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【Web版】氷の侯爵様に甘やかされたいっ!~シリアス展開しかない幼女に転生してしまった私の奮闘記〜  作者: もちだもちこ


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氷の侯爵様は再確認する


 よりにもよって、ユリアーナの記念すべき日に呼び出すとは……事と次第によっては辞職してやると思い王宮へ向かったあの日から数週間。


「マリク」


「諦めてください。私も同じく家に帰って妻と子に癒されたいのです」


「……報告を」


「はい。北の山脈方面で発見された魔獣の群れは、スケルトン型と見られております。王宮騎士団は教会と連携をとり、王都手前で抑え込むことに成功したとのことですが……」


 魔獣の群れが発生するのは、よくあることだ。

 しかし複数の群れが同時に発生し、なぜかそのすべてが王都に向かってきたというからには、人為的な要因によるものではないのだろうか。


 報告を続けるマリクの言葉を、軽く手をあげて遮る。


「それではない。今日の報告のほうだ」


「ああ、そちらでしたか。ええと、本日のお嬢様は市場へ出られたとのことです」


「市場に!? なぜそのような場所に!!」


「外出許可を出されたのは室長ですよ。先日の報告の時に、執事の方に許可を出してましたよね?」


 確かにセバスから、ユリアーナの外出を許可してよいのかという問い合わせがあった。

 ペンドラゴンとセバス一門の者たちを、必ず護衛につけるならばよろしいと許可を出したのだが……。


「そのような危険な場所に行くとは思わなかったのだ」


「市場が危険、ですか?」


「馬車で町を移動するくらいだと思っていた」


「それ、外出じゃないですよね? それと、お嬢様から温室の使用許可が欲しいと追記されております」


「許可する。ただし、必ず人をつけるように」


「かしこまりました」


 続いてヨハンの報告を聞いたところ、学園で過ごす息子はフェルザー家の者として優秀な成績をおさめているということだった。

 これまで子どもたちの報告は必ず受けていたが、ユリアーナを本邸に移してから劇的に変わったことがある。


「ユリアーナは……どうだ?」


「どうだ、とは?」


「他には何か書かれていないのか?」


「はい。報告書にはこれしか……ああ、魔道具が入っておりました。こちらをお渡しいたします」


 マリクが手渡してきた魔道具は、映像と音声が映し出されるものだ。

 これはセバスだなと思いながら魔道具を起動させる。


『ことりしゃ、さむーい? だいじょぶ、だいじょぶよー』


 場所は屋敷の庭のようだ。

 東屋にいるユリアーナが、膝の上に何かをのせている。


 小さな小さなユリアーナ。

 甘く艶めく蜂蜜色の髪、神秘的な紫の瞳、それらの色はユリアーナだけのものだ。

 ああ、薄紅色に染まる頬を撫でてやりたい。柔らかな髪を優しくすいてやりたい。


 初めて目と目を合わせた時から、ユリアーナを思うと胸が締めつけられるような痛みに囚われている。

 不思議とそれを嫌だとは思わない。むしろ喜びすら感じている自分は、どこかおかしいのかもしれない。


 つらつらと考えながら映像を見ていると、真剣な表情のユリアーナが膝の上にのせたものに向かって歌い出した。


『ねんねんー、ことりしゃー、いいこにー、ねんねんよー』


 ……これは、なんだ?


 離れた席で書類整理をしていたマリクが、慌てたように立ち上がるのが見える。


「し、室長!? 何をされているので!?」


 問われても、私は声を発することが出来ない。

 これは、ユリアーナのこの歌は、まさか……。


「さきほどの映像の魔道具ですか!? 室長、まさかこれは呪……」


「そう! 伝説にある、天からの御使みつかいが奏でるという、天上の歌声と同じだ!」


「え、えぇ……? いくらなんでもそれは……」


 マリクが何かを言っているか、今の私の耳には入らない。

 なぜなら私の最愛である天使が歌っているのだから。


「この素晴らしい歌を魔道具に残しておくとは、さすがはセバスだ。うむ、さっそく陛下アーサーにも聴かせやろう。ここのところ激務で疲れているだろうからな」


「し、室長、それはやめたほうが……」


「なぜだ?」


「あの、ほら、お嬢様の愛らしい映像は、室長だけのものにしておく……みたいな?」


「……ふむ、確かに」


 どうやら私は浮かれていたらしい。常に冷静であれという、フェルザー家『氷の掟』を忘れるところだった。

 ユリアーナが天使だというのは事実であっても、それを周知させることは危険でもある。どこかの良からぬ輩に目を付けられても困るからな。


 冷静になれ。

 それよりも今、大事なのはいかに早く事態を収束させるかだ。

 魔道具に付いていた手紙には、報告の追記として「お嬢様は寂しがってらっしゃいます」と書かれていた。となれば、可及的速やかにユリアーナを抱きしめてやらねば。


 不思議なことに、天使の歌を聴いたせいか頭が冴え、思考能力が凄まじく上がったような気がする。

 やはりユリアーナは天使だったか。知っている。改めて再確認しただけだ。


「マリク」


「はい」


「少しの間、王都を出る。そのまま屋敷に戻るから、お前はそれをまとめたら帰っていい」


「はい?」


 口を開けたままのマリクの顎をそっと戻してやり、私は窓を開けて魔法を展開させる。

 魔獣が大地を汚し、浄化が間に合わないのであれば……。


「汚れたものすべてを凍らせてしまえば良いだけだ」


 氷の魔法で空を駆けながら、屋敷で待つユリアーナを想う。

 自然と自分の口元が緩むのが分かる。

 この感情はまるで……。


「ふっ、まさかな」



お読みいただき、ありがとうございます。


皆様、体調にはお気をつけて…

もちは元気ですが、運動不足のため太りました。

てっぷりです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今回の話の中で、ユリアーナが歌う子守歌(?)の映像シーンをベル父様と部下のマリクさんが見てワチャワチャしていますが、以前ユリアーナがハイイロの罠にかかった辺りの話で同じような話を書かれ…
[一言] 親ばか。 親ばか☆ もう暴走してるよ☆
[一言] …、愛しておられるのですね…。 中身、アラサーだからいいと思う! ただ、見た目だと、ロリコンで養子に恋慕してる図しか出来てないけども…。
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