。本当に、心から」



そういえば、ルイス先輩はお兄様に忠誠を誓っているとアイビーが教えてくれたな。



「お兄様を尊敬するきっかけはなんですか?」



「あれは…俺が小さい頃のことです。」


―――――――――――――――――――――――



俺は小さいとき、貴族の子に虐められていた。背が低く、力もなかった俺は良い標的になってしまっていた。



子供も大人も、誰も助けてくれない。平民だから、しょうがないんだって言われたこともあった。



でも、レグルス様だけは違った。



―――――――――――――――――――――――



俺がいつものようにあいつらに叩かれそうになっているときのこと。



「おらあ!」



俺は咄嗟に目を瞑り、歯を食いしばった。



…あれ、なにもない。いつもは直ぐに叩くのに。



恐る恐る目を開けると、とある少年が俺の前に立っていた。僕を庇ってくれていたのだろうか…?



「レグルス様!?」



少年の名前はレグルス様と言うらしい。あいつらはレグルス様を叩いたことに驚き、レグルス様に必死に謝っていた。



今まで見て見ぬふりをしていたあいつらの親でさえ、レグルス様に頭を下げていた。



まあ、貴族と平民じゃ対応は違うよな…



そのとき、レグルス様はあいつらにこう言い放った。



「俺より、彼に謝るべきじゃないか?」



…ああ、この人はなんてかっこいいんだろう。俺も、レグルス様みたいになりたい。そしてレグルス様を守れるようになりたい。



―――――――――――――――――――――――



「そんなことがあったんですね…」



「はい、それからずっと、尊敬しています」



「お兄様は優しい方ですね」



「はい、本当にそうだと思います。あの方以上に正義感がある方は見たことがないです」



ルイス先輩、本当にお兄様のこと尊敬してるんだな。



「ふふ、でも僕はお兄様が羨ましいです。こんなに慕ってくれる良い護衛がいるなんて」



「ソラ様…」



ルイス先輩は感動している様子だが、どこか気の毒そうな顔をしていた。僕が護衛が居ないことが気にかかっているのかもしれない。



「…僕もお兄様みたいになって、先輩のような方に尊敬されるよう、頑張ります!」



僕は先輩に気を遣わせないよう、明るく返した。



―――――――――――――――――――――――



「おう、おはようソラ」



「おはよ、アイビー」



「…なんか、今日はいい天気だな」



「え?ああ、そうだね」



「あー…ソラ、今日なんかあった?」



「なんかあったって…どういう意味?」



「あ、いや…なんでもない」



アイビーの様子が明らかにおかしい。なにか言いにくいことがあるような、そんな感じがする。



「…ねえアイビー、僕になにか隠してる?」



「は!?い、いや、別に何も隠してないけど?」



「あ、ほんと?なんか今日、様子がおかしいなと思って」



「…お前、まじで鋭いよな」



「うーん…アイビーがわかりやすいだけじゃない?」



「う、うるさい。…はあ、お前には隠し事出来ねーわ」



僕じゃなくてもアイビーは隠し事出来なさそうだけど…まあいいや。



「ソラ、17歳の誕生日おめでとう。」



「…え!?誕生日?」



「そうだよ。…もしかして、お前記憶喪失だから覚えてないとか言わないよな?」



「知らなかった…」



「はあ!?今日、家族とかになんか言われなかったのかよ」



「…今日早く家出たから家族と会ってない」



「マジかよ…」



ソラって4月生まれなんだ。僕と同じだな。



ん?まさか…?



「ねえ、今日って何日?」



「ん、4月17日だけど?」




…嘘でしょ。



なるべく早めに投稿出来ました!楽しんでいただけると幸いです(՞ . .՞)♡

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