精霊信仰/ファファル教
◎精霊信仰
この世界に於けるアニミズム的な位置づけの原始宗教のことで、先祖崇拝と自然崇拝を併せ持つ。ここでいう精霊とは、神格化された自然現象と先祖の霊の総称であり、そこに固有の名前や姿は存在せず、巨木や巨岩、川や滝を精霊が降り立つ聖なる場所とし、祭祀場を設けて崇拝していた。生贄の儀式もあったようである。
かつては、各地域に根ざした精霊信仰が存在していたが、時代を経ると共に廃れていき、現在、残っている純粋な精霊信仰は、アキハール山脈特別自治区の精霊信仰のみである。また、各宗教に見られる先祖供養の祭りやグロム王国の竜鎮祭にその名残りを見ることが出来る。
◎ファファル教(新興宗教)
自身を昇天の予言に記された『再臨の代弁者』にして、神から遣わされた救世主であると称するファファルによって立教されたゲセブ教系の新興宗教団体で、正しい信仰に基づく地上の楽園の建造を説く。
エラローリア大陸とアルストゥリア大陸を中心に布教活動をしており、急速に信者数を増やしている。
エラローリア法王国とグロム王国では、邪教として要監視対象になっている。
崇拝対象は教祖である救世主ファファルである。
教典は救世主の言葉を記した『標の書』と、神の言葉を記した『導きの書』である。標の書は教義と戒めを中心としており、導きの書はゲセブ教の神言書を独自解釈したものである。
エラローリア法王国とそこに関わっていた国々は、罪深い国であるとしており、一部の信者に対しての罪を拭い去り、神の赦しを乞うための修行と称して高額な献金をさせることでも有名である。
教団の最高指導者は救世主で、その下に伝言師父と呼ばれる幹部聖職者がおり、その下に伝言師兄と呼ばれる一般聖職者がいる。
【ファファル教教義】
まやかしの宗教であるゲセブ教を信仰するエラローリア法王国及びその関係国は邪教の国であり、エラローリア法王は偽りの代弁者である。
神は、地上に真なる神の国である地上の楽園を打ち立てるために咎人病を撒き、正しき信仰に目覚めた人々を救済するため、ファファルを地上に遣わした。
ゲセブ教の予言にある再臨の代弁者は救世主ファファルである。
まやかしの教えであるゲセブ教を信仰するエラローリア法王国及びその関係国は罪深い国であり、その国の者は罪により地上の楽園に入ることは出来ない。楽園に入るためには、罪を拭い去り、神の赦しを乞うための修行を行う必要があり、その修行とは汚れた財産を投げ捨て、魂を浄化することである。
【テルナス(戒律)】
救世主の言葉を疑ってはならない。
救世主の言葉に背いてはならない。
悪魔に支配され、魂の穢れた者は修行に励み魂の浄化を行わなければならない。
殺生をしてはならない。しかし、魔王の僕は滅しなければならない。
他の宗教はまやかしである……他。
【礼拝の仕方】
ファファル教の礼拝は、朝、昼、夕の一日三回行うことになっている。
そのやり方は、まず、導きの書を額に当てながら神への祈りの言葉を唱えた後に導きの書を開き、一番最初に目にした言葉を口にするというものである。
【宗教儀式】
月の初めに当たる日と、年始にゲルデン山にある大聖殿で救世主ファファルの説法と、集団礼拝が行われている。また、年末には神への祈りと感謝を示す感謝祭が開催される。
また、一歳になる子供に救世主ファファルが祝福をする祝福の儀という儀式が存在する。
結婚式は伝言師父と伝言師兄の立ち合いのもと、神への祈りと誓いの言葉を述べたあと、親族や友人などの近しい人達に料理を振る舞い、彼らの前で結婚式が終わった事を報告する。と、いうものである。
また、葬儀は遺体を教団施設の地下にある共同墓地に納めた後、伝言師父による弔いの言葉が述べられ、神と故人に祈りの言葉を捧げる。
その後に参列者全員で、細かくした香木を額に当てて祈りの言葉を唱えたあと、香炉に入れて焚き、魂を天に送り届ける。(香を焚くのは魂をあの世に送るための道標を作るためである)
【補足説明】
この世界の古代人は自然を人知の及ばない恐ろしいものと、捉えていました。そして、自然に分かりやすい姿形を与える事によって、自然を理解できるとも考えていました。
やがて、古代人達は自然も人間と同じで機嫌次第で自らの声に応えてくれるのではないかと考えるようになりました。ここで、原始的な祭祀という行為が生まれました。こうしたらこうなった、これはダメでこれは良い、と、いったふうに彼らなりに成功と失敗を記録し、コミュニティの中で共有していきました。
やがて、農耕文化になると、コミュニティの中でそれまで蓄積された祭祀の経験を体系化し、それを専門に行う者達が現れました。そして、それは時の流れの中で洗練されていき、祭祀を司る者達がそのコミュニティを支配するようになりました。支配階級の誕生です。そして、支配階級の正統性を主張するために神が生まれ、宗教というものが誕生しました。また、この時に祖先崇拝という概念や死者を慈しむ気持ち、弔う気持ちが誕生しました。