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Aくんと愉快な仲間たち。

作者: 星雷はやと


「くっ……如何やら俺は、ここまでのようだ。皆、先に行ってくれ……」


 ゲート前、背後に居る友人から発せられた言葉に足を止めた。振り向くと友人のBが悔しそうに顔を歪ませた。その声には悲しみと辛い思いを、僕たちに悟らせまいと懸命に隠しているのが分かる。


「……え……B?」


 今日という日を僕たち四人は、どれだけ待ちわびていたか痛いほど知っている。だから彼を一人残して、僕たちだけ先に進むなど出来ない。だがこの無情な仕打ちに誰一人、彼に掛ける言葉が思い浮かばないのだ。僕は只々、彼の名前を呼ぶことしか出来なかった。


「安心しろ、俺もBと一緒に残る」

「……っ!? C!? やめろ、お前が残る必要なんてない! まさか同情か? 止めてくれよ……俺は、皆と友達で居たい。こんな情けない姿をこれ以上晒したくない……」


 凛とした声が響くと、そっとBの隣に友人Cが立つ。彼の顔は決意に満ちている。しかしBはCに対して反論をすると、顔を伏せてしまった。


「違う。俺もなんだ……俺もここを通れる条件を満たしていない」

「ま……まさか、噓だろう? C、お前……」


 首を左右に振るC。その言葉に反応したBが顔を上げると、信じられないと震える声で呟いた。まさかCまでこの先に一緒に行くことが出来なくなるとは


「そういうわけだ。悪いがこの先は、AとDだけで行って来てくれ」

「俺たちは……お前たちのことを見守っている……」


 二人は全てを諦めたかのように、穏やかな笑みを浮かべる。


「……っ! B、C。俺……」


 やめてくれ。二人のそんな表情なんて見たくない。でも現実は無情だ。僕にこの状況を如何に出来る力はない。己の無力感から拳を強く握った。


「いや。お前らジェットコースターの身長制限に、引っ掛かっただけで大袈裟だぞ?」


 冷静なDの声が響いた。彼は僕たちのまとめ役のような立ち位置に居る。そうここは、楽しい遊園地である。僕たちは今、ジェットコースターに乗る為のゲートの前に居る。今日は高校の仲良し四人組で、遊園地に遊びに来たのであった。


「Bは元から小さいから仕方ないとして……」

「あ? 今、俺のことチビって言ったか!?」


 DはBから視線を外しながら、溜息を吐く。Bは小柄なことを気にしている。今日のジェットコースターも乗れるか気にして、毎日牛乳を飲んでいた。しかし結果は惨敗だ。


「C、お前は身長を伸ばすBに倣って牛乳を飲み過ぎだ。三日で195センチまで伸びるか普通? お前の成長期わんぱくすぎるだろう?学校の天井に刺さるぞ?」

「俺の成長期が……すまん」


 Dの指摘にCは無表情だが、心なしか寂しげに頷いた。Dは心優しい為、Bに付き合い牛乳を沢山飲んだ。その結果、急成長を遂げた。彼は身長が高過ぎる為に、ジェットコースターに乗ることが出来なくなった。


「それからA、お前はこいつらのノリに合わせんな。ツッコミ役が一人だと大変だ」

「……つい、ごめん」


 最後にDは僕を呆れたように呟いた。僕は流されやすい性格なのだ。でもそれも、皆といると楽しいからだ。


「……別に、ジェットコースター以外でも乗れるのがあるだろう?」

「っ!!」

「B……」

「やった!」


 照れくさそうにDが頬を掻きながら小さく告げた声を聞き、僕たち三人は目を輝かせた。やはり僕の友達は最高だ。


 翌日の学校にて、Cが天井に刺さるという事件が起きたがそれは別の話である。



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