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【Web版】氷の侯爵様に甘やかされたいっ!~シリアス展開しかない幼女に転生してしまった私の奮闘記〜  作者: もちだもちこ


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とある精霊王は毛玉に戻りたくない


 我は精霊王である。名前はまだない。

 あるじは「モモンガさん」などと呼ぶが、人型になった今としては微妙な仮名となってしまっている。


 我のあるじは、自称「二度目の人生を送っている幼女」らしい。

 確かに人間世界の常識に疎い我でも、主は年齢のわりに聡明だと思う。実際、大人顔負けの学力を持っていると感じることは多々あった。


 我は精霊を統べる王である。

 基本、精霊というものは相手がどのような存在なのかを『魂』で判断するもので、王である我には見えない存在ものは皆無なのである。


 だがしかし。


 初めてあるじを見た時、我の目に鮮明に映り込んだのは「黒髪の少女」だった。

 今の年齢よりも少しだけ成長した姿は愛らしく、その外見は人間たちの庇護欲をそそるだろうと思われた。

 人の中には、稀に現世と違う姿を持つものがいるが、ここまで鮮明に見えるのは初めてのことだ。悠久の時を漂うせいれいおうが、まさか初めての経験を得てしまうとは。


「これが、私? なんで!? 確かに姿は変わってるけど、ちょっと成長したくらいって……」


 なぜその姿なのか。

 それは、主の魂の姿が「それ」だからだ。

 ありのままの姿だと伝えても、なぜか主は落ち込んでいるようだった。


 まさか、もっと歳をとった姿だと思っていた、のか?

 いやいやそのようなことはないだろう。

 思い出してみよ。主が今までどのような行動をとってきたのかを。


 氷の親子が「主の(魂の)絵姿を残すにはどうすればよいのか」などというやり取りをしているのを、それをどう阻止しようと必死に考えている主を我はジッと見る。


「ん? モモンガさん、なに?」


「……いや、気にするな」


「ちょ、その言いかた、絶対気になるやつ!」


「あー、魂の姿だと、あるじは噛まないのだなと思ってな」


「当たり前でしょ。私は元々アラサーだったんだから」


「む? あらさー?」


「三十代くらいってこと」


「まったく主は、おかしいことばかり言いおって」


「おかしくないもん! 本当だもん!」


 肉体と魂は違うのだ。主が言い張っている「三十代」は肉体の年齢なのだろう。

 つまり、実質その外見が主の「魂の年齢」であり……。


「……ぷっ」


「あーっ! 笑った! いま笑ったでしょ!」


 いやいや笑ってはおらぬよ。

 口から空気が漏れただけ、であるぞ。


 さて。

 精霊界に入ったところで、氷のと主が離れても大事ない状態となっている。

 我のすることは、氷のに刻まれた魔法陣の解析であるのだが……。


「主よ」


「なによっ! モモンガさんなんか、帰ったらモッフモフにしてやんだからっ!」


「そ、それはさておき、だな。氷の親子が……」


「あれ? お父様とお兄様は?」


「ふむ……案ずるな。じきに戻ってくる」


 どうやら氷に惹かれた精霊たちが、彼らを連れて行ったようだ。

 用が済めば戻ってくるだろうし特に問題はないはず、なのだが。


「モモンガさんには分かるの?」


「主よ、我は今代の精霊たちを統べる王ぞ。精霊界で起こっていることは全て把握しておる」


「つまり、お父様とお兄様は連れて行かれたってこと?」


「……なぜそう思う?」


「なぜも何も、お父様たちが私に何も言わずにどこか行くなんて、あり得ないでしょ」


 我が主と出会った頃は、このようなことを絶対に言わなかっただろう。

 しかし精霊界で「魂の姿」まで見られた今、揺るぎない愛情を感じた主は、さすがにもう「嫌われないようにする」などと、あさっての方向に頑張ることはないと思われる。たぶん。


 ずっとガムシャラに動いていた主を見ていた我だから、この状況は好ましいと感じている。

 ありのままを受け入れてもらえるというのは、人間にとって重きことであるのだからな。


「……成長したな、主よ」


「むぅ、体はこんなんだけど……あれ?」


 不思議そうに己の体に触れている主。

 少女の外見から、成長しているようだから伝えたのだが……気づいていなかったようだ。そしてまだまだ成長は止まらないように見える。

 これは珍しい現象だ。まさか主の「魂の成長」を見れるとは思わなかった。

 まったく、主には驚かされることばかりである。

 

「魂が成長しているのであろうな」


「いやちょっと待って! なんで服がキツくなっていくの!?」


「精霊界では、人の世界での理が作動しないのだ」


 確か……主の服などに刻まれた魔法陣には、体形に合うよう設定されていたのだったか。

 ふむ、なるほど。


「裸になるのいやあああああ」


「今、布を取り寄せておる、落ち着くのだ主よ」


「はやくしてえええええ」


 体に食い込まぬよう、主の服のボタンを外してやっていたところ、痛いほどの冷気に包まれる。


「貴様……」


「む、氷の……っ!?」


 人間の事情に疎い我でも、今の状況は瞬時に把握できた。

 違うぞ。

 我は別に無理やり脱がしているわけではなくてだな。


「貴様どうしてくれようか……毛玉に戻った時、おぼえていろ……」


「父上、その毛玉の毛を剥いでしまいましょう」


 やめよ! 誤解であるぞ!

 なぜ精霊界では魔力が使えないはずなのに、体が凍っていくのだ!?


 我は、我は無実だー!!





お読みいただき、ありがとうございます。

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