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第5話 ここから冒険者③

お待たせ致しましたー

 まだフードは被っておいた方がいいとフランツに言われ、僕は少し慎重になりながら街の外れに向かう。


 ギルドで、ギルドマスターのエクレアさんに言われた通り……簡単な採取の依頼(クエスト)を出来るかどうかの腕試しをすることに。剣術とか体術については……フランツと連携したら出来ることはわかっても僕自身の技量なんかじゃない。フランツには鍛えてもらう予定はあるが、今はきちんと頼まれ事を遂行しよう。


 衛兵さんに、依頼(クエスト)の用紙を見せてから門をくぐり、フランツに外の様子を気をつけるように言われたので一旦茂みに入ったら。



「あんのバカトラ!? どこ行きやがったんだ!!?」


「多分、魔剣持ち逃げしたよなあ?」


「近い街はここしかねぇ……。ギルドに行って、冒険者証は剥奪してもらおうぜ??」



 と、元メンバー達がちょうど通り過ぎて、僕がさっき出てきた門に向かって行ったのだった。



【ギリッギリやったなぁ?】


『……ほんと。まだ僕を探してたんだ?』


【ワイを連れて行ったからやろ? けど、逆に好都合やわ】


『なんで?』



 このまま、彼らがギルドに行ってもエクレアさんに訴えに行くだけだろうに。


 僕が聞くと、フランツはテレパシーでふふんと鼻を鳴らすような音を出した。



【マスターの実力とかを、今の冒険者証のカードに全部あんのはあのギルマスが把握しとる。しかも、マスターはワイとゴロツキを倒して……ギルド自体にも恩を売ったことになったやろ? なら、信頼しとるマスターのカード剥奪どころか、自分らの首締めに行くだけやで? あのアホンダラ達は】


「……そうなの?」



 けど、頭の回転が悪い僕でも、ゆっくりフランツの言葉を理解していけば、なるほどとわかってきた。



【せやから、マスターは自分のことを考えるだけでええで? 依頼(クエスト)はなんだったん?】


「えーっと」



 用紙には、エレネ草の大きめの葉を三十枚採取とだけあった。これくらいは初心者レベルだが、僕はフランツを手に入れてももう一度冒険者をやり直す身だ。


 これくらいこなさないといけないからね!



【エレネ草かあ?…………検索(サーチ)完了! 朝飯食った場所にぎょーさんあったで??】


「わ、ありがと! ここから往復……僕の脚の出番だね!!」



 フランツのリンクと言うのを使わなくても、僕の俊敏性の高い脚力なら問題ない!!


 行くぞ!! と走り出したのはいいけど……ほんの少しでダウンしちゃった。原因は……。



【昼飯まだやん? 適当な野営地まで頑張り? 街でちょぉ食材買ったんやから、なんか作ったる】


「…………お世話かけます」



 再スタートを切ったはいいけど、まだまだ完全に体の回復が整っていないのですぐに空腹で倒れてしまった……。


 野営地について、すぐにフランツが野菜たっぷりのミネストローネと言うトマトスープを作ってくれて、まだ余ってたフランスパンは固いけど……美味しいサンドイッチとして食べさせてもらった。


 その後にはきちんと食休みと言う昼寝をして……完全に回復したら当初の予定通りにあの湖までダッシュして、採取が無事に終了したらギルドに戻ったんだけど……。



「こんにちはー……?」



 戻ったら戻ったで、ギルドの中が異常に騒がしかった。なんだろうと中に入ると……エクレアさんが居て大きなため息を吐いていた。



「ああ、君か。トラディス君、おかえりなさい」


「ただいま戻りました。……どうかされたんですか??」


「ええ、ついさっきですが。君が抜け出してきた()冒険者達が乗り込んで来たんですよ」


「も、もと?」


「彼らの証言と君への虐待態度。加えて、カードに組み込んでいる賞罰の判別をしたところ……昼前のゴロツキ以上のことも、君の知らないところでおそらくしていました。なので、即刻牢屋行きにしたんです」


「……え?」


「ギルドマスターの権限を持つ人物は、カードの賞罰項目を読み取れるんですよ。なので、私はギルドマスターとして、彼らから冒険者の証明を剥奪しました」


「…………そうですか」



 意外とあっさり、終わってしまった事実を聞くと……僕は胸の中に穴が空いた気分になったのだ。


 なんだかんだ言っても、彼らとは仲間だったから……そこから僕も逃げたけど……僕への八つ当たりのような虐待以外にも犯罪をしていたのは知らなかった。


 採取結果をエクレアさんに渡し、合格点と一応の報酬をいただいてから僕は宿に戻った。



【……あんま、気にし過ぎもよくないで?】


「……うん」



 フランツは思念体の手で僕の髪を撫でてくれた。


 それでも僕は、その日はなかなか寝付けなくて……次の日、気づいたら寝てたので……起きたら、ほっぺを軽く自分で叩いた。



(……ひとりじゃないんだ)



 彼らは取り返しのつかないことをした。


 僕も加わっていたかもだけど、エクレアさんのお陰で違う道を歩めた。それにはフランツも一緒なのが大きい。



【おはようさん、もうちょいしたら朝飯の時間やで?】


「うん!」



 とにかく、このへんてこりんな魔剣と冒険者稼業を始めるんだ!!

次回はまた明日〜

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