第17話 邪神 アバルード
「どお? 美味しい?」
一気に口にいれたせいで何の味なのかさっぱりわからん。
美味しかったけども...。
「うむ。味わからんくなっていたがうまかったぞ!」
正直に答えたつもりなのだが、二人から変な目で見られた。
味覚えておいてよね!的なあれかもしれない。
舌打ちがなんか聞こえてきたけど気のせいだよね?
「まぁいいや。さてとそれぞれ自己紹介ぐらいしてあげないよ? まぁこの後でもいいけど」
急に眠気が出てきた。
どういうことだ?
まさか睡眠薬か...一体何を...。
『そのままじっとしてないと死んじゃうよ? マスター』
ついにはフリィの幻聴まで聞こえてくる。
まずいなぁ。ほんとなんだか、おかしすぎる頭がぐるぐるする。
なんだこれ...。
「押さえてて、そのまま。早く!」
「すまねぇ、マスター」
フリィと狼青年の声が聞こえてくる。
何してんだ?
麻酔でも撃たれたかのような感じで全身がマヒしている。
「次、電子パルス持ってきて」
「きゅぴ!」
「ありがと、これでこうすれば...」
なんか一気に何かが抜かれるような感じがあった。
今までの大切なものを失ったような感じと似ている。
何を抜いたのか気になるものの声すら出せない。
というか、なんで眠っているのに意識があり、声が聞こえてくるのかよくわからん状況だ。
「うん。これで良し! マスターお・き・て?」
なんかほっぺをツンツンされるんだが、麻酔のせいで反応すらできない。
まずいなこれ。
どうやって反応すれば...。
なんかいつの間にか目を覚ましていた。
全身動かなかったが、なぜか今は普通に動く。
「一体何やったんだ...」
「え? ああ、私の力と邪神の力を抽出しただけだよ?」
「電子パルス意味ないだろそれ!」
「聞いてたの? まぁいいや」
「ておい、待て」
俺の前からフリィ消えた行った。
なんか、以前よりも力があふれてくる。
そうなってんだ。
『システム起動:構成、複製、建造、修復を実行』
なんか嫌な予感しかしないアナウンスが流れてきた。
まさかなぁ...。
『起動を確認。肉体からの分離を開始。成功』
俺の腹の上にはそのアナウンスと共に、何かが俺の中から出てきた。
人だよな? なんかめっちゃ黒いオーラ身にまとってる女の子。
やばいきがする。
「成功したか。なら良しとするか」
「そろそろどいてくんない?」
「ほー、これまたいい素材だ。どうしてここに人間が、
ん? 待てよお主 あっちの世界で●●△△と呼ばれておらなんだか?」
「なぜそれを...」
記憶の世界でみてきたあちらの世界の名前だ。
当然知っているのは思い出した俺とフリィぐらいだろう。
あの世界に召喚された別世界の勇者の名前を。
「なるほどの。まぁよい、お主に借りがあるからの」
「借り? そんなのないだろ...」
あちらの世界の知り合いなのだろうが、こんなこ俺の記憶では一度もあったことがない。
あったとしたら、あの時に思い出しているはずだ。
「そういうことか、ふむ? あいつもここにいるのだろ?」
「あいつ?」
「この世界を作り出し我が世界を破壊し、飲み込ませた女よ」
「我が世界...まさか!」
「読みが早いのは助かる。我が名は邪神 アバルード、かの世界を無に帰した神よ」
どうしてこいつが...。
なぜだ、俺の中にあった力の一部はフリィが回収したと言っていた。
しかし、アバルードはここにいる。
「しかし、お主中々いい体してるではないか。あの女が好きになるのもうなずける」
「なに勝手に触ってやがる!」
「ふふふ、よいではないかこれくらい。我と一緒に暮らしたのはかの娘よりも長かろう」
「いやいや、ちげええだろ!」
よくわからん部屋で二人っきりなんだが、その部屋にもう一人の気配を感じた。
なんか、すっごく怒っている。
「へぇーマスターてそんな趣味なんだ~」
「ま、まて誤解だ! てかこいつ止めてくれ!」
なんかこっちに手を向けてきた。
まずい!
「じゃ、目が覚めたらケーキ一年分だからね?」
と言ってめっちゃくちゃ怖い顔でこっちをにらんできた。
終わったな。
俺の意識は、フリィが放った金色の炎によって消えた。




