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王の鏡と廻る時計  作者: 蒼井のあ
第1章 何度目の桜だろう
13/28

僕と黒猫



猫が喋ってる?



…この世界では動物が喋るのも普通のことなのかもしれない。



「ねえ、今、君が喋ってたよね?」



僕は黒猫の目線に合わせてしゃがみ、声をかけた。黒猫はびっくりしたのか、大きな目をさらに見開いて僕を見つめている。



「お前、ボクの声が聞こえるのか…?」



「うん、聞こえるよ。君は何処から来たの?」



「ボクは…違う世界から来た。」



え…!



「僕と同じじゃん!」



「は?」



「僕も違う世界から来たんだ!日本ってところに居たの」



「…お前も日本から来たのか!?」



この様子だと黒猫も日本から来たんだろう。この世界で初めて同じ境遇の人と出会えて嬉しい。…いや、人じゃなくて猫か。



「お前、なんでそんな驚かないんだ?猫が喋って「異世界から来た」なんて言ってるのに…」



「多分、最近驚く出来事が沢山ありすぎて、耐性がついてきてるんだと思う。あと、僕自身が異世界から来てるっていうのも大きいかな」



…そうだとしても、こんなに落ち着いているのは自分でもおかしいと思う。どんどん感覚が麻痺してきている。



「まあ、それよりさ、君は元の世界に帰りたいって思ってるの?」



「ああ、帰りたいに決まってる。家族もいたしな…」



「良かった。なら、僕と一緒に元の世界に帰らない?」



「え?」



「僕もまだ帰り方はよく分かってないんだけど…一緒に帰ろう、元の世界に!」



沈黙が流れる。黒猫は考えこんでいるようだ。いきなりすぎただろうか…?



「…いいよ、一緒に帰ろう」



「やったあ!ねえ、君の名前はなんていうの?」



「ボクの名前は…ない。だから、お前が決めてくれ」



そんな重要なこと、僕に任せていいのかな?



「じゃあ、君の瞳は僕と同じ水色だから…シアンって名前はどうかな?」



「意外といい名前だな。分かった、今日からボクの名前はシアンだ。よろしく、えっと…」



「僕の名前は佐藤そら。よろしくね、シアン」



「ああ、よろしくな、そら。」



心強い友達に出会ってしまった。



―――――――――――――――――――――――



2日目の授業がようやく終わった。今日は座学ばかりで少し疲れた。まだ授業は慣れないな。



「今回は神話についてお話します」



今日も僕は補習を受けている。リーマ先生はこの世界の常識を1から教えてくれるから本当に助かるな。



「この世界では、人は魔法を使えません。神話によると、大昔の戦争で人の魔法による被害が大きくなりすぎたため、神が人の使う魔法を制御し、人は魔法を使えなくなったのだと言われています。」



あの本で読んだ物語のまんまだ。



「普通、人が魔法を使えることはありませんが、一つだけ、魔法を使えるようになる方法があると言われています。」



ん?それは本に書いてなかったな…



「魔法の時計と契約すると、人でも魔法が使えるようになると言われています。」



ちょっと、理解が追いつかない。この世界で何度も驚いて免疫がついてきたと思っていたが、まだまだだった。



「どうして魔法が使えるようになるんですか?」



取り敢えず、ふと疑問に思ったことを質問してみた。



「契約すると時計の魔力を借りることが出来るので、契約者が魔法を使えるようになるとされています。」



「また、時計の魔法は魔動物の魔法より遥かに魔力が強いです。そのため、魔法の時計と契約すると直ぐに死んでしまいます。実質的には時計に命を捧げているような形ですね」



そこまでして魔法を使いたい人なんて、居ないんじゃないのかな?



「まあ、全て神話です。実際に時計と契約した人や、魔法が使えた人はいません。物語に過ぎないので、安心してください」



うーん…僕はこの世界線なら全然有り得そうな話だと思う。動物が魔法を使える世界なら、人が魔法を使えても何らおかしくない。まあ、使おうと思う人はなかなか居ないだろうけど。



そのとき、視界の端でなにか黒いものが動いた。



「あら、黒猫が入ってきたみたいですね。誰かの使い魔かな。」



あ、あれはシアンだ。



「ボクは使い魔じゃない!」



「でも、初めて見る子ですね。誰の使い魔だろう?」



リーマ先生、シアンの話、聞いてない?



「だーかーら!ボクは使い魔じゃないっ!」



「うーん、分かりませんね…どうしましょうか?」



シアンの声は全く届いていないみたいだ。僕から先生に伝えてあげよう。



「あの、リーマ先生。使い魔じゃないって言ってますよ」



「え?言ってる?誰がですか?」



そんなの、シアン以外居ないでしょ。



「そら、普通の人間はボクの言葉が聞こえないんだよ。」



シアンが呆れたように告げた。



「え、そうなの!?」



「ソラくん…?」



先生は首を傾げている。



「お前が特殊なんだよ。」



そうだったのか…それ、早く教えて欲しかった。



「ソラくん、大丈夫ですか?」



「あ、すみません!…えっと、この子は使い魔じゃないと思います!僕、この子が昨日ひとりで学校に居たのを見たんです」



「ああ、そうだったのですか。確かに、野良猫のようにも見えますね」



先生は僕の奇行を受け流してくれた。それにしても、なんで僕だけシアンの声が聞こえるんだろう?



というか、野良猫が学園内に居るのは別に良いのかな?僕の高校だったら有り得ない光景だけど…



「ちょうど良いので、魔動物について少し説明しましょう」



「魔動物は瞳の色で使える魔法の種類が変わります。この子なら、水魔法が使えますね。」



「え、この子、魔法使えるんですか?」



「ええ、使えると思いますよ。基本的に黒い動物は魔法が使えますから」



「え、ボク魔法使えるのか」



シアンも今知ったようだ。魔法が使えるかどうかって、本人も分からないものなんだな。



「じゃあ、僕はこの子を使い魔に出来ますか?」



「ええ、もちろん出来ますよ」



「そうですか…!」



僕は席を立ち、シアンの耳元で囁いた。




「ねえシアン、僕の使い魔になってくれない?」




本日の投稿、少し遅くなってしまいました。申し訳ないです。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます·͜·♡

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