第30話 トラウマ
なんだったんだ...。
フリィが部屋のあちこちをキョロキョロ見渡している。
何かを探しているのだろう。
「何探してるんだ」
「変な石」
「変な石?」
石...。あれだけの炎がなくなったわけだが、その石があるのかどうかも怪しい。
なんか足元の凹凸を感じるのは気のせいだろう。
うん、気のせいだ。
少し足をずらすと、宝石のようなものが床に埋め込まれていた。
多分これのことだろう。
「見つけたぞ」
「え? どこどこ」
俺は足元を指さす。
フリィが足元を見た途端、俺にへばりつくや否や床に埋め込まれている宝石のようなものを取り出した。
「はい、これ」
「渡されても困るんだが」
「受け取らないと消えるよ? お城一個分の石」
「は? 何言って...」
俺が触れた途端、部屋の雰囲気が一変した。
辺りは何もかもが真っ白ではなくどこか懐かしい風景の場所になった。
「どうなってるんだ...なんでここなんだよ...よりにもよって」
その風景は、一面芝生が地平線の彼方まで続いていた。
そして俺達の背後には小さな小屋が立っていた。
「ふ~ん。十年もここに住んでたの?」
俺は何も言えなかった。
フリィがこっちをじっと見ているのになにも。
「まぁいいや。いこ? 先行くんでしょ?」
「あ、ああ」
小屋に入ると見覚えのある机や椅子、大量の本が散らばっていた。
壁には召喚獣が描かれた絵が大量に貼っており、その中には召喚獣達の記録が記されていた。
「旅に出る前の状態とか...」
「旅? 例の勇者達の?」
「ああ、あいつらが俺の師匠を探していた時師匠はその時はもう姿を消していた。いわゆる行方不明だ。弟子の俺を拾っておきながらあちこちを転々とする人だった」
「だったてことは」
「ああ、あいつらが殺したんだよ。ここに来る途中でな」
その話はこれまで誰にも言わなかった。
なぜフリィにしゃべったのかはわからない。
すると、フリィが黙って俺の背中から抱きしめてきた。
安心感と共になぜか涙があふれてくる。
「なにもしゃべらなくていいから。ごめんね...本当に」
あの勇者たちを選んだのは創造神としてのフリィだ。
最初フリィが創造神と知ったときは恨んだ。
なんであんな奴らを選んだのかと。
答えは簡単だったのだ。
俺がいたからだ。
「ごめんね。何言っても許してくれないよね」
「......馬鹿だな」
「え?」
「俺はさ、師匠が俺にくれたこの力でお前と会った。それだけで十分だろ」
「でも...」
フリィが、ずっと俺を抱き締め付けてる場所から抜けたし、フリィの驚いた表情からそのまま唇を奪った。
なんでこの時こうしたのかは今でも分からない。
「あ...あ...」
「こういうこった。だからこれ以上謝るなよ?」
「...うん」




