プロローグ② 最強召喚獣召喚できてしまったんだが...
とりあえずギルドにでも行くか。
さすがにただ泊っている他の客人に迷惑だろうからなぁ。
エレーβ?かエレベーターかなんか知らんが、さすが最東の国。
観たこともないものばっかりだ。
しかし、どのボタン押せばいいんだ?
なんか30個ぐらいあるんだが...。
「あ、ども。押していいですか?」
「どぞ」
浴衣という召物を着た女性がエレベーターに入ってきた。
手には、木の桶とタオル、四角くてこすると泡がでる石鹼と呼ばれるものを持っていた。
女性がボタンを押した途端、急に箱が落ちるかのような感覚に包まれた。
おいおい、大丈夫かよこれ...。
『ピコン、一階です。扉が閉まります』
やばいやばい。あやうく閉じ込められるとこだった。
ボタンがあった基盤を見る限り女性が押してくれたのだろう。
東洋の礼をすると、女性はクスッと笑いエレベーターに乗って上に上がっていった。
「あら、もう大丈夫ですか? 櫟原さん」
声をかけてきたのは、女将さんの結衣さんだ。
「ええ、まぁ。あ、これ宿泊料です」
ポケットにしまっていた金貨四枚を渡した。
日本円で40万円あたりらしい、てなにいってんだ俺。
「いいのよ。もっといても」
「いいえ、パーティー追い出されたのでもう裕福はできなくて...。」
「なるほどね、じゃあ部屋はこのまま使ってくれて構わない。その代わり櫟原さんの冒険の話を聞かせて」
驚いた。
部屋は使ってていいてことは無料? いや冒険譚が料金てことか、なら...。
「ええ、いいですよ。でもよろしいんですか?」
「いいのよ。せっかく行方不明になった我が子が戻ってきたのだもの」
いいのよのあとから聞き取れなかった。
まぁお言葉に甘えるとしよう。
「では、よろしくお願いいたします」
「ええ、こちらこそ」
「じゃ、ギルドに用事あるので話は夜にでも」
「はい」
《最東の国》《最後の街》――《ひるま町》《冒険者ギルド》
見た目は和風な城だ。よくこんなもん作ったなとしか言えない。
扉を開けて中に入る。武装している冒険者達が俺のことをじろじろ見られているが気にしたら負けだよな。
クエストボードの目の前に来たのはいいが、いいクエストが...お?
―――――
オーガ討伐
報酬 金貨10枚
―――――
あ、そっか俺の場合攻撃するモンスターいないんだったわ。
大半癒し系だし...。
はぁ...。
「何かお探しですか?」
声をかけてきたのは、和服姿のお姉さん。
案外大きい...。いや俺は小さい方が好み、しかしけしからん。
視線に気づいたのか、お姉さんが一歩後ろに下がってしまった。
「すみません。この国に来たものの周りの女性が美しくてついつい」
「ダメですよ。あんまり見ては、で何かお探しなんですか?」
う、申し訳ない...。
仕方ないじゃないか、思春期真っ只中の男子だからなぁ...
「いや、さっき諦めたとこです。ダンジョンがあるならそちらに向かいたいのですが」
「なるほど、では冒険者カードを見せてください」
「あ、受付の人なんですね」
「今更ですか?」
「すみません」
「ふふ、変な人」
ベルトにつけていたポーチから冒険者カードを取り出し、お姉さんに渡した。
「拝見しますね。あ、おkです。冒険者ランクB以上の人は入れるダンジョンなので」
「あ、ども。場所はどこですか?」
「えーとですね。確かここですね」
お姉さんは『マジックポーチ』から大きな古びた地図を取り出し広げて見せてくれた。
ん? これ何年前のやつだ?
「なるほど、じゃあ行ってきます」
「はい。気をつけてくださいね!」
《最東の国》《最後の街》――《修羅の門》《第一層》
お、ここかしかし、いかにもダンジョンて感じだな。
よしあいつら呼ぶか!。
「スライム召喚!」
・・・あれ? 出てこねぇ俺のスラ太郎どこにいきやがったああ。
仕方ねぇ、あいつを呼ぶか!
「変なおっさん(変態)召喚!」
お、魔法陣が出てきたな。
嫌な予感しかしないが...。
「あら、シャルクちゃん。久しぶりねぇ~」
「ども、今日はこのダンジョンを攻略したいのでよろしくお願いいたします」
「いいわよん。報酬はシャルクちゃんの厚いキッスがいいわねぇ...。」
辞めてくれマジで...。
変なおっさんは偶然召喚できた召喚獣(人間)だ。
いわゆるおねさん系おっさんなんだが、ゴブリンの集団相手に拳でケンカを売る武闘派だ。
「冗談でしょ、行きますよ!」
「シャルクちゃんのい・け・ず~」
ギルドでもらった地図を頼りにあちこち回っていたんだが、襲い掛かってきたのはゴブリンとスライムのみ。
変なおっさんには敵なしだ。俺は違うが...。
戦闘最中は、俺は何もできない。魔法は使えない、剣は振ったことすらない。
おかげさまで勇者パーティーにいるときは荷物持ちをしていたのである。
「見てみて、シャルクちゃん。宝箱よ!」
こんな浅い層に宝箱なんかあるはずもねぇ。何かがおかしい!
「やめろ! それに触れるな!」
「え? そういうの先にちょう...だ...い」
アラーム音が鳴り響きモンスターが集まってきやがった。
しかも、変なおっさんは宝箱に化けたモンスター。ミミックに腕をかじられ消えていった。
死んだな...。
ミミックを中心にモンスター達が俺を囲んだ。
終わったな...さすがになにもできねぇ...
早く殺してくれよ...。
『裏コード:αのパスワードを確認。システムを起動します』
目のまえに文字が表示されている。
なんだよこれ...。
なにいってんだよ...。
あちこち、ゴブリンに殴られ、ミミックに噛みつかれ、スライムに服を溶かされた。
もう死なせてくれよ...。
『お主は死なせん! 絶対にな』
突然誰かが俺の頭の中に語り掛けてきた。
はぁ? なにいってやがる...こんな状況から抜け出せるのかよ...
『当然だ。我との契約を忘れてしまったのだろ? まぁよかろう。あいつを送るしばし待て』
待てるわけないだろ! こんな状況で!
ギリギリ動く折れた右腕でミミックを殴ってみたがびくともしねぇ...。
『待たせたな。口だけは動くじゃろ? 召喚しろお前の相棒を』
俺の相棒? 誰だよそれ...。
『いいから、わしのいう通りにしゃべれ! いいな!』
生きれるなら...強くなれるなら...。
『良かろう。我に続けよ』
「『紅蓮の炎を纏い天高く飛び出す、竜のごとく不死の鳥よ。我がもとに馳せ参じよ!』」
「『いでよ。フェニックス!!』」