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66、思い込んでいた幼女


「きゅー……(ひどい目にあった……)」


「おつかれ、モモンガさん」


 お風呂で毛並みがふわふわになったモモンガさんを、優しく撫でてあげる。

 なぜか私の頭をお父様が撫でているのは、対抗しているのかしら?


「きゅ!きゅきゅ!(そうだ主!石を見つけてきたぞ!)」


「それって、せいれいせき?」


「きゅ、きゅきゅ!(よくわからぬが、強い力が宿っておるぞ!)」


 魔石は魔獣から取れたり、魔素と呼ばれるものが多い場所に落ちていたりするものだ。(出典、本田由梨の設定メモより)

 モモンガさんは「精霊界にも似たようなものがあるぞ」と取りに行ってくれたのだけど、よく分からないものを持って帰ったってことでファイナルアンサー?


 モモンガさんの好意に甘えたとはいえ、この件に関しては、お父様の危機的状況を打破するためのものだ。

 フツフツと怒りが湧いてくる私に、当のお父様が優しく諭してくれる。


「ユリアーナ、気持ちはありがたいが、この生き物を責めるな」


「でも、ベルとうさまが……」


「この生き物から強い力を感じる。だから大丈夫だ」


「それなら、いいのです」


 お父様がそう言うのなら、きっと大丈夫だろう。

 私の怒りが消えたことにモモンガさんもホッとしているみたい。ごめんね、怒っちゃって。


「きゅ。きゅきゅ(良いのだ。氷のは主にとって大切な人間であるからな)」


 た、大切ってぇー、そんなことあるけどぉー、面と向かって言われると照れちゃうっていうかぁー。


「それで? 石はどこにある?」


「きゅ!きゅきゅ!きゅ!(心配するな!ちゃんと持っているぞ!手を出せ!)」


 モモンガさんはお父様の手に、取り出した二つの石をぽぽんと置いた。


 ……頬袋から。


「セバス」


「しばしお待ちを」


 スッと目の前に白いハンカチがかけられたと思うと、手品のように石が消えた。


「きゅーっ!!(何をするーっ!!)」


「モモンガさん、おちついてー」


 頬袋から出てきたから、なんかアレだったんだよ。

 ほら、セバスさんがハンカチで綺麗に拭いてくれたよ?


「旦那様」


「……ふむ、これが精霊石か」


 あ、もうこの石は「精霊石」でいいのね。


「へぇ、確かにませきよりも強い力を感じるし、純度も高いなぁ」


「分かるのか?」


「仮にもペンドラゴンの名を持ってる俺に、言うことじゃないな」


 お師匠様が、相変わらず赤ちゃんに髪をヨダレまみれにされながらも話を進めてくれる。

 なんか育児中にご迷惑をおかけしております。


「きゅきゅ!(これより大きいものもあったぞ!)」


「おおきいって、どれくらい?」


「きゅーきゅ!(この部屋くらいの大きさだった)」


「それはちょっと……もってくるの、むりそうだね」


 モフモフとした毛並みをブワッと膨らませたモモンガさんは、石の大きさを一生懸命伝えてくれる。

 でも、部屋くらいの大きさの石があるなら、今あるものよりも大きいのがあるってことだよね。

 モモンガさんとの会話を聞いていたお父様が、不思議そうなたぶんをしている。


「これだけしか持ってこれなかったのか?」


「きゅっ!(我の体では無理だな!)」


 堂々と言い放つモモンガさん。


「きゅきゅっ!(だからお前たちが持ってくればいい!)」


 さらに堂々と言い放つモモンガさん……って、ええっ!?

 私たちも、精霊界に行けるの!?


「せいれいかいに、いしひろい?」


「ユリアーナと離れることはできない。私も行こう」


「おいおい、やめとけランベルト。人の身で精霊界なぞ行ったら大変なことになるぞ」


「私たち獣の民でも、精霊の森近くで住めるくらいの耐性しかないのよ」


 そうなの?

 お師匠様と鳥の奥さんの言葉に、お父様を見上げた私は優しく抱きしめられる。


「大丈夫だ。私がなんとかしよう」


「いや、ぜんぜん大丈夫じゃないから。なんとかできないから」


「ペンドラゴン、私を見くびるな」


 冷んやりとした空気が流れ、治まっていたモモンガさんのモフモフがブワッと膨らむ。

 お父様の様子に、お師匠様はやれやれと首をすくめてみせる。


「わかっているさ。でもな、今のお前は本調子じゃない」


「しかし……」


「それに、何が起こるか分からない場所で、嬢ちゃんを守りきれなかったらどうする?」


「……」


 いつになく強い口調のお師匠様に、さすがのお父様も黙ってしまった。

 いやいや、私だって自分のことくらい自分で守れますよ?


「父上、私もついて行きます」


「おにいさま!」


 思わず立ち上がろうとして、お父様シートベルトに遮られる。急な動きに安全対応。

 苦笑したヨハンお兄様は私たちの近くに来ると、お師匠様と鳥の奥さんに向かって丁寧にお辞儀をした。


「お久しぶりです、ペンドラゴン殿」


「ん? 王宮で会わなかった……か。お互い忙しかったからな」


 そうですね。お父様のせいですね。

 私が家出しなければとも思うけど、そこは原作に合わせようと頑張った結果だから許してほしい。結果、こんなんなっちゃってるけど。 ところで、お兄様も一緒に精霊界に行くというのは?


「父上と私が一緒なら、危険度は下がると思いますがいかがでしょう」


「……はぁ、確かに精霊は『銀』を好むと言うが」


「きゅ!きゅきゅ!(だから我は!お前たちが行けと言うておろう!)」


 モモンガさんが、私の膝の上でプリプリ怒っている。

 もしや『銀』というのは、お父様とお兄様の髪色のことかしら?


「ヨハン、執務は?」


「王宮の執務については、マリクさんと友人たちが手伝ってくれると。学園にも休暇届を出しております」


「領地については?」


「それに関しては、セバスが対応すると」


 え、セバスさん侯爵領の運営も出来ちゃうの? 

 有能すぎない? さすがセバスさん、さすセ……。


「お嬢様、さすがに長期間の代行は難しいので、応援を呼びましたよ」


「おうえん?」


「大旦那様……お嬢様のお祖父様に当たる御方でございます」


 え?

 オ ジ イ サ マ ???




 生きてたのっっっ!?(失礼)


お読みいただき、ありがとうございます。


水害にあわれた方々に、お見舞い申し上げます。

皆様どうかご無事でありますように。

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