第5話 管理者の欲
お待たせ致しましたー
(……なんじゃ?? なんじゃ、この良い香りは!!?)
今日も今日とて、ダンジョンの管理をしていた妾は挑戦者が来るまで最下層とその中間で惰眠を貪っていた。
そんな時に、眠気を吹き飛ばす勢いなくらい……とても良い香りがしてきたのじゃ!!?
嗅いだことがあるようで違う……これは、甘辛い? と言うのか??
鼻をくすぐる良い香りは……まだまだ上の階層から漂ってきたのじゃ。
挑戦者の知らせはあったから……腹を満たすのに、炊き出しをしているのか??
じゃが、肉も魚も……食事になる獣がおらぬこのダンジョンで炊き出し……どう言う輩じゃ??
(……ああ、ああ。じゃが、良い香りじゃ!!)
食事を必要とせん妾に、胃袋とやらが刺激を受けているような。腹の部分が軽く鳴ったような……それは気のせいであるが。
妾はただの生がある者ではないからのぉ。
『ううむ。気になる……気になるのぉ』
本来、ダンジョンの管理者である妾が持ち場を離れることはあまり良くはないのじゃが……これは、気になってしまう。
眠気も覚めてしもうた故、この珍事を目の前にするのも悪くはない。
であれば、管理者として挑戦者が攻略するのを見ていくのも一興。
妾は意識を浮上させ、姿を変えてその階層へと瞬時に転送させて行った。
(!? 強い香りじゃ!?)
じゃが、もう食したのか……香りだけしかないのじゃ!!?
挑戦者らしい影が三つあったが、それぞれ満足げに腹をさすっていたからじゃ!?
「美味しかったですの!!」
「美味かったぜ、トラディス?」
「ありがとうございます」
かまどから覗き見ると、耳長の女子と金の髪のいくらか美しい男が……小柄な愛らしいような男に礼を言っておった。
やはり、食いつくされていたのか……さっさと決断せぬ妾のバカバカ!!?
姿を変えたまま、ジタバタしていると……何かに持ち上げられる感触を得た。
なんじゃ? と振り返れば……あの愛らしい方の男が、妾を抱き抱えていたのじゃ。
『!?』
「可愛い!? クダウサギ??」
愛らしい顔立ちを、さらに愛らしく緩ませていた。
そう、今の妾は本性ではなく……悟られにくいように、クダウサギという獣に化けておるのじゃった。
『きゅー!』
それらしい鳴き声を上げれば、男は優しく頭を撫でてくれた。優しい手つきに、思わず絆されてしまいそうになったわい!!?
「匂いにつらてきちゃった?」
『きゅー(そうじゃ……)』
口で話したら警戒されるがゆえに、クダウサギの声で語りかければ……男は妾を下ろすと、何かをさっさと作ってくれたのじゃ!!?
次回はまた明日〜




