青空と月光
「ようやく今週の授業が終わったな」
アイビーが教科書を鞄に片付けながら言う。今日、土曜日は午後の授業がないので、今の授業で終わりみたいだ。
「そうだね、めっちゃ疲れたあ。」
「ほんと、大変なのによく頑張ってたよ」
「ありがと、アイビー。…あ、そういえばさ、教えて欲しいことがあるんだけど」
―――――――――――――――――――――――
「ソラくん、本日は補習なしです。1週間、慣れない学校で疲れたでしょう。今日と明日、しっかり休んでくださいね」
「お気遣いありがとうございます、リーマ先生。あの、今お時間よろしいですか?ちょっと質問があって…」
「ええ、もちろん大丈夫ですよ。」
「生徒会って、具体的に何をするんでしょうか?」
「生徒会は学園行事の企画や運営を行っています。主に文化祭や体育祭などですので、今の時期は特に何もしていませんね。あと、生徒会長は生徒代表として挨拶をすることが沢山あります」
僕の高校の生徒会と同じような感じだ。物語の中の生徒会ってすごく権力を持っているイメージだったけど…全然違うみたいだ。
「なるほど…生徒会って何人所属しているんですか?」
「今は3年生5人、2年生3人の計8人居ます。1年生はこれから入ってきますね」
「6月に生徒会選挙があり、そこで1年生の生徒会役員と生徒会長以外の役職を決める予定です」
「そうなんですね、丁寧に教えてくださってありがとうございます」
「いえいえ、これはわたくしから言うべきことでしたね。申し訳ないです」
「そんな、全然大丈夫です!いつも助かってます」
取り敢えず、生徒会の情報はある程度集められたかな。
―――――――――――――――――――――――
僕はシアンに会うため、屋上に向かっていた。
「中間テスト、来月かあ。」
勉強は大変だが、魔法学がまだ始まっていないのでぎりぎりついていけていると思う。2年生全員が使い魔を持つまでは魔法学の授業がないので、この間にほかの教科を仕上げておかないと。
屋上の扉は既に開いていた。…誰かいるみたいだ。屋上に人がいるなんて、珍しいな。
シアンの姿は見えない。ここに居ないなら、多分中庭で寝てるんだろう。
戻ろうと階段を降りたとき、後ろから声をかけられた。
「おい」
中性的な容姿の青年が僕を見ていた。彼の瞳は、まるで昨日見た満月のように金色に輝いていた。
「ソラ、何をしている」
多分…彼はケネス先輩かな。いちごが見せてくれたゲーム画面に、金髪でボブの青年が居たような気がする。
いちご、ケネス先輩についてはあまり話していなかったんだよな…なんでだろう?
「校内を歩き回ってました」
「そ。ところで君、記憶喪失になったんだって?」
彼は僕の先輩だから、もちろん敬語は使わなくて良い。この学園では一応、地位は関係ないからね。
「はい、そうなんです」
「…まあ、困ったことがあれば相談に乗ってあげないこともないけど」
「え?…あ、ありがとうございます」
ツンデレキャラってやつかな…?こういうタイプの人と現実で話したことないから、ちょっとびっくりしちゃった。
「生徒会のことで質問があれば僕に聞きなよ」
「ありがとうございます、ケネス先輩」
「えっ?」
何故か彼は驚いている。…もしかして彼はケネス先輩じゃなかったのかもしれない。やばい、どうしよう。
「僕の名前、覚えてたのか…」
「…はい、もちろんです!ケネス・ラン・ロレーヌ先輩ですよね」
実はさっき、アイビーにケネス先輩のフルネームを教えてもらっていた。こんな形で役に立つとは思っていなかったが、聞いていてよかった。
「ま、合ってるけど…」
ケネス先輩、なんだか嬉しそうだ。わかりやすい人だな。
攻略難易度低そう…なんて、とても失礼なことを思ってしまった。
「ともかく、次の生徒会の集まりには来るように。じゃあな」
ケネス先輩は僕の横を通り過ぎて、どこかに行ってしまった。
…これで、すべての攻略対象と喋れたかな。